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飛べない日々が教えてくれた航空業界の魅力…翼を支える影のプロ集団“グラハンスタッフ”の舞台ウラ

2023年10月14日 9:00
飛べない日々が教えてくれた航空業界の魅力…翼を支える影のプロ集団“グラハンスタッフ”の舞台ウラ
定刻出発を影で支えるプロ集団“グラハン”の仕事とは

観光客にビジネス客、大勢が行き交う松山空港を支える”グラハン”グランドハンドリングスタッフ。いま、ニーズが急上昇しています。今回、JALとANAの完全協力のもと、翼を支える“グラハン”を取材しました。

2020年。松山空港から人が、そして飛行機が消えました。

あれから3年。完全復活の、空の玄関口。

航空会社の顔として。誇りを守る者として。反転攻勢の航空業界を地上から支える、グランドハンドリングスタッフに密着です。

“おもてなしの最高峰”グランドスタッフに憧れて 夢だった航空業界へ

江川さん:
「おはようございます」

松山空港でJALのグランドハンドリングを担当する西鉄エアサービス。

江川さん:
「(制服を着ると)気持ちシャキッとはするかもしれないです」

入社5年目の旅客担当、江川千晶さん(23)です。

先輩:
「満席になっておりますので頑張っていきましょう」
江川さん:
「はい」

まずは、東京・羽田行きのカウンター業務です。

お客さん:
「自転車の専用の袋で収納して手荷物に預けることはできます?」
江川さん:
「もちろん大丈夫ですよ」

チェックインに…手荷物預かり。

江川さん:
「中身だけでなく、お鞄もなるべく傷がつかないようゆっくり。パンプスもなかなか履く機会ないじゃないですか。足も筋肉痛で腕も筋肉痛になりますね」


子どものころから旅行好きだった江川さん。高校を卒業後、夢だった航空業界に就職しました。

「航空業界のグランドスタッフがおもてなしの最高峰かなというイメージがあって。憧れをもって入社しました」

すべての乗客を機内へ案内 “定刻出発”を支えるのも重要な役割

江川さん:
「一般のお客様が座っている位置よりも近いので、私も乗っていきたくなっちゃいますよね」

続いて担当するのは搭乗ゲート。

江川さん:
「日本航空より東京羽田空港行き11時50分発434便をご利用のお客様へ、搭乗の順番についてご案内いたします」

ここでの最大のミッションは、全ての乗客を定刻までに機内へと案内すること。

「11時50分発日本航空東京羽田行きまもなく出発いたします。ご利用のお客様B搭乗口よりご搭乗ください」

この便に乗り遅れたお客さんは、ゼロ。無事、空の旅へと送り出しました。

飛行機を間近に…「ランプ担当」に憧れ転職 縁もゆかりもなかった愛媛へ

四国で唯一のANAのグループ会社、ANAエアサービス松山。

舘野さん:
「車両を運転しますので、アルコールを検査する」

ランプと呼ばれる地上エリアを担当する入社7年目の舘野優吾さん(27)です。

(グループ経営理念復唱)
職員一同:
「安心と信頼を基礎に世界をつなぐ心の翼で夢にあふれる未来に貢献します」

「お願いします」

茨城県出身の舘野さん。実は成田空港での仕事を辞めて、全く縁のない愛媛に転職してきました。

舘野さん:
「(前職は)あんまり飛行機の近くに行かない仕事だったので、それもあってもう一回グラハンに挑戦してみようかなと」

到着便を出迎え、折り返し便を定刻通り飛ばすための怒涛の45分間

舘野さん:
「じゃあファイナル(到着へ最終進入)入ったんで、お願いします。589便、折り返し592です。スポット3番で、到着リザーブ180名、折り返し187名です」

舘野さんたちのミッションは、到着便の出迎え、そして同じ機体を無事に折り返し飛ばすこと。

館野さん:
「停止線よし」
一同:
「停止線よし」

不審物がないか、目視で最終確認です。

そして、羽田空港からボーイング787が到着。

舘野さん:
「コックピットさんお疲れ様です。グランドです。着陸です」

貨物の積み下ろしに機体のチェック。

舘野さん:
「(機種ごとに)標準作業時間が決まってまして、(この機種は)45分なんで。それで出発時間にあわせて準備しないといけないんで」

グラハンにしかできないこと。グラハンにしか見られない景色。

(展望デッキの家族連れに手を振って)
館野さん:
「結構、こういうタイミングがめちゃうれしいですね」

定刻通り動き始めた機体。舘野さんの怒涛の45分間が終わりました。

JAL旅客担当の江川さん、西鉄エアサービスには自慢の研修制度があると言います。

江川さん:
「シスターです」
後輩:
「シスターです。分からないことあったら教えてくださって、すごくいいシスターでした」江川さん:
「ありがとうございます」

先輩から後輩へ、「シスター」と呼ばれるマンツーマンのフォロー体制です。

増便が期待される「国際線」 外国人客の快適な旅も支える欠かせない存在に

休憩後、江川さんたちの姿は国際線カウンターに。

江川さん:
「きょうはチェジュ航空をハンドリングしてます」

チェジュ航空のグランドハンドリングは、西鉄エアサービスが担当。

「英語と日本語とあとはiPadがあるので、翻訳のアプリ使ったりしてやってますね」

増便が期待される国際線も、彼女たちがいなければ飛ぶことはできません。

舘野さん:
「自分で作ってます」

自作のお弁当を食べながら休憩をとるANAエアサービス松山、舘野さん。近年、職場に女性スタッフが増えてきたと感じています。

「便担当するときも自分以外女性だったり。すごい横のつながりが。会社の人と旅行に行くみたいな頻繁に皆さんやってるので、仲いいなと思ってます」

「普段は見えないけど重要な役割を担うところに惹かれ」全国に50人しかいない“マスターインストラクター”に

舘野さん:
「これがマスターインストラクターという資格をとったらかぶれる帽子」

実は舘野さん、全国4万人のANAグループ社員のうち、およそ50人しかいないトップ資格を持つ一人です。後輩に仕事の魅力を伝えることも大事な役目です。

「いや、飛行機かっこいいですよね。脇役というか、普段は見えないんですけど、めちゃめちゃ重要な役割を担うというかそういう場所にすごく惹かれるので」

そんな舘野さんが思うグラハン最大の見せ場。

舘野さん:
「ここからの景色も違いますよね」

出発便を滑走路に向けて押し出す「プッシュバック」です。

「ずっとやってきたバトンを自分が最後アンカー的存在になるので」

定刻出発させる達成感を得ながら 各セクションが力を合わせて

江川さん:
「到着の人と出発の人が混ざってしまうといけないので、こういうふうに線を引いて混ざらないようにしてます」

夜は、到着便と出発便で混雑する時間帯です。

江川さん:
「一番最後に準備するのでご案内をお願いします」

到着した乗客を最初に出迎えるのもグラハン。

「きょうもワンワールドアライアンスメンバー日本航空をご利用くださいまして、ありがとうございました」

江川さんが担当する最後の便は、徒歩で搭乗する鹿児島行きです。

江川さん:
「お待たせしました。3686トータル3のインファント0のノースペシャルです。お願いします」

最後まで、JALの顔として。

江川さん:
「前便が遅れてやってきた時に、各セクションと力を合わせて、もともとの定刻で出発させられた時とかは本当に達成感がありますね。日本航空の制服を着てお仕事をさせていただいてるというのはすごく誇りを持っているので、日本航空の名に恥じないようにということはいつも心がけています」

ANAのグラハン、舘野さん。

舘野さん:
「コロナの時は便数が全然なかったので、下手すりゃ1日2便とかだったんで、全然仕事もないですし」

飛べない日々が、改めて航空業界の魅力を教えてくれました。

「1人では飛ばせないので、やっぱりチームで飛ばしてるっていうところがめちゃめちゃやりがいがありますし、注目はされないんですけど我々がいないと飛行機が飛ばないというところが結構面白いところかなと思います」

空港にグラハンがいる限り、翼は空へと飛び続けます。