【特集】共存のかたち示す "パレスチナ・オリーブ" イスラエル人とパレスチナ人が一緒になって作ったオリーブオイルを販売する日本人女性の思い
イスラエル・パレスチナの衝突が起きてから、2か月が過ぎました。
対立が続いてきた中、イスラエル人とパレスチナ人が一緒になって作ったオリーブオイルを販売する新潟市出身の女性がいます。
商品を通して見えてくる共存のかたちとは・・・。
宮城県仙台市にある小さな事務所。
ここで卸業を営んでいる皆川万葉さんは、新潟市出身です。
注文を依頼する電話が毎日かかってくるといいます。
主に扱っているのはオリーブオイルで、ラベルには「パレスチナ・オリーブ」とあります。パレスチナから製品を輸入し、日本の消費者に届けています。
〈パレスチナ・オリーブ 皆川万葉さん〉
「1995年に初めてパレスチナに行きました。朝起きて窓を開けたら真っ青な地中海が広がっていて、それが第一印象として残っています。地中海は、美しい海と美しい風景がありますよね」
大学在学中にパレスチナを初めて訪れ、その後、留学も経験しました。そこで見たガザ地区の海。皆川さんがそれまで抱いていたイメージとは違う日常の景色でした。
しかし・・・。
いまから2か月前。パレスチナ自治区のガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織「ハマス」が突如、イスラエルを攻撃しました。イスラエルは報復の空爆を行い、軍事衝突に発展しました。その後、多くの民間人が犠牲となっています。
イスラエルとパレスチナの対立には長い歴史があります。
溝が深まったのは1948年です。
ヨーロッパ各地で差別や迫害にあったユダヤ人が「祖先の地に自分たちの国をつくろう」とイスラエルを建国しました。長らくこの地に住んでいたパレスチナ人は、故郷を追われることになりました。
その後、4回の戦争ののち「オスロ合意」が結ばれます。
「パレスチナ人の暫定自治をガザ地区とヨルダン川西岸で始める」とする和平合意でした。
しかし、パレスチナ自治区はイスラエルの占領下におかれているのが現状です。
現地の人たちを支えたい
10月7日の軍事衝突後、全国から注文が相次いでいる「パレスチナ・オリーブ」。
こちらを作っているのは「ガリラヤのシンディアナ」という団体です。
中心メンバーはイスラエル領に住むパレスチナ人ですが、運営にはイスラエル人も関わっています。
〈パレスチナ・オリーブ 皆川万葉さん〉
「共存なんて無理、夢物語、お花畑とか言われてしまうわけですが、そうではなくて、実際にともに働くことはできるということを、みんなに見せていくことが大事だと(現地の人は)前から言っています。10月7日以降も、より一層その大事さを感じると言っています」
皆川さんは20年以上、オリーブオイルのほかにも2つの団体とも取り引きをしていて、石けんや刺しゅう製品も輸入しています。
出来上がる製品はどれも高い品質を誇り、現地のパレスチナ人にとってはなかなか手が出ない高級品になっています。
さらにイスラエルによる検問などで人やモノの行き来がコントロールされている側面もあります。
せっかく作っても買い手がいなければ意味がないと、皆川さんは団体と協力して、日本の消費者につなげているのです。
〈パレスチナ・オリーブ 皆川万葉さん〉
「経済が衰退させられているという現状に対して、それでも伝統的なことや農業を続けていきたいと思っている人たちを支えていきたいと思っています」
ことし11月、皆川さんの姿は地元の新潟県にありました。商品を扱っている店から講演の依頼があったのです。
〈店員〉
「最初は応援するところから始まりまして、それからリピーターさんが増えていくという感じですね」
〈パレスチナ・オリーブ 皆川万葉さん〉
「パレスチナで気になって、使い始めたら気に入ってという感じですかね」
皆川さんはいま、全国150ほどの店と取り引きがあり、今回の軍事衝突以降、新規の客も増えたといいます。
講演では皆川さんはどのような仕組みで現地と取り引きをしているのかを説明しました。
参加した人からは、パレスチナの現状について質問が相次ぎました。皆川さんは、関わっている生産者は無事であることなどを答えていました。そして・・・
〈パレスチナ・オリーブ 皆川万葉さん〉
「パレスチナ人とかイスラエル人とかじゃなくて、パレスチナの中にもイスラエルの中にもいろんな人がいます。『ともに生きる』の中身ですよね。みんなが元気になって、つながって安心して生きていける社会をつくる。そういう気持ちでいま関わっています」
皆川さんが伝えた「ともに生きる」ということ。
問題は複雑ですが、イスラエル人とパレスチナ人が一緒になってオリーブオイルをつくっている事実があるから、信念を貫くことができると訴えました。
〈講演会に参加した人〉
「パレスチナということで、いまガザのこととかがテレビでも情報が流れているので心配になって。本当のところはどうなんだろうって、そのことに関心がありました」
「ずっと地道に続けていらっしゃって。地元の人と一生懸命交流していて。それがすごく伝わり応援したくなりました」
オリーブオイルが現地を知るきっかけになれば。そんな思いから発信を続けます。
〈パレスチナ・オリーブ 皆川万葉さん〉
「いまスタッフのみなさんは大丈夫なのとか、具体的な生産者さんのことをイメージして心配してくれているのはありがたいと思いました」
「ともに生きる」そんな思いを込めたオリーブオイル。
遠い国の出来事でも、身近な製品を通して思いをはせることができます。