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元宝塚トップ・凰稀かなめ「家具全部捨てる」「1週間スープだけ」「冷水シャワー」……自分を追い込む役作り

2022年12月9日 20:10
元宝塚トップ・凰稀かなめ「家具全部捨てる」「1週間スープだけ」「冷水シャワー」……自分を追い込む役作り

宝塚歌劇団・宙組トップスターの凰稀かなめさん。宝塚時代には相当に追い込んで役作りをしていたという。一方、宝塚時代に学んで生きていることを聞くと「上下関係」と答えた。熱烈な宝塚ファンである日本テレビアナウンサーの安藤翔アナ(妻が元タカラジェンヌ)、中島芽生アナ(宝塚音楽学校を4回受験)の2人が迫った。(・後編の後編)

<宝塚をキーワードで紐解くアプレジェンヌ辞典>
本日のキーワードは「その他の劇場公演」。宝塚大劇場・東京宝塚劇場以外で行われる公演。大阪の梅田芸術劇場、福岡の博多座、愛知の御園座、東京の日本青年館や東京国際フォーラムなど各地の劇場公演に加え、南は沖縄から北は北海道まで全国津々浦々で公演を行う全国ツアーも定期的に行われている。地方公演で初めて宝塚を見て受験を志したというタカラジェンヌも多く、宝塚歌劇と出会う機会にもなっている。

(安藤アナ):凰稀さんもさまざま回られたと思いますが、思い出はありますか。

(凰稀さん):全国ツアーもたくさん行かせていただきました。やっぱり食事がおいしかったなと。あと、地方のお客様がめちゃくちゃかわいくて。ショーになると始まった瞬間に「ぎゃ~!」と黄色い歓声がすごいんですね。客席に降りますとうわ~っと来てくださって。それはすごい楽しい。なかなか触れ合う機会ってない。東京と大阪だと結構おとなしく見てくださるんですけど地方に行くともう、うわ~っとなってくださって。

(中島アナ):(我が町に)来てくれた!という喜びがあるんでしょうね。

(凰稀さん):それがすごくうれしくて。あんなにキャーキャー言ってくれるんだ、もっとやっちゃおうか、みたいな。ノレますね。あとは地名。名古屋だったら「名古屋~!」と叫んだりとか。「エビフリャー!」と叫んだのを覚えています。(魚介が苦手で)食べれないけど「エビフリャー」って。わけがわからないことを言ってましたね。

■自分を追い込む役作り

(安藤アナ):役作りは相当に作り込んでいると伺いました。

(凰稀さん):宝塚時代はひどかったんじゃないかな。そのぐらいやっていましたね。ヴァンパイアの役をやった時、自分の家が本当に平凡すぎて、家具も全部捨ててイチからシャンデリアをつけて家の中を変えました。

あとは『モンテ・クリスト伯』の牢獄のシーンが10分間。その10分間でどれだけ表現できるかをやりたかった。精神的におかしくなっていく役だったので、とにかく家の中のものをぐちゃぐちゃにして電気も付けないで1週間ぐらいスープだけを飲んで生活するとか。

(中島アナ):それだけ自分を追い込んでいく。

(凰稀さん):追い込んで追い込んで。その時は本当にそれしか考えられなかった。下級生の頃に『エリザベート』のルドルフ役をさせてもらった時に、そういうことを言われたと思うんですよね。「やってみろ」みたいなことを言われて。ルドルフが冷水シャワーを浴びさせられていた。それを実際に自分の体でやってどういう気持ちなんだろうと考えていましたね。

(中島アナ):2019年の『暗くなるまで待って』では盲目の女性を演じられていました。こちらも役作りは相当こだわって作られましたか。

(凰稀さん):そうですね。とにかく部屋を真っ暗にしてアイマスクをして家の中を歩き回ったり。お風呂入る時も何をするにもずっと目つぶって。下に物を置いたら危険だとかも自分で(理解する)。自分の足がアザだらけになっちゃって。危ないから角にタオルを巻いて付けたりしましたね。

でも(舞台では)目を開いてやらなきゃいけないので、手の感覚だけで熱いお湯にも触って。目が見えない状態で触るのと見えている状態で触るのとで、やはり温度とか怖さが全然違う。あとは、とにかく朝来たらセットを歩き回る。歩数は確認していましたね。何段、何歩で、ここからここまで行けるとかっていうのも全部決まっているんです。動くところも全部決めていて。

(凰稀さん):あと、見えない分、音にすごく敏感なんです。ちょっとこっちの方で「コン」となったら「何だろう、何の音?」とすごく怖くなったり人に急に触られるとびっくりしちゃったり。だから道を歩いていて、そういう(聴覚障害者の)方がいらっしゃる時は、とりあえず声をかけてから、何かをしてあげるとびっくりしないということも学べました。

■宝塚で学んだ「上下関係」

(安藤アナ):そして来年2月には別の舞台も控えていらっしゃる。

(凰稀さん):そうなんです。『巌流島』に出演させていただきます。「おくに」と「おちさ」という2役させてもらうんですけども出てくる場面としては短い場面なので、どうなるか分からない。女性一人なので、とにかく女性の強さを短い時間でいかに出せるか。これから考えてやっていきたいなと思っています。殺陣もあるようなので、見られると思います。

(安藤アナ):最後に共通の質問にお答えいただきたいと思います。宝塚で学んだことで一番生きていることは何でしょうか。

(凰稀さん):「上下関係」です。一番大切だと思いましたね。目上の方に対しての礼儀、そういうものは常に持ち続けないといけないなと。1歳でも人生を歩んできた先輩方の助言は、とても大きいことだと身に染みて感じているので。

それは宝塚でかなり厳しく教えていただけたので、今も役立っています。でもちょっと最近、上下関係がだんだんなくなってきているじゃないですか。ちょっと残念というか、どうなんだろうなと疑問に思うことは結構ありますね。

(中島アナ):アドバイスをしたり面倒を見たり。そして敬う。そこから生まれる刺激もありますものね。

(凰稀さん):そうですね。昭和生まれの私的には、近所にカミナリおじさんもいましたので。そういうのが懐かしいと思っちゃいます。古い考えなのかもしれないですけれど、やはりためになったこともある。あまりコミュニケーションが取れない世の中になってきているのはちょっと寂しいなと思うことはありますね。

(安藤アナ):あっという間に時間が経ちました。

(凰稀さん):今日は本当に久しぶりに宝塚のお話もできました。改めて自分はこう思ってやっていたのだということも思い返せた時間で楽しかったです。ありがとうございました。

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アプレジェンヌ 〜日テレ大劇場へようこそ〜』は日テレNEWS24のシリーズ企画。元タカラジェンヌをお招きし、日本テレビアナウンサーで熱烈な宝塚ファンである、安藤翔アナ(妻が元タカラジェンヌ)、中島芽生アナ(宝塚音楽学校を4回受験)の2人が、ゲストの宝塚時代・退団後の生き方に迫ります。

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