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【来季がB1昇格への“ラストチャンス”】選手退団・離脱・指揮官交代…激動の1年を歩んだ福島ファイヤーボンズ【福島・プロバスケ】

2024年4月21日 16:00
【来季がB1昇格への“ラストチャンス”】選手退団・離脱・指揮官交代…激動の1年を歩んだ福島ファイヤーボンズ【福島・プロバスケ】

4月21日、福島ファイヤーボンズはリーグ戦60試合の全日程を終えた。ここ2シーズンはB1昇格をかけたB2プレーオフに進出していたが、クラブ10周年の今季は3年ぶりにプレーオフを逃す結果となった。
“東日本大震災の影響で屋外での運動機会が減ってしまった子どもたちにスポーツの力でできることはないか”そんな思いをきっかけに立ち上がった福島ファイヤーボンズ。選手の退団、主力の離脱、指揮官交代。B1昇格を目指した激動の10周年のメモリアルイヤーを振り返る。


クラブは開幕前、けがに苦しんでいた元フィンランド代表のエリック・マーフィー選手の契約を解除。また、開幕後には元フィリピン代表のロバート・ボリック選手が退団した。開幕の前後にナショナルチームでも活躍した期待の2人の選手がチームを去っただけではなく、開幕6戦目のホーム青森戦で不運にも林翔太郎選手が右足の関節開放性脱臼という大けがをした。
厳しい選手繰りを強いられた最初の3か月は、10月は2勝7敗、11月は3勝5敗、12月は4勝7敗で「9勝19敗」、負け越し10と大きく出遅れた。


12月19日、クラブはメキシコ出身のエンリケ・スニガスーパーバイジングヘッドコーチから郡山市出身の栗原貴宏ヘッドコーチへと指揮官の交代を発表した。


指揮官交代後は越谷・A千葉・滋賀・福岡とB2上位4チームから勝ち星をあげ、1月は5勝2敗、2月は4勝4敗と立て直したようにもみえた。一方、3月は3勝8敗と要所で接戦を落とし、4月最初のゲーム、4月6日に会津若松市で行われた第30節GAME1を落とし、プレーオフ進出とB1昇格の可能性が共になくなった。

ブースターの心を動かした1年


◆2024年最初の試合で首位チーム撃破
今年最初のカードは、18連勝中で昨季・今季のB2最高勝率のアルティーリ千葉戦だった。1月6日のGAME1を95-86で勝利し、負け越し10からの逆転プレーオフ進出を予感させるのには十分すぎる新年のスタートを切った。

◆林翔太郎選手のスピード復帰
第3節の青森戦、林翔太郎選手は2日間で71分9秒とほぼフル出場し25得点をあげた。GAME2の第4クオーター残り2分33秒のところで1度シュートを外したが、他のシュートは全て沈める大活躍だった。

しかし、残り12.9秒で自陣のゴール下で相手選手と接触し、関節開放性脱臼の大けがをしてしまった。あまりにも衝撃的なけがのため、自身も「バスケットという競技自体に復帰できないのではないか」とそのとき頭によぎったという。復帰までは半年かかるという診断で「シーズン終盤に戻って来られればいいかなと思っていた」と林選手も振り返る。


全国のファンから温かいメッセージが本人に届き、林選手の原動力になった。「振り返りたくないくらいきつかった」と本人も話す厳しいリハビリの末、1月27日に97日ぶりに古巣・アウェー滋賀戦で復帰。1月31日には101日ぶりに古巣・新潟戦でホーム復帰を果たし、ブースターの心を動かした。


◆宝来屋郡山総合体育館改修工事前ラストゲーム劇的勝利
ホームアリーナの宝来屋郡山総合体育館は、改修工事に入り、2月18日の静岡戦GAME2をもって見納めとなった。


試合は福島が最大16点ビハインドの展開から、多田武史選手のスリーポイントシュートが連続で決まり、土壇場で逆転。98-93で静岡を下し、ホームアリーナの最後を飾った。

学生の頃から利用していた人も多い体育館。試合が終了しても、名残惜しそうにカメラに収める人が後を絶たなかった。


完成が待ち遠しい宝来屋郡山総合体育館は、4つの大型ビジョンが設置され、座席が増えて5000人規模のアリーナへ(現在は3000人規模)と生まれ変わり、2025年4月から使用できる予定だ。

「シンカ」もみえたシーズン


今シーズンのスローガンは「シンカする」だった。「シンカ」には、「新化したチームで進化し、真価を証明する決意」が込められている。


◆クラブ新記録3078人の動員
須賀川市で行われた第25節。3月9日の越谷戦GAME1で3022人が来場するなか、強豪の越谷に対して4点差で勝利した。翌日のGAME2は敗れたが3078人が来場し、2023年3月11日の山形戦GAME1の3071人を塗り替えるクラブ新記録となった。また、年間のホーム戦の平均来場者数もクラブ新記録となった。

◆スクール・ユース生の加入
2024年1月、二本松市出身で当時帝京安積高校3年の菅野陸選手(現・山梨学院大学)が特別指定選手として加入した。1月6日、元福島・現B1京都の半澤凌太選手(福島南高校出身)の18歳0カ月25日を抜く、17歳9か月29日で当時のB2最年少出場記録を更新した。


ファイヤーボンズのスクール生やユースチーム出身選手としては初めてBリーグの舞台に立った。スクールやユースチーム出身者がトップチームのユニフォームに袖を通したことで、この菅野陸選手にクラブの歴史を重ねたブースターもいただろう。

◆若手の躍動
平均年齢は昨季より約3歳若い27.2歳で始動した。特に加藤嵩都選手(24)や土家大輝選手(24)の2人の若きポイントガードの活躍が大きかった。

加藤選手は開幕から12月23日までの出場20試合でスリーポイントシュートの成功確率が20.6%(12/58)だったが、12月24日から第31節までの出場29試合で47.4%(55/116)と、シーズン途中から高いシュート力を発揮し、規定未達も30%台後半の成功率を記録した。もちろん強度の高いディフェンスや鋭いドライブもブースターを魅了した。

土家選手はシーズンを通して、B2スリーポイントランキングに顔を出し、ポテンシャルの高さを示した。1月6日のA千葉戦では23得点とキャリアハイをマークし、勝利に貢献した。

プレーオフ逃し、キーマンは…


栗原貴宏ヘッドコーチ(元日本代表・郡山市出身)はプレーオフを逃した4月6日の会見で「選手はずっとヘッドコーチ途中交代など厳しい状況の中で戦い続けてくれた。結果が伴わなかったのは自分の責任。応援してくれている人にも申し訳ない。」と話した。

キャプテン田渡凌選手(日本バスケットボール選手会会長)は、「正直今は切り替えてという気持ちにはなれない。プレーオフが途絶えてしまった事への責任、悔しさがわいてきている。」とコメント。
また4月19日、「4月13日、14日の新潟戦で思ったがアウェーの地にあれだけ来てくれた福島ブースターがB1の舞台でブーストしているのを見たい。それを果たすために福島ファイヤーボンズのみんなで頑張っていきたい。」と話した。

二本松市出身の菅野翔太選手は来季について、「メンバーもどうなるかわからないが10年間チームを支えてくれた人たちのためにもプレーオフをホーム開催してB1に昇格したい」と話した。

2024-25SEASONの展望 ~B1昇格へのラストチャンス~


2026-27SEASONから新リーグが始まり、成績での昇降格の制度が廃止される。福島ファイヤーボンズは2023年8月21日の新体制発表会でトップリーグのB.LEAGUE PREMIER(Bリーグプレミア)ではなく、B.LEAGUE ONE(Bリーグ ワン)への参入方針を発表。


現行のリーグは残り2シーズンのため、来季がトップリーグ昇格への最後のチャンスになる。一方で、クラブは将来的なB.LEAGUE PREMIER参入の可能性も残すという見解を示している。


3年ぶりにポストシーズンがない5月を迎えることとなった福島ファイヤーボンズ。

チーム成績が伸び悩む中で終盤はホーム戦のチケット完売が続いた。16点差から逆転勝利した静岡戦の後には、選手からも「会場の雰囲気が勝たせてくれた」と福島ブースターの後押しに太鼓判を押す。

10周年でのB1昇格はならなかったが、福島にはっきりと根付いたカルチャーに確かな手応えをもって、次の10年が始まる。

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