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「2200人の赤ちゃんが消えた」韓国で"内密出産"法制化 日本での議論は

2024年7月18日 19:57
「2200人の赤ちゃんが消えた」韓国で"内密出産"法制化 日本での議論は
内密出産は、日本では熊本市の慈恵病院のみが運用しています。

性被害など様々な事情を抱えた女性が、病院にのみ身元を明かして出産することができます。ただ、法制化はされていません。

一方、韓国では内密出産を認める“法律”が7月19日に施行されます。背景には「消えた赤ちゃん」の問題がありました。去年、韓国社会に衝撃を与えたある出来事がありました。それは、「2200人の赤ちゃんが消えた」というものです。一体どういうことなのでしょうか。

韓国では、病院で生まれた子どもに対して、仮の管理番号が付与されます。しかし2015年から8年間、病院で生まれたものの、親から出生届が出ていない、所在のわからない子どもが2200人以上いることが国の調査で明らかになったのです。

その後の調査で、匿名で子どもを預け入れる「ベビーボックス」、日本でいう“赤ちゃんポスト”に約6割が預け入れられたとみられています。それ以外の子どもは亡くなっていたり、行方がわからなったりしています。

浮き彫りになったのは、様々な事情を抱え“孤立に悩む女性”の存在でした。赤ちゃんの行方がわからなくなるといった事態を防ぐため、韓国政府は出生届の提出を医療機関に義務化。それに加え去年10月、身元を伏せたままでも病院で出産できるよう、「内密出産」の制度を導入する法案が可決されたのです。

その背景について、韓国の家庭福祉に詳しい目白大学の姜恩和教授は、実名を明かさずに病院で子どもを産めれば、母親による子どもの遺棄や孤立出産を防ぐことができるという世論の後押しがあったといいます。その上で、まだ法制化されていない日本では、内密出産の制度についてより議論を深める必要があると指摘します。

■目白大学人間福祉学科 姜恩和教授
「内密出産を喜んでやる人はいないはずで、日本も韓国も内密出産が全てということではもちろんなくて、その手前にどんな制度を整備していかなければいけないのか、議論して充実させながら声を上げていくことがすごく大事ではないかと思います」

【スタジオ】
(藤木紫苑記者)
韓国で法制化された「内密出産」ですが、韓国での正式名称は日本語に訳すると「保護出産制度」といいます。文字通り、追い詰められている女性や生まれてくる子どもを「保護」するための仕組みです。

制度では、女性は国が指定する相談機関に申請すれば、医療機関で仮名で出産できます。費用は国や自治体が負担します。

出産の後、医療機関は女性の"個人を管理する番号"や子どもの性別、生年月日などを国に提出します。これらの情報は日本の子ども家庭庁に当たる国の機関が保管します。

生まれた子どもは、国が保管している情報の開示請求ができます。どんな環境で自分が生まれたかなどを知ることができます。ただし、生みの親の個人を特定する情報については生みの親の同意がなければ開示されません。

(緒方太郎キャスター)
法制化した韓国と日本の今の状況とはどう違うのでしょうか?

(藤木記者)
大きく違う点の一つが生みの親の個人情報を国が管理する韓国に対して、日本は法務省と厚労省のガイドラインで情報の管理は病院に託すとしています。これは持続可能なルールとはいえず、今のところ、法整備にも至っていません。孤立に悩む女性と生まれてくる子どもを社会や国の責任で守れるか、日本社会も議論を具体化していく必要があると思います。