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元宝塚男役スター・七海ひろき、公演中に大階段「落っこちました」ハプニング語る――照明さんの機転に感じた「舞台は総合芸術」

2023年4月28日 20:10
元宝塚男役スター・七海ひろき、公演中に大階段「落っこちました」ハプニング語る――照明さんの機転に感じた「舞台は総合芸術」
元宝塚歌劇団・男役スターの七海ひろきさん。ターニングポイントとなった作品だという『風と共に去りぬ』では、公演中に大階段からずり落ちてしまうハプニングがあった。苦い体験を経て舞台の中心に立つ責任感を改めて感じたという七海さんに、熱烈な宝塚ファンで日本テレビアナウンサーの安藤翔アナ(妻が元タカラジェンヌ)、中島芽生アナ(宝塚音楽学校を4回受験)の2人が迫った。

<七海ひろきさんプロフィール>
茨城県水戸市出身。1月16日生まれ、2003年に89期生として入団。宙組に配属後、星組に組替えとなり、男役スターとして大活躍。2019年の退団後は俳優、声優、アーティストなど挑戦を続けている。

■役替わりの『風と共に去りぬ』で…

(安藤アナ):宙組と星組合わせて16年在籍。その中で、ターニングポイントとなった作品はありますか。

(七海さん):ターニングポイントは『風と共に去りぬ』です。それまでもちろん、舞台に立つ上でできることを精一杯やろうと思っていたのですが、この作品で初めて、大きなものを背負って立つのだということ、作品に対する責任感を感じましたね。

スカーレット・オハラとルネという役の役替わりでした。初めての役替わり公演で、稽古場も本番ももう大変でした。それまでに女役をやったこともあったのですが、スカートもそこまで長いものではなかったので、まだお芝居に集中できた。ただこの役では(長いスカートの)裾を踏んでしまうとか、大階段を上るとか段取りが大変。私はそんなに器用ではないので。初日の前日はやることをシミュレーションしなきゃいけないので大変でした。

(安藤アナ):(男役と女役では)所作が違いますものね。

(七海さん):もう全然真逆のことをするので。特にドレスで大階段を上るというのは、やったことがなかった。すべての女役さんを心から尊敬しましたね。

(中島アナ):ハプニングもあったんですよね。

(七海さん):そうなんです。デュエットダンスで、長いドレスで大階段を上り下りをするというシーンがあった。とにかく階段を行ったり来たりするんですよ。ある公演で階段を9段ぐらいザザザザーっと落っこちました。

もうその瞬間、何が起こったのかわからない。「え? え?」という感じになって気付いて上っていったんです。そこで落ちた瞬間に照明さんが機転をきかせて、照明を消してくれていたんです。私が落ちている瞬間、ライトが当たらないように。だから、落ちている瞬間はライトが当たらない状態で、上まで上った時にまたライトをつけてくれたということがありました。

本当にすごいなと思いました。だって落ちるなんて予想できないじゃないですか。なのにその瞬間にガッと(照明を)下げてくれた。その時の私、どんな感じになっていたんだろうと公演直後にモニターを見に行ったんですが、本当に真っ暗になっていて。舞台が総合芸術だということを改めて感じました。

■音楽学校に「七海ひろきはいなかった」!?

(安藤アナ):星組に組替えされた時はどんな思いでしたか。

(七海さん):正直に言うと、ちょっとびびってました。やはり組替えするとなると、自分を知らない人たちの中に入っていくので、『どう思われるんだろう』というドキドキはありました。

宙組は研1の時から12年ぐらいいたのかな。周りも私のことをすごくわかってくれている。そうではない初めての人たちだからこそ、自分から関係を持っていかなきゃと積極的に話しかけていくようになりました。

逆に星組のみんなが「ひろきさん!」「お兄様!」という感じで、どんどん接してくれたので、とても仲良くなりました。

(安藤アナ):七海さんには積極的なイメージがありますが、音楽学校時代は少し違ったと聞いています。

(七海さん):星組に組替えして、同期の壱城あずさちゃんとか一つ下の如月蓮さんとか白妙なつちゃんとかに「音楽学校には七海ひろきははいなかったな」と言われました。(いまの)こういう振る舞いの存在はいなかったらしいんですよ。当時はわりと同期の中でも声も小さくて。

(中島アナ):実はそのことをよく知っていらっしゃる同期の元雪組トップスター・望海風斗さんからコメントをいただきました。「動きもアザラシみたいで手をパタパタさせながら一生懸命しゃべっている子というイメージでした。でも組替えしちゃってからはびっくりするくらいアザラシの面影がなくなっちゃって『ひろきお兄様』とか呼ばれちゃって。悲しくもあり、でも何か覚悟のようなものが見えて、そんなかいちゃん(七海さん)の姿に刺激をもらっていました」と。やはり組替えで覚悟の瞬間があったんですか。

(七海さん):覚悟はしていきました。育ってきた環境とは違うところに行くからこそ、強い信念は持っていかないと、きっと波にのまれてしまうというような気持ちがあったので、ぐっと力を入れて進んでいった感覚でした。

■宝塚で学んだ「度胸と根性」

(安藤アナ):宝塚で学んだことで、今一番生きていることは何でしょうか。

はい、ズバリ「度胸と根性」です。今とても思うのは、いろいろな場面で培った度胸がとても役立っているし、あとは何をするにも最終的には“根性があれば何とかなる”という、力で押し切る部分があるんですよね。これが根底にあれば何でもできるんだなと学びました。

最後は初日に何としても持っていく、強い信念がないと完成しないものなんです。それはきっと、今やっていることすべてに共通するものなんだなということをとても感じています。これからも度胸と根性で頑張ります。

(『アプレジェンヌ〜日テレ大劇場へようこそ〜(七海ひろき編)』より抜粋・再構成)

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アプレジェンヌ』は日テレNE WS24制作のシリーズ企画。元タカラジェンヌをお招きし、日本テレビアナウンサーで熱烈な宝塚ファンである、安藤翔アナ(妻が元タカラジェンヌ)、中島芽生アナ(宝塚音楽学校を4回受験)の2人が、ゲストの宝塚時代・退団後の生き方に迫ります。

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