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【頂点目指す】能登半島地震で被災 石川県立飯田高校ウェイトリフティング部 監督は岩手県釜石出身 岩手からの支援受けて全国の頂点目指す

2024年8月2日 18:50
【頂点目指す】能登半島地震で被災 石川県立飯田高校ウェイトリフティング部 監督は岩手県釜石出身 岩手からの支援受けて全国の頂点目指す

 特集です。

 能登半島地震の被災地に岩手とつながる高校生がいます。

 岩手県釜石市出身の監督の指導のもと、インターハイに出場している石川県立飯田高校ウエイトリフティング部の選手たちです。

 練習環境が整わない選手たちに支援の手を差し伸べたのは岩手の人たちでした。

 石川県立飯田高校ウエイトリフティング部。

 岩手とのつながりを力に被災地から日本一を目指しています。

 指導にあたるのは、浅田久美さん61歳。

(練習)
「ほい。おいしょー」

 能登半島の突端、石川県珠洲市です。

 ことし1月の地震で大きな被害を受けました。

 ウエイトリフティング元日本代表の浅田さんは、16年前、結婚を機にこの町に移り住みました。

 12年前にクラブチームを立ち上げ、数多くの選手を育ててきました。

 浅田久美さん
「生きがいであり、やりがいであり。宝物ですかね」


 浅田さんは釜石出身。

 13年前の東日本大震災では、親戚を亡くしました。

 そしてことし、第二のふるさとも被災。

 浅田さん
「ひどすぎる」

 部員たちは無事でしたが、練習場は救援部隊の待機場所に…。

 大会出場はおろか、練習も諦めるしかない。

 そう考えていた矢先、思わぬ出会いがありました。

 被災地にシャワーを届けていた岩手県北上市の企業、北良の笠井健さんとの出会いです。

 浅田さん
「岩手つながりというのが、何の面識もないんですけど、それだけが頼りというか。それで電話をさせてもらったんです。『じゃあ何か考えましょうよ』って言っていただいて。『練習できる環境つくりましょうよ』ってね」

 しかし、浅田さんは迷っていました。

 浅田さん
「部活どころじゃないだろうと。反感買って終わりかなと思ったりもしたし。そしたら、『じゃあ分かった』と。『岩手の方から、このクラブを応援するよ』って。『そういう形で行きましょう』と言っていただいて」

 笠井さんは、遠征費などを捻出するためインターネットのクラウトファンディングを実施。

 全国の支援者からおよそ180万円が集まりました。

 浅田さんはバラバラに避難生活を送る選手たちを集めた県外での合宿を企画。

 これまで練習に参加できなかった橋本侑大(ゆうだい)さんとも久しぶりに再会を果たしました。

「おお侑大。がんばるんだぞ」

 地震で祖母のみち子さんを亡くした侑大さん。

 自宅は倒壊し、ビニールハウスで避難生活を送っていました。

 侑大さんの母
「私の母、おばあちゃんも本当に活躍を楽しみにしていたので、また続けてくれるのがよかったなと思って」

 珠洲市からおよそ200キロ離れた福井県坂井市。

 震災前から交流があった坂井高校が浅田さんたちの練習を快く受け入れてくれました。

「こいっ」

 高橋侑大さん
「久しぶりの練習で不安なこととか、楽しみなことととか、いろんな感情があったんですけど。『仲間と練習するっていうのは本当に楽しいな』って思いました。」

 地震からおよそ半年となる6月下旬。

 この日、支援をした北良の笠井さんらが飯田高校を訪れました。

 笠井さん
「元気にされているなと」

 浅田さん
「本当に助けていただきました。あの時はどうしようかなと思って」

笠井さん
「少しは役に立ちました?」

 浅田さん
「少しどころか、笠井さん、もう…。もうホント私、笠井さんにめぐり会わなかったら、この子たちもウエイトは諦めていたと思います。ありがとうございました」

 笠井さん
「あの状況でスポーツするのはどうなんだっていう空気は私も気にはしたんですけど。でもやっぱり、大人にとっては生活ですけど、子どもたちにとっては競技って日常のすごい大事な部分だったと思うので」

 笠井さんは地震から半年のタイミングで支援者を対象にしたオンラインでの報告会を企画。

 メンバーそれぞれが大変だったことやうれしかった思いを語りました。

 部員
「多くの人たちの支援のお陰で、生きる希望ができました」

 全国各地の支援者114人。

 ひとりじゃない―。

 その思いとともに半年間、過ごしてきました。

 この間、飯田高校はインターハイの前しょう戦となる北信越大会に出場。

 祖母を亡くし、ビニールハウスで暮らしていた侑大さんは…。

 見事に優勝を飾りました。

 3年生は大会新記録を樹立。

 メンバーはあの日からそれぞれの思いを胸に立ち上がってきました。

 飯田高校は5人が優勝。

 ほか2人も5位と6位に食い込む活躍を見せました。

 あの大地震から半年。北信越大会、優勝。創部以来、初めての快挙でした。

 浅田さん
「『僕らはこれだけ頑張ってるぞ』って。『みんなもだから一緒に頑張りましょうよ』という。僕らにしかできないことをやってのけてくれたのかなと思っています」

 大きな手ごたえと確かなつながりを胸に飯田高校ウエイトリフティング部は、この夏、全国の頂点を目指します。

【スタジオ】
 インターハイのウエイトリフティング競技は、長崎県を会場に8月2日、競技が始まりました。

 飯田高校からは5人が出場し、55キロ級の選手が早速、6位に入賞しました。

 個人戦とともに力を合わせて団体優勝を目指します。