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【特集】台風19号災害から5年➂  千曲川の治水対策は今… 気象予報士・流域治水アンバサダーが取材(1)

2024年10月11日 21:25
【特集】台風19号災害から5年➂  千曲川の治水対策は今… 気象予報士・流域治水アンバサダーが取材(1)

5年前の台風19号災害をきっかけに、水害を繰り返さないための対策が進んでいます。こうした取り組みを一言で表すと、流域治水といいます。地球温暖化など気候変動によって、大雨が増えることを想定し、川の上流から下流まで住民や自治体が一緒になって行う取り組みです。流域治水の現場を取材しました。

長野県内、全長214キロの千曲川。その源流は、長野・山梨・埼玉の県境にある標高2475mの甲武信ヶ岳です。そこから東信、北信の41市町村を流れ、新潟県を通って、日本海に流れ込みます。

信濃川としての全長は367キロ、日本一の長さを誇ります。

鈴木智恵気象予報士
「ゆったりと流れていますけど、日本一の川なわけですもんね、大雨が降る
とやっぱり対策が必要ですね。」

千曲川河川事務所河原武志 副所長
「こちら千曲川では、令和元年東日本台風で非常に甚大な被害がありました。それを踏まえまして、信濃川水系緊急治水対策プロジェクトを行っているところでございます。」

千曲川河川事務所の河原武志さん。
いま進めている治水対策のポイントを聞きました。

河原副所長
「流域の方々と関係者としっかりと協議をしながら進めている状況でございます。その中でもやはり信濃川流域の全体として、上下流バランスを図りながら、氾濫リスクを踏まえてしっかりと千曲川の水位を低下を図っていきたいと思っています」

佐久市原の上空です。千曲川の上流に位置します。非常に流れが速いです。濁流となっています。ここに家がありましたが流されてしまいました」

5年前の台風19号災害では、千曲川の上流、東信地域。

下流の北信地域にかけて広い範囲に被害がでて堤防などの損傷箇所は797か所に上りました。長野市穂保では堤防決壊。大規模な水害をもたらしました。

このときの決壊のメカニズムについて、国は、現場の少し下流にある「立ヶ花狭窄部」が原因のひとつだと分析しています。

川の両側の堤防間の広さ、そこまでは幅およそ1キロと広かったものが、一気に200メートル前後まで狭くなる場所です。

5年前、台風19号災害が起きた10月12日から13日にかけての県内での解析雨量。千曲川の上流では、300ミリ以上の雨が降りました。

この大雨がもたらした大量の水が立ヶ花狭窄部でせき止められ、水の流れが悪くなると、そこから上流に向かって徐々に水かさが増加。

およそ6キロ上流の長野市穂保の堤防から水があふれだしました。

あふれた水が住宅地側の斜面を削り、耐えられなくなった堤防が決壊しました。

国は災害直後から緊急治水対策プロジェクトを進めています。河川における対策、流域における対策、まちづくり、ソフト施策の3つを柱に3年後の2027年度までに完了させる計画です。

その中で、特に重要な位置づけとしているのが、川幅が狭い、狭窄部の対策です。流れる水の量を増やすための工事です。

鈴木智恵 気象予報士
「復旧作業が進められているところですが、河原さん、こちらではどんなことをされているわけですか?」

河原副所長
「こちらでは河川の対策として河道掘削を実施しております」

鈴木気象予報士
「前はもう少し土があったってことですか?」

河原副所長
「ちょうど同じ、今私たちが立っている面と同じくらいの高さで、土砂がありました。こちらの方を河道掘削して、掘削したことによって川幅が広がって、水の流れる量が増えて、それによって洪水のリスクを下げると」

河道掘削は、立ヶ花狭窄部のほか9か所で行われていて、工事の進み具合は計画の3分の1を超えたところです。

鈴木気象予報士
「立ヶ花から5,6キロ下流の所にやってきました。河原さん、こちらはどういった場所になりますか?」

河原副所長
「こちらは洪水のときに水を貯める場所であります」

中野市の上今井遊水地。

貯められる水の量は、640万立方メートルで、25メートルプール、1万7800杯に相当します。

国や県では、飯山市、長野市、千曲市など合わせて9か所に遊水地を作り、水害に備える予定です。

鈴木気象予報士
「かなり下っていきますよ、河原さん」

河原副所長
「ここからは入ってもらわない…」

立ち入り禁止の先にある、治水対策の要とは・・・。カメラが初めて入りました。

5年前の台風19号災害をきっかけに整備が進む中野市の上今井遊水地。

鈴木気象予報士
「かなり下っていきますよ、河原さん」

河原副所長
「ここからが実際に排水樋門をご覧いただける場所につながっていきます」

「あちらにご覧いただけます、穴の大きさですけども、高さ6m幅が5mになります」

鈴木気象予報士
「かなり大きくて圧巻というところがありますね」
「ここに水が浸かっているイメージなわけですね、かなり高いですよね、ぐるっと見てみるとね。治水っていうと、どうしてもガチガチに固めてってイメージが、河原さんあるんですけども、こういった水をのがして、ためておく場所をつくってというと新たな発想っていう所もありそうですね。以前と比べると」

河原副所長
「そうですね、今までだとなかなか、川を、堤防造って水を流すという形でありましたけど、こういう遊水地という機能で少しでも下流へ流れる水を少なくしながら、ここでため込んで、下流の人たちを守るという機能が少し遊水地の中にはあると思っています」

上流では水の流れを良くする河道掘削を行い、下流では、水を貯める遊水地を整備。

こうした対策により堤防決壊現場付近での水位は5年前と同じ量の雨が降った場合で1.2メートル低くなると説明しています。

ただ、1日で300ミリ以上の雨が降る日数は、年々増えている傾向です。

鈴木気象予報士
「近年、地球温暖化が進んで、極端に雨が降ってきたりとか、予想以上のことって多くなってますけれど、これぐらいあれば大丈夫なイメージなんですか?」

河原副所長
「まだまだ安全安心というところまでは至らないですけれども、まだ途上ですけれども、しっかりと皆さんの安全を守りたいがために、しっかりとこういう工事を進めていきたいと思っております。」

千曲川の恩恵、肥沃の地。その一方で、牙をむく自然。

命と暮らしを守る対策がこれからも求め続けられます。