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災害時にも食事でしっかり栄養補給を!高校生が“防災食”向け「おにぎり」を開発

2024年4月19日 18:49
災害時にも食事でしっかり栄養補給を!高校生が“防災食”向け「おにぎり」を開発

災害時を想定し「防災食」として開発が進められている”おにぎり“。災害時にも栄養バランスが豊富な食事をとってほしいと、商品開発にあたっているのは愛媛県内の高校生たちです。

放課後の済美高校です。彼女たちは学校周辺の清掃活動や防災に関する研究を進める「家庭クラブ」のメンバーたち。手際よく始めたのは、災害時に手軽に調理ができ、不足しがちな栄養素が補える「災害食」の調理です。

こちらは切干大根を様々な飲み物で戻してみる実験…

済美高校家庭クラブ 山田麗さん:
「3種類のお茶とお水を使って。これがほうじ茶ですね」

山田さん:
「(市役所の方との会話で)被災地で配られるお弁当とか栄養の偏っているものが多いと話があったので、私たちで栄養の偏りのない防災食をつくって災害に備えられないか」
発案者 田中沙弥さん:
「被災地とかで配られる飲料水が水だけとは限らないから」

熊本地震や西日本豪雨など長期避難が強いられる災害で問題になるのが、避難中の栄養バランスの偏りです。

メンバーの多くは栄養や調理など食と健康について学ぶ食物科学コースの生徒。未来の災害に備えて何か自分たちにできることはないかと考え、災害食の開発・商品化を目指すことにしました。

長期避難の際に不足しがちな栄養素は

こちらは…
藤原杏優菜さん:
「これはおにぎりに混ぜ込むタイプのふりかけを作る。塩昆布で、これがあらかじめ白ごまとちりめんを混ぜていてこっちがかつおぶしです」

長期避難の際に不足しがちなのがタンパク質やカルシウムなどの栄養素。それが補える「ふりかけ」の開発です。

藤原さん:
「ビタミンCとかビタミンが足りてないので大根の葉っぱを用意していて、これをゆでて刻んでいれようかなと考えている」

食感や風味が良くなるよう、かつおぶしやちりめんなどの比率が違う3パターンのふりかけをつくって理想の分量を探ります。

藤原さん:
「ごはんにそのままかけるよりも(混ぜる方が)摂れる量が多くなる。食べるのに器と箸がいるじゃないですか。おにぎりだったらラップで完結するので」

出来上がった料理を全員で試食します。

藤原さん:
「大根の味がめっちゃ強い…でもあんまり違いがないね」

意外に、お茶を使っても味に大きな違和感がないことが分かりましたが、戻し方を間違ったため大根の辛味が際立ってしまいました。おにぎりの味についてはメンバーから及第点をもらいましたが、より豊富な栄養素を補うことはできないか…改良点を話し合います。

1か月後。前回の試作で、おにぎりに混ぜるふりかけに不足していたのがたんぱく質。どんな食材を加えれば補うことができるか、それぞれが食材を用意し調理にチャレンジします。

済美高校 塚野夕佳先生:
「山田さんは、干しエビを3g。これおにぎり1個に入る重さで、3gあたりたんぱく質が1.5g。ベースとなるもののたんぱく質が8gだから山田さんの場合は、干しエビをプラスすると9.5gが摂れるよとなる」

干しエビのほかにも…
小川彩冬さん:
「和風っぽいおにぎりだったので、油揚げ入れたら味しみてみたりせんかなって」
逢坂葉月さん:
「大豆製品が摂取しにくいというので枝豆」
山田佳澄さん:
「家にあるもので常温できるものグラタンとかも粉チーズかけるじゃないですかだから合うかなって」

8人のおにぎりが出そろったところでいざ、実食!

味は上々でしたがそれぞれが用意した“食材”について先生から指摘が…

塚野先生:
「ただ単にたんぱく質って思って持ってきたもの。災害時のことを思うと、わたしのまずかったなって言うのない?ライフラインがストップしとったら今日持ってきたものがどうなのかという気づきよね」

物流や衛生状態の悪化など、災害発生時に被災者が置かれる状況を生徒たちに学んでもらうのも今回の活動の狙いの一つです。

家族構成や健康状態を考慮した備蓄のすすめ

災害時にはどんな栄養が不足し、私たちはどう備えるべきなのか。能登半島地震の被災地に管理栄養士としても派遣された、松山東雲短期大学の栗原和也講師です。

「災害が発生してからどのくらいの期間によるかによって発生する問題が変わってくる。24時間以内もしくは72時間以内。まず人間は水分が必要になる生きていくためにも水分補給が必要そして必要なエネルギー量の確保が必要」

こちらは西日本豪雨の際、厚生労働省から県内の保健所に通知された避難所で最低限摂取すべき栄養についてまとめた表です。

物流がストップしたり停電が発生したりするなどして食材や調理方法が限られる中、これだけの栄養をバランス良く摂取しなければなりません。しかし、炊き出しはおにぎりやパンが中心でたんぱく質やビタミンなどが不足しがちに。

長期保存が可能な野菜ジュースやレトルトのおかずなど、栄養バランスを考えた防災食を個人でストックしておく必要があると訴えます。

栗原先生:
「いろんな栄養素がうまくかみ合って健康に生きていける。その一部が少なくなったら体に不具合が生じやすくなる。免疫力が弱って風邪にかかりやすくなったり病気を引き起こしやすくなる。持っている持病が悪化しやすくなるということで災害関連死につながりやすくなる」

さらに、噛む力や飲み込む力が弱い人はおかゆなどの軟らかい保存食を備えておくなど、家族構成や健康状態を意識した備蓄を呼び掛けます。

「どういった食事がバランスがいい食事なのかを知っておくこと。自分の健康づくりのための食選択する力。そのあたりを普段から考えていただければ」

再び済美高校、家庭クラブの生徒たち。この日は松山東雲短期大学の栗原先生にふりかけ開発のアドバイスをもらいに来ました。前回の試作で好評だった干しエビ、チーズ、油揚げの3種類を調理し、試食してもらいます。

栗原先生:
「それは水は使わずに混ぜてもらって大丈夫です」

事前に栗原先生からアドバイスを受け、粉末状の醤油や乾燥した大根の葉を使うよう変更しました。

「保存期間でいうと問題になるのがお水、水分量。水分が多いと細菌も繁殖しやすいので長期保存させるということであれば、いかに食材の水分を低いものに抑えるかが重要」

栗原先生の評価はいかに…
「そこまで濃くない。でもしっかり風味が感じられるおいしい」

一方で…
「揚げの風味がある。ただ印象的に味が染みてないけん。アレンジとして粉チーズを入れてもおいしいですよ。揚げを混ぜてもおいしいですよ という周知をするのであれば有りだと思う」

また、お年寄りなどが食べやすくなるよう大根の葉を小さくカットするなどのアドバイスも。災害時のあらゆる状況を想定し、一人でも多くの人に役立つ商品にするため、今後も改良を続けていきます。

山田麗さん:
「私たちがつくったもので安心できて美味しくて心温まるようなものがつくれたら。今回伺った意見を取り入れつつ、さらにいいおにぎりを作れるよう頑張ります」

生徒たちは今後、専門家とともに炊き出しの訓練を行い、衛生面や調理効率などを研究しながら商品化を目指していくということです。