悲しみ乗り越え再生の道へ「イルカが長く幸せに暮らせる場所へ」壱岐島のイルカパーク《長崎》
施設の再生を目指し奮闘する島の観光スポット壱岐イルカパーク。
イルカたちが長く、幸せに暮らせる場所を目指して・・・。
スタッフたちの日々の奮闘に密着しました。
豪快なジャンプに、ほのぼのとした触れ合いも。
(観光客)
「かわいいよね」
(観光客)
「ツルツルしているし、あったかい」
壱岐島の北部、壱岐市勝本町にある「壱岐イルカパーク&リゾート」。
島の観光スポットとして愛されてきた 癒しの場所に異変が起きたのは 去年のこと。
(壱岐イルカパーク&リゾート 高田 佳岳代表)
「正直、1年間で3頭のイルカが亡くなるというのは初めての事。どうしていいのかわからないというか、本当に手の打ちようがなかった。イルカあってのふれあいやプログラムだったので、正直つらい一年だった」
1年間で3頭ものイルカの死。
悲しみを胸に進む、パーク再生への思いです。
1995年、壱岐市がイルカの保護を目的に天然の入江を活用してつくったイルカパーク。
(壱岐イルカパーク&リゾート 高田 佳岳代表)
「ここがメーンの建物になっていて、中がカフェ」
6年前からパークの運営を担う、壱岐イルカパーク&リゾートの高田 佳岳 代表 46歳。
“イルカとともに” をテーマに、運営開始の翌年=2019年に施設をリニューアルしました。
メーンのカフェでは、地元の食材を使ったハンバーグやふわふわのパンケーキなど、ここならではのメニューを提供。
また外のバルコニーでは、壱岐牛や地元産の鶏などを贅沢に使ったバーベキューも。
イルカを眺めながら、島自慢の食事や遊びが楽しめる空間づくりにもこだわります。
コロナ禍の苦しい状況の中でも、障害者向けのふれあいプログラムの導入や、オンラインのイルカツアーなど、積極的に新たな取り組みを続けてきましたが・・・。
去年、4頭のイルカのうち、3頭が死にました。
目玉のふれあいのプログラムもできなくなり、トレーナーたちのほとんどが施設を後にしました。
(壱岐イルカパーク&リゾート 高田 佳岳代表)
「本当に辛くて。それを諦めるのは簡単だけど、ここで僕が諦めたらイルカがずっと消耗品のように扱われていってしまう。それだけは自分が関わった以上は嫌なので、今いる4頭が、本当に20年30年生きるためには何ができるかということを、ここで踏ん張って僕がやらないと」
去年10月、新たに3頭のイルカを迎えたパーク。
高田さんは “再生” を誓いました。
まず取り組んだのはイルカたちが住む環境の整備です。
(壱岐イルカパーク&リゾート 高田 佳岳代表)
「でっぱり。あのコンクリートのところで水が止まってしまう」
この入江は袋状で入り口が狭く、海水の循環が悪くなっている可能性もあるとして、流れを改善するポンプを設置。
(壱岐イルカパーク&リゾート 高田 佳岳代表)
「水質や海底も全部調べたが、それらしい悪いものが出てこなかった。できることをとにかく全てやっていかないと」
イルカのエサにもこだわります。
トレーナーたちの朝一番の作業は、魚の選別からスタート。
できるだけ県産の魚を。
そして、水揚げからすぐに冷凍された魚を、一匹一匹入念にチェックして与えます。
(トレーナー村上 結香さん)
「何かあった時に元々体調が悪かったのか、食べ物で悪くなったのか、環境で悪くなったのか分からなくなる。ちょっとでも、食べ物の部分で原因を排除できるように」
去年4月に入社したトレーナーの村上 結香さん 27歳。
元々、栄養士として保育園で働いていましたが、一念発起し、去年イルカパークに。
その直後に、イルカとの別れを経験しました。
(トレーナー村上 結香さん)
「どうしてもこの業界にいて動物に関わるという仕事をしていく上では、いつかは絶対来る時。1年目からそういう経験をさせてもらったのは、これから長く続けていく上で良かったと思うけれど、希望としてはそういう姿はみたくない。自分がどうしていったらそういうことが起きないか考えるきっかけになった」
(トレーナー村上 結香さん)
「この子がビビです。男の子のパル、こっちがティダ」
新たに仲間入りした3頭は、採血や体温チェックなど健康管理のためのトレーニング=ハズバンダリートレーニングの真っ最中。
トレーナー歴20年を超えるベテラン、林 菜穂子さんが担当しています。
(トレーナー 林 菜穂子さん)
「これが血管です。ここに針を刺して血を採る、その体制の練習中ですね。今ちょっと頭が下がっている。だからOKじゃない。(イルカが)嫌だよ!となったら、無理やり押さえつけたりしないで、離してあげる」
イルカの意思を尊重し、コミュニケーションをとりながら少しずつできることを増やしています。
こうした1日5回から6回のトレーニングの中で、食欲はあるか、体に異常がないかなどをチェックしていきます。
推定14歳のメス「ビビ」は・・・。
(トレーナー村上 結香さん)
「胸ビレの治っていたところが、またこすって、ちょっと血が出てきている」
すぐに写真を撮り、獣医やほかのトレーナーに報告。
1日の最後には、それぞれのイルカの状態や気になることなどを、日誌に記入することも欠かしません。
イルカたちの“小さなSOS”を全員で把握しておくこと。
これまでの悲しい経験からの “教訓” です。
(トレーナー 林 菜穂子さん)
「ちょっと問題だったのが、(気づきを)紙で書いてあったりなかったりしている。記録として残しておきたいものが、例えばあずき(というイルカ)の口内の傷だと、ずっと前からあるが、いつから大きくなっているかが今わからない状態。それがないようにしたい」
新たなイルカを迎えて、3か月。
月に1回は、現状や今後の方針をスタッフ全員で確認し合うことも大切にしています。
(壱岐イルカパーク&リゾート 高田 佳岳代表)
「入り江に出すか出さないか。あったかくなってからが安心」
目指すのは、イルカにとってもスタッフにとっても「幸せで長くいたい」と思える場所。
(壱岐イルカパーク&リゾート 高田 佳岳代表)
「住んでいるところって一番重要。そこと一緒に住んでいる僕たちが彼らとどういう付き合い方ができるかは人間と同じ。環境とそこで働く一緒に住む仲間との関係性が一番大事だと思う。そこをしっかりくみ上げたい」
2024年、イルカパーク再スタートの1年です。