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切れ味良く長持ち『蚊焼包丁』インバウンド戦略で世界発信目指す 病乗り越え親子で挑戦《長崎》

2025年1月18日 22:00
切れ味良く長持ち『蚊焼包丁』インバウンド戦略で世界発信目指す 病乗り越え親子で挑戦《長崎》

県の伝統的工芸品『蚊焼包丁』。

存続の危機にある包丁を守り継ごうと、職人の親子が奮闘しています。

病を乗り越え、新たな挑戦を始めました。

◆100年以上の歴史と技で「世界に1本だけの包丁を」

丹精を込めて…。

入念にゆっくりと時間をかけ、角を滑らかに。

こだわりは、持ち手の指が触れる “アゴ” と呼ばれる部分の曲線です。



(桑原鍛冶工房3代目 桑原 和久代表(59))
「アゴの部分。(指が)斜めになってもフィットするやろ。痛くないやろ。
それが特徴。桑原鍛冶工房の…。
どんな人にでも1本、合う包丁がある」


一人ひとりの客の要望に合わせて作るのが『蚊焼包丁』です。

1923年創業、100年以上の歴史を持つ長崎市蚊焼町の「桑原鍛冶工房」。

3代目の桑原 和久さん59歳は、この道40年の職人です。

(3代目 桑原 和久代表(59))
「桑原鍛冶工房の包丁は長持ちする。10年間持つと(いわれた)、人には言えない技。自分の脳で取得した技を持っている」

『蚊焼包丁』は、県の伝統的工芸品に指定されています。

戦後の最盛期には、約30軒の工房が軒を連ねていましたが、現在は桑原さんの工房を含め、2軒だけです。

(3代目 桑原 和久代表(59))
「蚊焼の水と土で弾力性、何回も何回も叩いて、欠けない強さ粘りの強さ(が出る)」

“一人ひとりに合わせた 世界に1本だけの包丁を届けたい”。

その思いで、包丁づくりに打ち込んできました。

しかし2018年、桑原さんを病が襲います。

脳梗塞でした。

半年間の入院生活を終え無事に退院しましたが、利き手である右手には麻痺が残りました。

(3代目 桑原 和久代表(59))
「続けないと潰れるでしょ。半年間は(不安な)その状態。しばらくしてから考えて、やらないといけないという考えになった」

伝統を絶やしたくないと、工房に戻ることを決めました。

研磨や仕上げなど 片手でできる作業はありましたが、力が必要な作業だけはどうしても1人ではうまくいきません。

そんな桑原さんの姿を見て 力になりたいと寄り添ったのは、長男の拡大さん(28)でした。

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◆父の復活を待つなかで息子に芽生えた想い
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