藍の栽培から染色まで!「世界で1枚だけの空色」を夢みて 新ブランド立ち上げ目指す“藍染め職人”
転職をきっかけに松野町に移住し、たった1人で取り組んだ「藍」作り、いよいよ収穫です。自分で育てた藍でオリジナルデザインを染め上げる新ブランド確立を目指す男性の奮闘ぶりを取材しました。
藍農家 清水裕太さん:
「きょうは収穫です。藍の収穫をします」
8月下旬。厳しい暑さの残る中、松野町の畑で作業を行う清水裕太さん、34歳。
清水さん:
「手刈りでいきます。機械はないのでもう人力です」
収穫しているのは清水さんが3か月前に植えた「藍」。清水さんは愛媛では珍しい藍農家です。
なぜ、松野町で藍づくりだったのか。清水さんの「本職」に関係がありました。
転勤で移住…「デニムに関わりたい」山間の小さな町で乗り出した新規事業
実はサラリーマンでもある清水さん。滑床渓谷「水際のロッジ」のマネージャーです。
清水さん:
「もともと僕はこの会社でデニムに関わるプロジェクトをしたくて。藍染めの染料が畑から作られてるということを知って、育ててみようかなという感じになりましたね。その染料を通して、ここのことを知ってもらう1つのきっかけになればいいかなと」
そんな清水さんの夢が…
「行く行くは個人のブランドを作って、1人で1本でやって行けるようになるといいかなと思ってます」
耕作放棄地を活用して大切に育てた藍の苗 思わぬライバル出現で収穫量が激減
清水さんの夢を乗せた藍の苗はすくすくと育ち…初めての収穫を迎えたのです。
出来は、どうでしたか?
清水さん:
「無農薬でやってて、その分土づくりのところがうまくできてなくて、ちょっと栄養足りなくて葉っぱが小さい畑もありました」
今年、乾燥した葉の状態で300キロ程度の収穫量を計画していましたが…
「いや大幅減ですね。本当に4分の1ぐらいになってるんじゃないかと、予定より」
大量に減った収穫量。その理由は驚くべきものでした!
清水さん:
「ウサギに苗が食べられちゃった。野ウサギですね…あそこの竹やぶのとこ一帯がウサギの巣になってるみたいで」
竹やぶと畑の位置関係はこう。ウサギにとっては家の目の前にレストランができたようなもので、格好のごちそうを提供する形になってしまったようです。
アクシデントにみまわれながらも、残った藍は60センチほどに成長。自分の藍で染めた作品をそろえた、オリジナルブランドを持つのが清水さんの最終目標。収穫で、まずは第一段階をクリアです。
9月上旬。清水さんの姿は、自宅近くのビニールハウスにありました。
清水さん:
「ほぼ1日ですかね、からからに乾くまで1時間に1回位、天地返しながら乾燥させていきます」
藍の葉っぱは乾燥が進むと、緑から徐々に青く変わっていきます。
「ここから葉っぱをちょっと寝かせて、10月頃から『すくも』っていわれる藍の葉っぱに水をかけながら発酵させていく作業」
白と藍色の絶妙なバランスで生み出す“空色” 世界で1枚だけの個性的な仕上がりに
(清水さんの工房で)
記者:
「白いTシャツがありますが、これからどういった作業を?」
清水さん:
「きょうはこのTシャツを染めていきます。僕のブランドはテーマが空。白をいっぱい残したお昼のイメージと、のれんみたいな感じのちょっと濃い濃淡を濃く藍色に染めたちょっと夜っぽいイメージで、今回2色作っていこうかなと思ってます」
自分のイメージした藍色を生み出す、染料のもととなるのが「すくも」です。
「自分で育てた藍を使ったオリジナルブランドを持つ」というのが清水さんの最終目標ですが、今回、染に使う「すくも」は去年、清水さんが徳島県から仕入れたもの。
生地に折り目を加えながら輪ゴムでTシャツを縛り、Tシャツをボールのように丸めていきます。自らのデザインが作品になる瞬間です。
清水さん:
「液に触れてるところに色がつくので、内側のつかない部分は基本的には色がでないのらない。中でしみこませてあげて今こうぎゅって縛ってるんですけど、気分によってねじって開いて、そこまで液入れてあげたりとかしながら。その時思うがままに作ってるって感じです」
「僕、松野町に来るまで畑に全く興味がなくて。僕みたいに畑とか農とか興味がない人が僕のつくるこのアパレルやってることから、ちょっとでも畑や農業に興味を持ってもらえたらいいかなと」
丁寧に、丁寧に。1着につき6回以上染色を繰り返します。染まり方の異なる、世界で1枚だけのオリジナルTシャツ。
清水さん、出来栄えは?
清水さん:
「全部いい。かわいい僕の作品たちなので個性があっていいですよ」
「着るのが楽しみ」 地元で作られた珍しい“藍染め”商品に足を止める人たち
宇和島市で開かれたえびすまち商店街マルシェ。清水さんが染め上げたTシャツが並びました。
「UTA INDIGO CHILDREN」念願のオリジナルブランドです。
宇和島市から来た女性:
「主人の誕生日に買いに来ました。1点ものだし藍っていうのがいいですよね、自然の。こだわられてる感じが」
宇和島市から来た男性:
「着るのが楽しみです。すごいきれいですよね。まさか1から育てて藍染め作ってるなんて知らなかったんで、素晴らしいですね」
松野町で、たった1人で始めた藍づくり。
清水さん:
「藍づくりのほうはうまくいかないこともたくさんあったんですけど、作品のほうは去年と違って、色んな方と触れ合えたり自分の作ったものに対していいなって思ってもらえたり、すごい充実した1年になったかなと思ってます」
自分で育てた藍だけで自分のデザインを染め上げ、自分のブランドとして販売する。清水さんの「究極の夢」実現が近づいてきました。