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19歳の作家・日比野コレコの頭の中 「わからないことって面白い」 恋愛に生きる主人公を描く

2023年11月22日 22:40
19歳の作家・日比野コレコの頭の中 「わからないことって面白い」 恋愛に生きる主人公を描く
日比野コレコさんにインタビュー
2022年に『ビューティフルからビューティフルへ』で、河出書房新社が“新人の登竜門”として開催している『文藝賞』を、当時18歳で受賞しデビューした作家・日比野コレコさん。10月27日に発売した、2作目『モモ100%』についてお話を聞きました。

これまで『文藝賞』を受賞した作品は、宇佐見りんさんの『かか』や、綿矢りささんの『インストール』などがあり、日比野さんの作品が選ばれた第59回は、芥川賞候補作にもなった安堂ホセさんの『ジャクソンひとり』も選ばれています。

日比野さんは、2003年奈良県生まれの19歳。現役大学生で、作家としても活動しています。

最新作『モモ100%』は、恋愛に生きるモモの学生時代を描いた物語です。

――1作目は大学受験後すぐに書き上げたそうですが、2作目はいかがでしたか?

5、6か月かかりましたね。その分いっぱい推考を重ねたから、粗がない文章になっているかなって思います。

――1作目とはまた違うスタイル、書き方だったのですね

そうですね、めっちゃ改稿しました。(1作目は)大学受験中に、禁欲じゃないですけど小説を書くのを我慢してて。そのスイッチが外れたのでがーって書きました。1作目で「言葉が面白い」「文のグルーヴ感がいい」とか言っていただいて。そういう面って自分には1年前とかに書いた小説だったからすごく稚拙に思えて。そういうところをよりよくしようと思って2作目を書きました。3作目はよりよくとかではなくて、また違うところになるかなと思ってます。

■物語に自分の体験はいかす?

本作では、“恋愛こそ武器であり革命、それ以外は退化だ”と恋愛に生きるモモと、そんなモモの全てを受け入れる星野、2人の恋模様が描かれます。

モモは「ともだちの選び方だって自動販売機のボタンを四個いっきに押すのとなんにも変わらない」(一部引用)という世界に対する諦めや憂鬱を感じさせる描写も。しかし、星野との出会いが「モモの生活はいつからか、落ちそうで落ちない岩みたいに、奇跡的なバランスで安定するようになった」(一部引用)とモモに大きな変化をもたらします。

――今作ではご自身の恋愛観も参考にして書いたのですか?

書いてないと言いたいですね(笑)。自分の体験を自分の小説に生かすかみたいな話だと思うんですけど、私小説を書くのが好きなので、自分の考え方とか物事をどういうふうに見るかっていうところは結構似てるというかそのまんま書くけど、実際に体験した出来事とは全然違う。想像で書いたところです。

――モモの心理がすごく伝わってきたので、ご自身の経験も反映されているのかなと思ったのですが。

かけますよ。体験してなくても(笑)

■日比野コレコが紡ぐ“比喩”

SNSでは「独特のワードセンスに翻弄」などと、その文体も注目されている日比野さん。

特徴の1つ“比喩”は今作でも存分に発揮されており、例えば、モモが自分と同じ恋愛観を持ったサンタという先輩との会話のシーンでは「同じ恋愛という手段をえらびとったという点で、モモはサンタに、たとえばRPGゲームの初期装備が一緒だった者に感じる妙な親近感のようなものを覚えていた」と表現しています。

――文字や文章にするうえで大事にしていることはなんでしょうか?

文章の中での文字って、文字面の表面だけの部分と、意味の部分があるじゃないですか。その表面だけの部分をまずゴテゴテというか、自分の納得がいくものにしたくて。でもそれだと意味がとれなかったり、「よく分からん小説や」とか言われてしまうことが多かったり。だから自分がしたい、表面の言葉の見え方のところと、意味のところをできるだけ近づけようって意識しています。

――モモが星野と再会したシーンでは、クライマックス感を山口百恵さんの引退コンサートを連想させる例えで表現していましたね。

小説家の皆さん知識めっちゃ多いんですけど、それを出さないことも多くて、私は知識が多いというよりか、得たものそのまま出してしまうタイプやから多いように見えてるのかな。

――思いついた例えが伝わるか、家族や世代が違う人に相談することはありますか?

ないですね。百恵ちゃんとかは若い子が読んだら確かにわからないこともあると思うけど、それはそれとして、わからないことってちょっと面白いから。常用外の漢字とか知らない二字熟語とか、本読んでたら面白いって思う人一定数いると思うんですけど、私もそのタイプで。だから知らない単語とかでできてもおもろいやろうなと思って。

■3作目のテーマは“仲間” 「自分にはないものを書きたい」

2022年のデビューからおよそ1年。既に3作目も準備中だと話す日比野さんに、これからの目標を伺いました。

――ジャンルやテーマは決まっているのですか?

決まってます。まだ原稿用紙で60枚とかやから、全然書けてないんですけど。めっちゃふわっと言うと、仲間っていうものが皆さんそれぞれ絶対あるじゃないですか。そういうものが自分には存在していないなっていう気がしていて、だから自分にないものを、自分がほしいものを小説の中で作りたいなって思います。

――目標を教えてください

もっと売れたいです。でもそれはただ売れたいじゃなくて、もっといい小説を書いて、そのいい小説が、私がいいと思ってるのと同程度に評価されてほしいなって。今やと自分がこの小説にいいなって思っている程度の方が大きくて、それを同じにしたいなって思います。