松山市の土砂崩れから1か月 今も33人が避難生活…被災者が語る現在の心境は
松山市で発生した土砂崩れからまもなく1か月が経ちます。あの日から暮らしは一変し、今なお解除されない「避難指示」。さまざまな立場の被災者が、現在の心境を語りました。
断続的に雨が降り続いていた先月12日の未明。松山城の北東側で土砂崩れが発生し、大量の土砂や木々が麓の住宅地に流れ込みました。
この土砂崩れで親子3人が亡くなり、4棟が全壊、1棟が半壊、14棟が一部損壊となるなど、少なくとも60人が被災しました。
発生から27日が経った、きょう。
和気アナ:
「まもなく土砂崩れの発生から1か月を迎えます。奥ではたくさんの土のうを積む応急復旧工事が今も進められています」
松山市は二次災害の恐れがあるとして、現在も緑町一丁目の20世帯33人に警戒レベル4「避難指示」を発令。
このうち、8世帯11人が市が用意したホテルで。12世帯22人が親戚や友人の家などで避難生活を続けています。
今も自宅に戻ることができない人、大切な‟仕事場”を奪われた人、自宅に戻ることができたもののライフラインに苦労した人…。それぞれの事情を抱える‟被災者”がいます。
3人が亡くなった土砂崩れ現場の向かい。
ここで、30年以上にわたって日本料理店を営んできた竹田利宣さん(65)です。
辻が花 竹田さん:
「ドーンという音がしたんです。ちょうどここで見てた時にドーンという音がしたのがあの穴なんです。こんなところからでも泥が入っとるんだからびっくりしますよね。この高さあるのに」
一瞬にして無残な姿となった店。となりにある自宅も避難指示の対象エリアに含まれていることから、竹田さんはいまもホテルで避難生活を送っています。
「(ホテルは)たぶん6畳くらいにベッドがあって、1つになった洗面所とトイレとお風呂という感じですよね」
あの土砂崩れから、もうすぐ1か月…
「(復旧工事が)1年から1年半かかるんじゃないかと言われてますよね。そうすると、1年半待って(店を)やりたいという気持ちが持続できてるかなという気持ちもありますね」
大きく変わってしまった暮らし。そして、街の風景…
「とにかく対話、被災した人との対話であったり説明会であったりというのを(市には)ちゃんとしてほしいというのはありますね。それがうやむやのままでは何をしていいかわからないですし」
今、竹田さんが伝えたいことは。
「未来のためにも情報や記録を全部出していただいて。誰が悪い、彼が悪いというのではなくて、それを出してもらって検討して、みんなでこういうふうにしたほうがいいよとやっていかないと、ちょっとせっかく松山に住みたいという人たちも住めないと思いますよね。安全に住んでもらうことが第一ですよね。それを願ってます」
土砂崩れ現場すぐ近くのエステ店。当時の映像を見ると、店の前に大量の土砂が押し寄せてることが分かります。
ビューティーサロンLino赤池悠代表:
「(当日の)7時8時くらいにこの現場を見たくて来たが向こうのほうから通行止めで入れなくて、夕方も入れなくて店の前まで来れたのは翌日になってから。ここまではげちゃってるんですけどここら辺ぐらいまで土砂が来てて」
幸い、店の中に土砂が入ることはなくいつでも営業できる状態ではありますが…
「ポールが入っている区域は、危険区域なので避難してくださいっていう指示が出てる。そんな状態でお客さんに来てくださいっていうのはちょっと難しいかなっていうのが現状ですかね」
赤池さんの店舗は現在も避難指示エリアの中にあります。
松山市からは「強制力はなく、自己責任で営業することはできる」と説明を受けていますが、利用客の安全などを考え店は再開していません。この1か月でおよそ30人分の予約がキャンセルになりました。
「今は知り合いのちょっとサロンを軽く貸してもらって、 今まで予約させていただいてたお客様の施術はさせていただいてます」
同業者の店舗を間借りしフェイシャルエステや脱毛などの施術をしながら生計を立てていますが、この1か月の収入は3割程度落ち込んだと言います。
「この先どこまで危険区域なのかっていうのも分かんないし、ここの営業をしとっていいのかなっていうのもちょっと不安だったり、ここになって解除されたからってお客さんがまた来てくれるかっていうのもちょっと不安だったりとかっていうのもあります」
赤池さんが、被災者として今伝えたいことは―。
「テレビで知ったとかっていうことが多いんですけど、 やっぱ被災してる人たちはそれよりも先に市からちゃんと直接連絡があったり、聞きたい部分はめちゃくちゃあると思うんですけど。何が不安かって言ったら情報を自分で集めなきゃいけないっていう状況。ここの住人の人たちとかも私達営業者もだと思うんですね。 ちゃんと聞けるところっていうのを与えてくれたり、連絡してくれたりとかしてほしい。不安を解消させる材料が欲しいかなと思う」
北村さん:
「当時は目で見てなかったので起こったということしか分からなかったが、実際に目で見て、本当に大きな自然災害が起こったんだなと」
広島出身で愛媛大学2年の北村蓮正さん。土砂崩れがあった緑町は学生も多く住んでいて、北村さんもその一人です。あの日は携帯のアラートで土砂崩れを知ったと言います。
「友達の方が山に近かったのでお前の方は大丈夫かと安全確認をしあいました。ほんまに被害を受ける可能性があったので無事でよかったなと思います」
北村さんの住むマンションには幸い被害はありませんでしたが…
「避難する場所も確認できていなかった。こういう被害が本当に起こるとは思っていなかった。地元ではないので(避難場所の)あまり確認もできていなくて」
あの日から一か月。
「身近な山で土砂崩れが起きるとは本当に考えていなくて。本格的に避難場所の確認とか停電とか水が止まった時のために水とか避難グッズを準備するのが本当に大変なんだなと、大切なんだなと思いました」
土砂が流れ込んだマンションでは。
矢田共行さん:
「進んできましたよね、だいぶ進んできたね」
10階に住む矢田さん。先週金曜に訪れた時と比べると、土のうも積み上がり工事が順調に進んでいるように見えますが…
「一段上に土のうを五つ六つ並べてるとこある木が出て、あの上は全く手付かずです。今のところ雨が降ってないけんええけど、もし大きなまた大雨が降ったらおそろしいものがある」
警戒レベル5・緊急安全確保が解除されたあと自宅に戻った矢田さん。
しかし、マンションの水を溜めるタンクなどが被災し水道が使えない状態が続いたことから毎日20ℓのポリタンク15個を部屋まで運ぶ日々が続いていました。
「やっぱり一番苦労した水ですよね、個人的には一番やっぱり断水が一番こたえたね」
先週、その水道も復旧し今は元通りの生活が戻ってきたと言います。
「潰れた駐車場の撤去とか全部綺麗に土砂をのけたりするとか8月いっぱいぐらいかかるだろう思っていたんですけど、 やっぱ早かったです。現場でやる人は本当に感心しましたね」
一方で、いつまた大雨が降るか分からない中、一刻も早く二次災害の対策が進むことを願っています。
矢田さんにはもう一つ、伝えたいことが。
「わからないこと、お願いごと教えてもらいたいこと、どういうふうになるか。何か話したいことがあっても言うてくるとこがない。目の前の今、今の困ってることを対応する話し相手してやってくれるような(被災者用の相談)窓口というかね、ここへ来てください。何でも話し相談に乗りますよっていうふうなのが窓口は欲しい」