19歳の作家・日比野コレコ 執筆は「VRゲームに近い」 最新作の主人公は“恋愛に生きるモモ”
1作目発売からおよそ1年。10月27日に発売された最新作『モモ100%』では、恋愛に生きるモモの学生時代を描いた物語。“恋愛こそ武器であり革命、それ以外は退化だ”と恋愛に生きるモモと、そんなモモの全てを受け入れる星野、2人の恋模様が描かれます。
■「考えるより先に書いていた」 幼少期から物語を創作
日比野さんは、2003年奈良県生まれの19歳。現在は大阪に住んでおり、大学に通いながら作家として活動しています。そんな日比野さんが物語を書き始めた理由とはー。
――小説を書き始めたきっかけはなんでしょうか?
私は書こうって考えるより先に書いていたほうの作家で、幼稚園とか小学校の頃から文章を書くのがずっと好きでそのまま来てしまったって感じ。きっかけとかはないかもしれない。本をいっぱい読んで、なぜか小説を書いていたみたいな感じです。
――これまでに2作出されて、現在3作目も執筆中ということですが、共通しているものはありますか?
最後は『祝福』で終わりたいっていう信念みたいなものが昔からあって。1作目も2作目もめっちゃかっこいい終わり方をするんですよ。ずっと三人称で書かれていたのが最後一人称になって、読者に直接語りかけるみたいな。そういうところは変わらないかなって思いますね。大好きなところなので。
■物語を書くことは「VRゲームに近い感覚」
1作目では悩みや問題を抱える高校生たちの群像劇を、2作目では恋愛に生きるモモを主人公に描いた日比野さん。執筆はどのように行うのでしょうか。
――書いている時はどのようなことを考えて書いているのでしょうか?
書いてる時の感覚っていう話やったら、皆さんの感覚からするとVRゲームに近くて。自分が書いてるっていう認識はあんまりなくて。小説の中を進んでいるみたいな感覚の方が近いかもしれない。
――VRゲーム、おもしろい例えですね
自分で書いている時に体験しているみたいな。体験していることを書いてるって言われればそうで、小説を書きながら、自分の体を体験しているって認識していて。
――1冊の作品として作るときに意識していることはありますか?
タイトルを決めるのはいつも早いんです。タイトルを結構最後の方に持ってくることが(多い)。『ビューティフルからビューティフルへ』っていう小説は、最後「ビューティフルからビューティフルへってことなんやろうな」で終わるし、『モモ100%』も最後のページに「モモは100%だよ」みたいな言葉が出てきて、タイトルでうまく小説を言いくるめる、言い当てるみたいなのは大事にしています。
■創作のための“メモ”
日比野さんは、執筆のために普段から印象に残った言葉や熟語、大ファンだという松本人志さんの言葉もメモしているそうです。インタビューでは最近見つけたというお気に入りの熟語を教えてくれました。
――執筆にいかすため普段から言葉をメモしているとか?
日常で見つけためっちゃ面白い二字熟語とか、小説に使いたいなっていう熟語とかをよくメモしますね。
――最近メモしたものはなんですか?
『鯨飲的』っていう言葉があって。すごく面白くてメモしました。意味があると邪魔なんですけど。(見た目が)すごいよかった。【※「鯨飲」…(鯨が水を飲むように)多量に酒を飲むこと】
――メモは探そうと思って探している感覚ですか?
うーん、なんでもメモしますね。友達が「俺らの世代はこっから絶対よくなるから」みたいなことを言ったのとか。私たち10代の世代って、これからよくならへんということを大人たちに教えてもらってきた世代じゃないですか。この発言いいなって思ったのとか、そういうメモはします。
――これまでの2作を踏まえて、ご自身の強みを教えてください
「言葉がおもしろい」とか「比喩が面白い」とか、「10代の生き方をよくわかっていない主人公たちのことを書いてるよね」って褒めていただくことは多いんですけど。でも私は小説として、物語としてすごく強度のある面白いものができていると思っていて。だから面白い比喩とか、褒められている文体のグルーヴ感とか全部抜いたところで、私の面白い要素は残ってるぞって思います。