全治1年の大ケガ パリ五輪へ「苦しい、焦りも」体操・岡慎之助 復帰までを密着
中学卒業後は強豪・徳洲会体操クラブに所属。一般的に部活で取り組む選手が多い中、高校生で社会人チームに入るのは異例中の異例でした。
■全治1年の大ケガに「悔しい」
有力な選手たちにもまれながら力をつけていった岡選手は、パリ五輪出場への期待も。そんな中、試練が訪れます。
2022年の全日本選手権。世界選手権の代表選考も兼ねるこの大会で、東京五輪代表を抑えて予選を3位で通過した岡選手。決勝もあん馬で高得点をたたき出すなど、順調に試合を運んでいました。
しかし、4種目めの跳馬、ロペスに挑んだ岡選手は着地後、苦悶の表情を浮かべながら右ひざを抱え、そのままうずくまってしまいます。
右ひざの前十字じん帯を断裂する、全治1年の大けがでした。
岡選手は当時を「これまでこれほど大きなケガはなくて、しんどいというか悔しいですね、あそこでケガをしたのは」と振り返ります。
復帰に向けた手術は怖さもあると語った岡選手。断裂した右ひざのじん帯を再建するため、左脚の腱を右脚に移植しました。
手術翌日には「昨日の夜はこの辺(右脚)がずっとマヒしててきつかった」と吐露しました。
■地道なリハビリに「正直焦りも」
ケガから3か月後の8月、私たちは岡選手の練習場所を訪れました。
パリ五輪を目指すライバルたちが演技を磨く中、岡選手は地道にリハビリを行っていました。
岡「苦しいですね。まわりがどんどん新しい技をやっていたり、難度を上げて演技をしていて、どんどん自分から離れていくと思っちゃっていて。正直焦りも出ている、ちょっとやばいなと思っています」
1日練習をしないだけで感覚のズレが生まれてしまう体操。
岡選手は、復帰後に進化した演技ができるよう、理想の演技構成や、練習メニューを記した、トレーニングノートを作っていました。
午前中の90分間で43種類58セットのメニューなど、トレーニングの量も増やし、リハビリも根気強く行いました。
なかでも重点的に取り組んだのは、つり輪。ひざをケガをした今だからこそ、上半身の筋力が必要なつり輪を鍛えると決意しました。
岡選手は「ケガをして、何ができるかというとつり輪の力技。そこができていないと、何のための期間だったんだろうとなってしまう。頑張ります!」と意気込みも見せていました。
■「動いてる感覚があって気持ちいい」
ケガから7か月後の11月。
冬の間も、つり輪を強化しました。まだ反応が戻っていない部分もあり「手応え的にはまだきてないです」と本音も。
一方、右ひざの状態は、高い補助台から飛び降りて着地をできるまでに回復していました。
「怖いですけど、すごい動いてる感覚があって気持ちいいというかうれしい」
復帰へと、光が見えてきました。
■「脚は心配していない」ケガした跳馬もしっかりと着地
そしてケガから約1年がたつ、2023年3月。
復帰戦を想定した試技会に挑戦しました。
つり輪では、ジョナサン~ヤマワキのあとホンマ十字懸垂をピタリと静止。トレーニングの成果が出ている様子でした。
さらに跳馬ではドリックスをしっかりと足で着地。ケガから復活した姿を見せました。
岡「もう脚は心配していないです。パリ五輪で金メダルをとることが最大の目標。頑張ります!」
岡選手は、2023年世界選手権の代表選考にかかわる、全日本選手権(4月21日予選、23日決勝)で公式戦復帰を果たす予定です。