“分校化の危機”から一転…「水族館部」新入部員は43人!愛媛の高校生が作る水族館リニューアルオープン
列車は1時間に1本もない愛媛の小さな町・大洲市長浜町。伊予灘を臨むこの町に県立長浜高校があります。
2年前、”新入生が40人以下なら分校化”という局面を乗り越えて以降、入学者数が定員近くまで増加。
今年度は「全国募集」の枠を18人から30人に増やし、新入生59人のうち21人が県外からの入学生となりました。
多くの長浜高校の新入生のお目当ては、全国的にも珍しい「水族館部」です。
25年間愛されてきた「長高水族館」
長浜高校の水族館部の生徒たちが手作りで運営する「長高(ながこう)水族館」
“長高”を象徴する人気の部活動「水族館部」では、魚たちと過ごす唯一無二の青春を求め、北海道や沖縄から入学する生徒もいます。
水族館部員たちはこれまで、校内にあった「長高水族館」で、約150種類2000匹の生き物を飼育してきました。毎月第3土曜日に一般公開を行い、お客さんを招きます。
高校生の個性豊かなおもてなしや大人顔負けの生き物解説が大好評。公開日は老若男女たくさんのお客さんで賑わいます。
ハマチが次々と輪をくぐる「ハマチショー」
イシダイがゴルフボールをドリブルする「イシダイショー」
25年間、地域の人たちに愛されてきた長高水族館。生き物の魅力を引き出す部員考案のショーも大きな見どころです。
新入生の7割以上が水族館部に入部
今年度は新入部員43人が加わり、過去最多の95人となった長高水族館部。全校生徒の実に6割近くが所属しているといいます。
全国各地から個性豊かな部員が集まる水族館部は、ほぼ半数が県外生です。
日々「長高水族館」に展示している生き物のお世話をしながら、研究班、繁殖班、イベント班、デザイン班に分かれて活動しています。
新入部員はなぜ、長浜高校を選んだのでしょうか。
「テレビで長浜高校の水族館部を見て興味を持ちました」と語るのは沖縄出身の與那嶺真貴さん。
「生き物が昔からすごく好きだったので、水族館部っていう見たことない部活が紹介されていて一瞬で惹かれました。親からの信頼を得るのは大変だったんですけど、親にプレゼンすると、『オープンスクールに行こうか』となって、そしたら逆に親の方が興味を持ったって感じですね」
全国の水族館を「ほぼ制覇」しているという天野湊太さんは神奈川県出身。
「僕は研究がずっとやりたかったので、水族館部にある研究班に入りたくて、ここを志望しました。ミルワームって、プラスチックを体内で分解するんですよ。その分解のメカニズムを利用して、海岸に落ちているマイクロプラスチックを分解できたらなと思っています」
部員たちの夢の続きは「新・長高水族館」へ
この春、4月20日(土)に「長高水族館」は移転してリニューアルオープンします。
25年間、これまで校内にあった水族館ですが、施設の老朽化が目立つように。そこで、学校からほど近い大洲市の保健センターへ移転することになったのです。
引っ越し作業中、「これはやばい!」「でかー!」と興奮を隠しきれない部員たち。
視線の先には、新しい水族館の目玉であり、ロビーでお客さんを出迎える幅3mの水槽です。「新・長高水族館」リニューアルのために特注したものです。メインの展示室には、タテ・ヨコ1m20cmの水槽が設置されます。
「ここにでっかい水槽が来るってわかってたんですけど、こんなサイズと思ってなくて想像以上で。すごく夢みたいでワクワクしています」
高校生のアイデアで、「新・長高水族館」はどう生まれ変わるのでしょうか。部員たちは目を輝かせながら、どんな水槽にしようかと想像を膨らませていました。
「新・長高水族館」は、移転後も毎月第3土曜日に一般公開をするスタイルは変わりません。完全予約制で入場無料。長浜高校のホームページで予約を受け付けます。
“これ以上生徒が減ると分校になってしまう”という危機を乗り越えた、長高水族館部。
過去最多の大所帯で運営する「新・長高水族館」では、新しい設備も揃い、よりたくさん生き物を広々と展示できるようになります。
全国から集まった“生き物愛”溢れる部員たちが、水族館を、そして町を、ますます元気にしていきそうです。