×

【水俣病訴訟】「死ぬのを待っているのか」国と熊本県の控訴を原告団は強く非難

2023年10月11日 18:04
【水俣病訴訟】「死ぬのを待っているのか」国と熊本県の控訴を原告団は強く非難
最終的な解決をうたった「水俣病特別措置法」で救済されなかった原告全員を水俣病と認めた大阪地裁判決。チッソに続き、10日、国と熊本県が控訴しました。控訴の断念を訴えていた原告団は、この対応を強く非難しました。

■原告の前田芳枝さん
「私たちが死ぬのを待っているの?とか、そういうことしか思い浮かんでこないというか…」

控訴断念を訴えてきた原告たち。その声は届きませんでした。

この裁判は、熊本県や鹿児島県に生まれ、大阪などの関西に移り住んだ人が、水俣病の最終的解決をうたった水俣病特別措置法で救済されなかったとして、国や熊本県、チッソに損害賠償を求めたものです。

大阪地裁は9月27日、原告128人全員を水俣病と認め、被告に賠償を命じる判決を言い渡しました。

チッソは、この判決を不服として9月4日に控訴。国と熊本県も10日、チッソと同じく控訴しました。

■伊藤信太郎環境相
「今回の判決は、国際的な科学的知見や最高裁で確定した近時の内容と大きく相違することなどから、上訴審の判断を仰ぐ必要があると判断しました」

国は理由について、WHO=世界保健機関が公表している、神経障害を発症することがないレベルの毛髪水銀値を下回る場合も水俣病の発症を認めていること、メチル水銀を摂取した後、長い期間を経て発症する「遅発性水俣病」を認めていることなどをあげました。

一方、熊本県の蒲島郁夫知事は。

■熊本県 蒲島郁夫知事
「とても苦渋の決断です。ただ司法の一貫性というのはとても大事だし、行政を預かる者としてはそれがないと水俣病の行政はできないと私は思っています」

今回の判決は、過去の最高裁での判決と水俣病に関する考え方に違いがあるなどとしました。

控訴の断念を強く求めていた原告団。国や県などの対応を強く非難しました。

■弁護団長 徳井義幸弁護士
「今の環境省の水俣病被害者救済策に重大な欠陥がある、根本的転換が必要なことを示す画期的な判決だった。今回控訴したことについて、極めて残念であり抗議の意思を表明したいと思っている」

高齢化が進む原告からは、裁判の長期化を懸念する声も聞かれました。

■原告の前田芳枝さん
「私たち原告を見放しにした、切り捨てにしたチッソと同じかと、改めて怒り心頭です。ため息も出た」

■原告の本良夫さん
「水俣病問題を解決する責任は、国、熊本県、チッソにあると思う。一刻も早く救済をして、裁判を終わらせてくださいますようお願いいたします」

控訴を受けて、一審判決で国と熊本県の賠償責任を認められなかった原告6人が11日、控訴しました。

水俣病と行政の関係に詳しい熊本学園大学の花田昌宣シニア客員教授は、国と熊本県の控訴について「これ以上法廷で争うのはやめて、被害者と対面して話し合うべき。今回の原告と同じような被害者は多くいるので話し合わなければ争いが永遠に続いてしまう」と話しました。

また、国と熊本県が控訴の理由に挙げている過去の判決との相違点について、「今回の裁判は、従来からの争点に加えて、救済対象者を地域や年代で線引きすることの是非など新たな争点もある。国や県は水俣病の認識を見直すべき」と指摘しました。