【特集】昭和歌謡を愛する男子高校生 「この火を絶やすまい」 敦賀のご当地ソングで奮闘
水前寺清子さんが歌う「敦賀とてもすきすき」。気比神宮の例大祭「敦賀まつり」で毎年、踊りとともに披露されるなど愛されてきましたが、コロナ禍でその機会は激減。昭和歌謡をこよなく愛する1人の男子高校生が立ち上がり、火を消すまいと奮闘を続けています。
曲のワンフレーズ
「敦賀港へ入った船は~ 錨(いかり)抜くのが さぞ辛かろう~♬」
民謡「敦賀とてもすきすき」に合わせて踊る子どもたち。その中心にいるのが浴衣姿の森野巧巳さん(17)です。昭和歌謡をこよなく愛する現役の高校生で、たまたま趣味のレコード収集で「敦賀とてもすきすき」のレコード盤を見つけ、活動を始めました。
森野巧巳さん
「僕は(民謡)曲が好きで聴いてるから知ってるけど、いま敦賀では踊られてないので、20~30年後、僕が親世代になった時に誰が知っているのかな、僕たち若い世代で残さないとすごくもったいないと思った」
「敦賀とてもすきすき」は1969年6月に発売された昭和の歌姫・水前寺清子さんが歌う敦賀のご当地ソングで、敦賀港の開港70周年を記念して作られました。
「敦賀まつり」では毎年、民謡踊りが披露されるなど、長年市民に親しまれてきましたが、コロナ禍で祭りやイベントは相次いで中止に。民謡踊りを踊る機会はほとんどなくなりました。
そんな状況に危機感を持った森野さん。去年の夏に同級生たちと活動をスタートさせ、月に1~2回、踊りの先生から教わりながら稽古に励み、4年ぶりに開かれた今年の敦賀まつりでは見事な踊りを披露しました。
森野巧巳さん
「いろいろ出会った人たちが“森野くん”とか、“カッコイイね”とか、いろんな声をかけてくれた。大変なこともあったけど、頑張ってきて良かった」
7月には活動の輪を広げようと県内の高校生では初めて、NPO法人とても敦賀すきすきを設立。思いに賛同した全国各地の人たちから80万円を超える寄付も集まりました。
踊りを指導する様子
「右、左、右、チョン。この時にみんなできているけど、上げた方の手と反対の手は力こぶのとこにつけてな」
森野さんたちの活動は次のステップに入っています。自分たちが踊るだけでなく、子どもたち向けの講習会を企画し、この日は敦賀にちなんだ3曲の民謡踊りを紹介しました。
森野巧巳さん
「“敦賀とてもすきすき”は今から50年くらい前の歌やから、自分たちのおばあちゃんとかおじいちゃんに”踊れるんやで”って見せてあげたらたぶん喜ぶと思うので、是非踊ってあげてください。今日はありがとうございました」
講習会に参加した子どもたち
「みんなと踊りができて楽しかった」
「友達とかにも教えてあげて、是非みんなで参加して、どんどん(仲間を)増やしていきたい」
講習会を見守った保護者
「上手に頑張って踊っているなと思う。民謡踊りって楽しいなと思った。地元のものに触れていくのはいい」
森野巧巳さん
「やっぱりこの火を絶やしてはいけない思いがすごくある。自分たちが踊ってOKではなく、継続に重点を置いて、恩返しではないですけど、感謝の気持ちをこれからも伝えていきたい」
地域のアイデンティティである民謡をこれからも守りたい。郷土愛にあふれた若者たちの挑戦は始まったばかりです。
(FBC福井放送 2023年11月21日放送)