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元宝塚・光月るう、千海華蘭「あの経験がなければ」「上田久美子先生のダメ出しで」……在団時の“ターニングポイント”とは

2023年7月28日 20:10
元宝塚・光月るう、千海華蘭「あの経験がなければ」「上田久美子先生のダメ出しで」……在団時の“ターニングポイント”とは
今年4月にそろって宝塚歌劇団を卒業した元月組組長の光月るうさんと元月組スターの千海華蘭さん。長年にわたり月組を支えた2人にターニングポイントとなった作品や退団後の近況を聞いた。元月組トップスター・珠城りょうさんから2人へのメッセージも…。日本テレビの熱烈な宝塚ファン、安藤翔(妻が元タカラジェンヌ)と中島芽生(宝塚音楽学校を4回受験)が迫った。

<光月るうさんプロフィール>
埼玉・熊谷市出身。7月25日生まれ。2002年に88期生として入団。2018年月組組長に就任。月組の大黒柱として80人近い組子をまとめ上げた。

<千海華蘭さんプロフィール>
大阪市出身。7月25日生まれ。2006年に92期生として入団。芝居では子どもから老人まで幅広い役柄を魅力的に演じる一方、ショーで見せるギャップで客席を魅了した。

■慣れないインスタで投稿ミス

――今年4月、お二人そろって『応天の門』『Deep Sea -海神たちのカルナバル-』東京公演で卒業されました。退団の翌日は何をしましたか?

(光月さん):駆けつけてくれていた同期生、先に卒業している下級生たちがまた会いに来てくれまして。遅くまで日をまたいで明け方ぐらいまで話して。その後、自宅に帰り、ぼーっとしながら、夕方からは華蘭ちゃんと一緒に知人と、そして華蘭ちゃんの同期生たちと一緒にお祝いしてもらいました。

(千海さん):私も同期の蘭乃はなちゃんと一緒に明け方までずっとおしゃべりしていて、次の日も朝からお昼ごろまでずっとお話していて。夜はるみこさん(光月さん)と一緒にお食事いただきました。

――最近、大笑いしたことは?

(光月さん):卒業してから今までできていなかった「人と会うこと」をしています。お会いした上級生と思い出話をたくさんしてゲラゲラ笑いました。

(千海さん):最近、インスタグラムデビューをいたしました。投稿に慣れておらず、ストーリーズというものを初めてあげる時に投稿ボタンを誤って何度も押してしまい同じものが6連続ぐらいでアップされてしまって。それにも気づかずに一緒に開設を手伝ってくれた同期の中原由貴が画面録画で教えてくれて、2人で大笑いしました。

■上田久美子先生からの「ダメ出し」

――お二人とも宝塚には20年ほど在団されています。その中でターニングポイントとなった作品は何でしょうか。

(光月さん):自分自身の中の考え方が変化したのは『夢の浮橋』の新人公演です。7年目までの下級生たちで一回だけ(本公演と)違う役をさせていただく新人公演という機会があるのですが、その新人公演がターニングポイントだったのかなと思います。

――源氏物語の中の宇治十帖を取り上げた作品で、本役は霧矢大夢さんが演じた薫という役でした。

(光月さん):薫という役にすごく惹かれた部分があります。葛藤の中で感情を動かすところ、その部分が自分の中で開花したところだったなと。感情的に表立って出すものではなく『秘める』と言いますか、そこが自分にとって心地がいい感覚になりました。

薫役は霧矢さんが2番手さんとしてやられていた役でとても大きな役。1人で歌って紅葉をバックに登場するという。なんせ初めてだったので、トップさん、2番手さんのような大役をされている方たちは毎回しているんだなと。それを経験して、私はこのプレッシャーを1人で背負っていくことが、自分に合ってないんじゃないかと思いました。

一度は真ん中に立ちたいと思って夢を抱いてみんなこの世界に飛び込む。今までは、少しでも真ん中に近づいていきたいと一生懸命そこに向かっていたんですけど、自分が行きたい場所はもしかしたらそこじゃないのかもしれないと気付いた時でもありました。

将来の自分の可能性を信じている中で、注目されていく役、みんなの中で真ん中に立っていく役に向かっていたはずなんですが、そこで開花する人じゃないのかもしれないなと、その時に思ったんですよね。あれを経験できていなかったら、もしかしたら今の私がいないのではと思います。

――千海さんはどういった作品がターニングポイントになりましたか?

(千海さん):私は卒業間際の『桜嵐記』が心に残っています。演出の上田久美子先生と『月雲の皇子』という作品でご一緒して、それから時を経て自分がどう成長できているのかを自分自身も楽しみにしながら、また先生にも成長した姿を見ていただけるようにと意気込んで作品に取りかかったんです。けれどなかなか役を表現することができなくて、先生からもなかなか役へのOKが出ない。あがいて、もがいて最後に到達した、自分の中で芽生えたような作品でした。

自分の進むべき道や目標、やっていきたいことも、ジンベエという役を通して見えてきたものがたくさんあって、今の私を語るにはなくてはならない作品かなと思いますね。

――ジンベエは主人公の楠木正行に仕えた人物。このジンベエが正行に駆け寄っているシーンで私たち(観客)の思いを語っているかのような役でした。

私も観ているお客様の代弁者の役割があると思っていました。お腹の底から湧き出たものでしか、正行の生涯、珠城りょうの卒業公演に合わせた世界観を表現できない。(上田久美子)先生が毎日、毎日、ダメを出してくださって、その中で自分のお腹の底の感情に向き合えたかなという思いがありますね。

――ダメ出しはどういったもの?

具体的に「こうしてください」「ああしてください」ということはなく、「どうしてできないんですか」と問いかけですね。「なんでできないんですか」と。私もそれがなぜかわからなくて。多分先生は本当のリアルな感情を使えているかどうかを毎回見てジャッジして、私に問いかけてくださっているんじゃないかと思って、そこを超えていくにはどうしたらいいのかを日々、毎秒考えていました。

でも、ある時からぱたりとダメがなくなりまして。不安に思って先生に「大丈夫ですか」とお聞きしに行っても「いや別にないです」とおっしゃっていて。先生はストイックに場面作り、役作りについて導いてくださる先生で、気になったことを言わないということはない。そのときにジンベエという役と、役へのアプローチについて自分なりの正解が見つかった。課題を超えられたのかなと思いました。

――その楠木正行を演じた元月組トップスターの珠城りょうさんからメッセージをいただいています。

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るみこさん、からんさん

改めてご卒業おめでとうございます。
お二人と過ごしてきた時間を語ろうと思ったら、何時間あっても足りないと思います。最後のステージを観た時、今までのことが蘇って姿を見るだけで涙が出ました。笑
まずはゆっくり休んで、これからはご自分のペースで自由に歩んでください。
またお疲れ様会しましょうね!!
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(千海さん):忙しいのにありがとう。うれしいね。本当にマメですよね。

(光月さん):マメです。気遣いの人です。

――そんな珠城さんにお二人はどんな方ですかとうかがいました。光月さんは「どんなことも受け止める寛容な人。光月さんが『初舞台から見守ってきたりょうがパレードで降りてくる時に、本当に幸せな気持ちになる。いつも私たちの思いに応えてくれてありがとう』と言ってくださったことが何度もあって、そのたびに感謝の気持ちで涙が出ました」と。

(光月さん):そうなんです。『ME AND MY GIRL』という作品で、たまちゃん(珠城さん)が初舞台生で同じ公演で出ていたので、よく覚えています。パレードで降りてくると感慨深いものがありますよね。ビービー泣いていたたまちゃん。

――千海さんはどんな人かうかがったところ、「何があっても諦めない努力の人、芝居で関わることが多かったので、ハプニングがあると全力で助けてくださった。刀が腰にうまくさせなかった時も、フォローをしてくださった。ジンベエの時に私が汗と髪の毛ぐちゃぐちゃだったのを、いつも顔が見えるように寝かせてくださっていました。そういう時に勝手に絆を感じていました。ありがとうございました」と。

(千海さん):すごくご縁があって、新人公演もずっと一緒の時代を過ごしてきましたし、お役でも近くにいることが多くて。ハプニングもいろいろ2人で乗り越えたという思い出もたくさんあるんです。私はきっちゃんと呼んでいるんですけれど、きっちゃんもそう感じてくれていてうれしいです。努力の人なんて本当に恐れ多いんですけれども、でも近くで見てくれていた彼女からいただく言葉はすごくうれしいです。

(『アプレジェンヌ〜日テレ大劇場へようこそ〜(光月るう・千海華蘭編)』より抜粋・再構成)


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アプレジェンヌ』は日テレNEWS24制作のシリーズ企画。元タカラジェンヌをお招きし、日本テレビで熱烈な宝塚ファン、安藤翔(妻が元タカラジェンヌ)、中島芽生(宝塚音楽学校を4回受験)の2人が、ゲストの宝塚時代・退団後の生き方に迫ります。

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