東大卒34歳の起業家が受賞 『このミステリーがすごい!』大賞 古代エジプトが舞台の作品
『このミステリーがすごい!』大賞、通称“このミス”大賞は、宝島社が2002年に創設した新人賞。過去には『チーム・バチスタの栄光』(海堂尊さん著・第4回大賞)や『元彼の遺言状』(新川帆立さん著・第19回大賞)など、映像化された作品を輩出しています。大賞受賞者には賞金1200万円が送られます。
受賞作『ミイラの仮面と欠けのある心臓(仮)』の舞台は、紀元前1300年前半の古代エジプト。死んでミイラとなった神官書記のセティが、欠けた心臓を取り戻すため地上に舞い戻り、自分が死んだ事件の捜査を開始。捜査を進める中で、先王のミイラ消失事件に巻き込まれるなど、エジプトで起こる事件の真相解明に挑みます。
■「落語にも似たとぼけた味わい」 世界観が評価
著者の白川さんは、神奈川県横浜市出身、1989年生まれ。開成中学校・高等学校を卒業後、東京大学理科一類に進学。卒業後は弁理士として働きながら会社を起業し、5年で上場。その後、任期満了で退任し、現在はマネックスグループの取締役兼執行役を務めています。
受賞した白川さんは「今回、作品の舞台となる古代エジプトの世界観に触れる過程で、歴史の積み重ねやそれを解き明かす探求の試みの偉大さを思い知りました。過去の営みそのものはもちろん、史資料、史跡、それを現代まで保ってきた並ならぬ努力、そしてそれらを今なお研究されている方々に敬意を払わずにはいられません」とコメントしています。
選評では「これだけ野心的な設定を用意して、壮大な物語をきちんと着地させた点は高く評価」「現世に蘇ったミイラが何の違和感もなく受け入れられるあたり、落語にも似たとぼけた味わいがある」などその世界観が評価されています。
また文庫グランプリには、遠藤かたるさん(35)作、地下アイドルが繰り広げるサスペンス『溺れる星くず(仮)』と、浅瀬明さん(36)の学園内通貨をテーマにした『 箱庭の小さき賢人たち(仮)』が選ばれています。3作品は2024年1月から順次、書籍化される予定です。