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【奮闘】あか牛を肥育し阿蘇の草原を守る「思うように牧草を食べない…」熊本の高校生の取り組み

2025年3月6日 19:09
【奮闘】あか牛を肥育し阿蘇の草原を守る「思うように牧草を食べない…」熊本の高校生の取り組み
あか牛育てる高校生
阿蘇に広がる草原で草を食む、あか牛。長年、受け継がれてきた美しい景色を守ろうと奮闘する高校生を追いました。

2月、熊本市のレストランで開かれたあか牛の試食会。ローストビーフにステーキ。おいしそうな料理が並びます。
■試食した人
「肉のうま味が、本来の旨味がして非常においしいですね」
■試食した人
「香りと熟成のお肉に感動しました」

このあか牛を育てたのは、熊本農業高校の生徒たちです。そこには、阿蘇の草原と深い関わりがありました。

阿蘇に広がる美しい草原。放置すれば荒れてしまう中、あか牛が草を食べることや人の手による野焼きで再生を繰り返し、1000年以上守られてきました。しかし、野焼きの担い手や牛を育てる畜産農家が減り、維持が危ぶまれています。

この問題に、熊本農業高校の生徒が動き出しました。学校であか牛を育て、阿蘇で刈った牧草を与えることで草原の維持につなげたい狙いがあります。

■佐藤涼真さん(2023年8月・当時3年生)
「あか牛を使って肥育をすれば、 草原にも目を向けてもらえるし、あか牛にも目を向けてらえるので、草原を守るのと、あか牛の肉に価値を付けることが目的で、今回の肥育を始めています」

その名も「草原プロジェクト」。2年前、当時の3年生数人を中心に始まりました。あか牛の「なつき」です。食肉の生産が目的の"肥育"は、熊本農業高校では初めての試みです。

■上田龍征さん(2023年8月・当時3年生)
Qなつきの体重は?
「330キロないくらいです」

目標は2024年12月までに725キロまで育てて、出荷すること。去年、プロジェクトを始めた3年生が卒業し、下級生が引き継ぎました。
■犬飼一騎さん(2023年8月・当時2年生)
「自分も阿蘇出身で、少しでも自分の地元の関わりに貢献できて、あとは牛の肥育について学びたいと思って、この課題研究を選びました」

去年の春まで、なつきの体重は順調に増えていました。ところが、去年7月…。
■髙林誠士郎さん(3年生)
「何キロ?」
■犬飼一騎さん(3年生)
「体重が576キロ」

■髙林誠士郎さん(3年生)
「(7月の)目標体重が620キロなんですけれど、それに全然到達していない」

エサを選び食いして牧草を食べてくれず、体重が減る日が出てきました。そこで、今まで与えていたものと違う種類の牧草を取り寄せることに。なつきは食べてくれるのか…。

■髙林誠士郎さん
「前の野草よりはまだマシぐらい。口に含む量が少ないので、思ったより食いつきが悪い」

■吉永憲生教諭
「今まで食べたことない草が入ってるかもしれない。そういうのが一つの原因かもしれないね。そういうのを見ていきながら、やっていきながらじゃないと、わからないから継続してやっていきましょう」
■髙林誠士郎さん
「なつき、頑張れ、太ってくれ」

その後も、食べやすいように牧草を細かく切って与えるなど、約半年間、試行錯誤を続けました。

それから7か月。
■吉永憲生教諭
「本人たちの頑張りからするとちょっと残念なんですが、今年度(の出荷)は難しいと」

なつきの体重が思うように増えず、12月の時点での体重は578キロ。目標の725キロには届かず出荷を見送ることになりました。

■髙林誠士郎さん
「(飼っていたのが)小さな檻というか部屋だったので、やはり運動もそんなにできないし、お腹が空かないし」

■犬飼一騎さん
「目標体重に届かなかったっていう悔しさもあるけど、愛情もあるので、そういう意味では少し良かったなってホッとしているところもあったり、ちょっと複雑な気持ちです」

1年半かけて育てた牛を食べるはずだった試食会学校関係者や熊本県職員も集まりました。この日、プロのシェフに調理してもらったのは、高校で出産のために育てていた別のあか牛です。

このあか牛も、最後の半年間は阿蘇の牧草を食べて育てました。目標には届かなかったプロジェクト。それでも、大人たちは。

■草主体でのあか牛肥育に取り組む 服部法文さん
「地元にある草で、地元のあか牛を何とかお肉まで持っていこうという取り組みをされたということで、すごく感激しています」

■antica locanda MIYAMOTO 宮本けんしんシェフ
「熊本でしかできないことなので、チャレンジしてくれたことにとても感謝しています。本当にありがとうございます」
■髙林誠士郎さんと犬飼一騎さん
「ありがとうございました」
■antica locanda MIYAMOTO 宮本けんしんシェフ
「楽しく料理が作れる牛でした」

■髙林誠士郎さん
「苦労した反面、楽しかったし、いろんな他の知識とかも阿蘇の現状とかも知ることができました。いい経験になったなと思います」

■犬飼一騎さん
「改善案みたいなのを提案をしてくれる方もいたり、新たに課題も出てきてるところもあったので、自分たちが後輩に託して、より良い肉を作っていくようにしていってほしいです」

阿蘇の草原を守るため、熊本の宝を守るため…高校生の挑戦は次の世代に引き継がれます。

【スタジオ】
プロジェクトを通して発見もありました。これまで牛に与えていた穀物などの量を減らし、牧草を与えて育てたことで、通常の肥育と比べ飼料代を3割近く減らせることがわかったそうです。なつきの肥育は、下級生に引き継がれます。

最終更新日:2025年3月6日 19:09