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寺島しのぶ「ああ、この世界が見たかったのか…」 50年憧れた歌舞伎座の舞台に立つ思い

2023年10月17日 7:10
寺島しのぶ「ああ、この世界が見たかったのか…」 50年憧れた歌舞伎座の舞台に立つ思い
歌舞伎座公演に初出演する寺島しのぶさん
歌舞伎座で上演中の『錦秋十月大歌舞伎』(25日まで上演)で、『文七元結物語』に出演する俳優・寺島しのぶさん(50)にインタビュー。今回、初めて歌舞伎座の舞台に立つこととなった寺島さんは、歌舞伎俳優の中村獅童さん(51)と夫婦役を勤めます。また、映画界の巨匠・山田洋次監督(92)が、脚本・演出を担当することでも話題となっている今作。公演を迎える前の寺島さんに、歌舞伎座の舞台に初めて立つ心境や、獅童さん・山田監督について伺いました。

■獅童さんからのプレゼント 初めて歌舞伎座の舞台へ

七代目・尾上菊五郎さんの長女として、歌舞伎の名門・音羽屋に生まれた寺島さん。祖父は七世・尾上梅幸さん、弟は五代目・尾上菊之助さんという歌舞伎一家に育ちました。しかし、寺島さんには歌舞伎俳優になる道はなく、過去には“もし自分が男だったら、歌舞伎をやりたかった”と明かしていたといいます。そんな寺島さんだからこそ、今回の歌舞伎座本興行への出演には熱い思いがありました。

――今回、どのようにして歌舞伎座公演への出演が決まったのでしょうか?

「獅童くんから電話がかかってきて、“山田監督が新しい『文七元結物語』を作りたいと言っていて、(獅童さん演じる主人公の妻役の)お兼に、しのぶちゃんの名前を出させてもらったんだけど、どう?”って言われたんです。一瞬考えて、“うん、やりたい”って言ったんだと思います。獅童くんが“しのぶが歌舞伎座に出るんだぜ!”って言っていたから、私はやっぱり若い時から“歌舞伎座出たかったな”みたいなことを、獅童くんとお酒を飲むたびに言っていたような気がします。だから(獅童さんが出演という)プレゼントをくれたのかなって」

――初めての歌舞伎座に立つ心境はいかがですか?

「きのう、舞台稽古で初めて立ったんですよね。でも暗闇だったからあんまり実感が湧かなかったんです。何も感じることなく普通に花道を歩きましたけど、“花道を歩いてるわ…、私が…”っていう」

――5月に息子・尾上眞秀さんの初舞台でサポートされている姿も印象的でしたが、寺島さんにとって、歌舞伎座はどのような存在ですか?

「客席に座っているか、ロビーや楽屋をウロウロしているかのイメージしかないから、まさか自分が50年たって舞台の上から客席を眺める日が来るのかって。(初日の幕が開いたら)“ああ、この世界が見たかったのか…私は”って思うのかな。眞秀の時は、“大丈夫かなぁ…”っていう変な胃の痛みが走ったりするんですけど、今回自分のことだと、またさらにいろんなものが、のしかかってきているような気がして。“ここは歌舞伎座だ。これは人生初めてだ”って自分の中でやりだすとキリがないので、平常心を保って、いろんな人が“頑張ってください”って言ってくださる思いを受け止めて、楽しくいけたらいいなと思います」

■寺島しのぶから見た山田洋次と中村獅童

――今回、山田監督も歌舞伎座で初めて演出を手がけますが、寺島さんが感じる山田監督の演出の魅力はどういった部分ですか?

「セリフへのこだわりなのかな。まずは書かれたセリフをしっかりお客さんに届けて笑わせるってことがベスト。洗練された演劇をやっての面白さっていう。“きれいにやればやるほど面白いんです、こういうのは”って言ってくださいました。特に印象的だったのは、“ちゃんと演劇をしてほしい”ということ。会話が成立してないとおかしいし、“勝手に面白いことをやらないでください”っていう。役者ってやりたくなっちゃうじゃないですか。でも監督がいつも教えるのは、お客さんに届けさせてからのおかしみ。“何となく芝居”は嫌われるんですよね」

――今回夫婦役となる役者・獅童さんは、どういった存在ですか?

「いや~もう支えですよね。何でも受け止めてくれるし。たまに素になって笑いそうになっちゃう時はあるんですけど。すごくステキな空気が流れている気はしますね」

――寺島さんと獅童さんは幼い頃からの仲だということですが、プライベートではいかがですか?

「(獅童さんは)今が一番、いい男だと思う! 私もそうですけど、もっとハチャメチャな時を知っていますし、“なんなんだ、この人”って思った時もあるし。苦しみやたたかれ方、病気のこととか、いろいろ全部含めた上で、彼が乗り越えてきたっていうか、そこを全部役に投影できている気がするから、私はそういう役者さんを信頼していますね」

■歌舞伎ファンの一人として…

――これまで母として、俳優として携わっている歌舞伎ですが、今後はどのように関わっていきたいですか?

「例えば今回、私が歌舞伎公演に出演することで、歌舞伎をご覧になったことのない方たちも、興味を持って見に来てくださるわけですよね。私も歌舞伎の一ファンとして、どうやったら歌舞伎界が盛り上がっていけるんだろうって考えたいなと思っています。にわかの人たちをどう本物にしていくかだと思うんですよね。歌舞伎って取っつきにくいかもしれないけど、面白いと思ったら、また行きたいって思ってくださると信じているんです。だから私もその手助けが少しでもできれば、恩返しができたような気にはなるかなと」

■市來アナの取材後記「大好きな歌舞伎に挑む、役者・寺島しのぶさんの姿」

「50年経ってまさか歌舞伎の舞台に立つことになるとは…」と驚きながらも、期待にあふれた表情を見せてくれた寺島しのぶさん。今回、寺島さんの父・菊五郎さんの楽屋で、祖父・梅幸さんの鏡台を使っているそうで、家族を感じながら大舞台に臨んでいます。「全く未知の世界だけれど、舞台は一期一会」だと話していたのが印象的でした。どのような化学反応が起きているのか、歌舞伎座に立つ寺島さんに注目です!

【市來玲奈の歌舞伎・花笑み】
「花笑み」は、花が咲く、蕾(つぼみ)がほころぶこと。また、花が咲いたような笑顔や微笑みを表す言葉です。歌舞伎の華やかな魅力にとりつかれた市來玲奈アナウンサーが、役者のインタビューや舞台裏の取材で迫るWEBオリジナル企画です。