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地震発生から最速わずか1分で到達 能登の港町を襲った「超近距離津波」 

2024年1月16日 21:35
地震発生から最速わずか1分で到達 能登の港町を襲った「超近距離津波」 
能登半島地震では、揺れの直後に沿岸部を津波が襲いました。震源が近かったことでこれまでとは違う姿だった津波。専門家たちの調査に同行すると、今回の津波ならではの“ある特徴”も見えてきました。


最大震度7の揺れからおよそ30分後の石川県能登町。

車は杖をついた89歳の女性を追い抜きます。
そのまま避難所に向かおうとしていましたが、女性を乗せるため、車は元来た道を引き返します。

この白丸地区、すぐそばに海が広がっています。

男性「地震が起きたけど上に行かないの?」「車に乗りなさい」

女性を乗せようとしますが、後方のカメラには迫りくる津波の姿が。

女性「みんなどうしたの?」
男性「みんなもう上にあがったよ」

車は間一髪、津波から逃れることができました。


<津波のシミュレーションCG>(東北大・越村俊一教授らのシミュレーション アドリアノ・ブルーノ准教授(災害研)作成)

今回起きた津波についてのシミュレーションです。
南北の方向に発生した赤色が津波。

波は半島の先端にぶつかったあと、回り込むように進みます。東側の水深が浅い場所を進んだ結果、珠洲市などで被害が大きくなりました。

<津波地図CG>
さらに別のグループの現地調査で、浸水の高さは志賀町で最大5.1メートル、珠洲市で4.7メートル、能登町で3.2メートルだったことが明らかになりました。

《現地調査②》(石川・輪島市・1月11日)
この日、輪島市内で調査をしていたのは金沢工業大学の有田守准教授らのグループです。

震源が近いため、最速でわずか1分で到達した“超近距離津波”。従来の津波と違い、その高さを割り出すには難しさもあります。

金沢工業大学 有田守 准教授「建物のガラス面についた津波の痕を見つけて、そこの高さを測るんですけど津波の周期が短いので津波に建物が浸かっていた時間が非常に短くてそれを見つけるのがかなり難しいというのが今回の津波の調査の難しい点です」

《説明CG》
震源が遠い場合、津波は間隔をあけて、長時間にわたり押し寄せます。浸水時間が長くなり、痕跡が残ります。

一方、今回のように震源から近いと短時間に津波が一気に押し寄せ、水も早く引くために痕跡が少ないというのです。

《能登町の津波別ドラレコ》(石川・能登町・1月1日)

さらに調査を難しくしているのが津波は到達したものの、想定以上に被害が少なかった場所も多く存在していることです。

《現地調査①》(石川・輪島市・1月11日)

原因の一つとして考えられるのがこの岩の山。隆起した土地です。

実は波消しブロックの右側は元々は海底でしたが、地震によって盛り上がり、地表に露出しました。

《説明CG》
地震によって、隆起が発生し、結果としてこれが“天然の防潮堤”の役割を果たしたという側面があります。

《せりあがった防潮堤》(提供:産総研地質調査総合センター)
こちらの輪島市門前町では最大でおよそ4メートルも隆起していました。

《地理院地図比較》(国土地理院より)
また、能登半島の沿岸部では海底が総延長でおよそ90キロ、面積にして4.4平方キロメートルが隆起して、新たな陸が生じました。
金沢工業大学 有田守 准教授「海底の地盤が海面上に露出したことに一番驚きました」
(Qこれほどの隆起は珍しい?)
「かなり珍しいと思います」

(津波の映像・視聴者提供 石川・能登町・1月1日地震発生約30分後)

わずかな時間で街を襲う“超近距離津波”。まだわからないことも多い中、限られた時間でどう避難をするのか。今こそ確認する必要があります。