「祖父のグラスで」ワリエワ選手側の主張は「よくある説明」…ドーピング専門家
女子フィギュアSP首位のワリエワ選手。聴取で「クリスマスに心臓の薬を服用していた祖父と同じグラスを使って飲み物をシェアしたことが要因の可能性」と母親が主張したとの報道が出ました。こうした主張はどう見たらいいのか?ドーピングの専門家に聞きました。
■「最近多い」「典型的な説明」
女子フィギュアスケート・シングルに出場できることになったカミラ・ワリエワ選手、15歳。なぜ体内から禁止物質が検出されたかは“結論持ち越し”のままの出場となりました。そうしたなかスペインの新聞マルカは、CAS=スポーツ仲裁裁判所が行った聴取で母親と弁護士が「ワリエワ選手がクリスマスに心臓の薬を服用していた祖父と同じグラスを使って飲み物をシェアしたことが要因の可能性がある」と主張したと言います。果たしてこの主張をドーピングの専門家はどう見るのか?CAS仲裁人でもある日本アンチ・ドーピング規律パネル委員長の早川吉尚氏に聞きました。
Q「祖父のグラスを使った」という主張をどう見ましたか?
実は2006年に類似した理由でCASが「シロ」にした事例があったと記憶しています。奥さんと同じグラスを使ったということで、これと似た主張だと感じました。この時も批判はありましたが、最近は認められる可能性を考えて、似た主張をするケースが多くあります。そういう意味では聞いて、「よくある典型的な説明だ」と思いました。
■詳細な立証が必要も「16歳未満」の制約も
Q今後はどうなるのでしょうか
果たして本当にワリエワ選手の祖父に心臓疾患があるのか?あるいは、あったのか。祖父のカルテや病気の履歴、そして薬の処方箋つまり何の薬をどのような経緯で手に入れたかを調べることが必要になります。個人で薬を購入した場合には、購入記録を調べるべきです。
ただ「16歳未満」の場合は(調査も)少し事情が変わってくるのも事実です。負担をかけてはいけないというのがあり「体内への経路」を追及することは若い選手への負担になるという見解、制約があります。そのため、どういう風にして証明していけるかは課題でしょう。いずれにしても、どういう過程で混入したのか関係者への証人尋問は必要になります。