×

舞台裏に潜入 尾上右近が案内する新開場10周年の歌舞伎座

2023年11月17日 7:15
舞台裏に潜入 尾上右近が案内する新開場10周年の歌舞伎座
尾上右近さんが歌舞伎座の舞台裏を案内
毎月、数々の歌舞伎公演が行われている歌舞伎座。2013年に建て替えられ、今年新開場10周年を迎えました。今回、歌舞伎俳優の魅力を伝えるWEB企画『市來玲奈の歌舞伎・花笑み』の連載を持つ、日本テレビ・市來玲奈アナウンサーが、歌舞伎座の舞台裏に潜入。伝統的な歌舞伎演目の世界観をどのように作り上げているのか、歌舞伎俳優の尾上右近さんに案内してもらいました。

■からくりが詰まった『奈落』と『すっぽん』

まず案内してくれたのは、『奈落(ならく)』と呼ばれる、舞台や花道の下のスペース。『大奈落』と『中奈落』の2つに分かれているのが特徴です。『大奈落』には大きな舞台セットなどが置かれていて、『中奈落』は小道具が置かれるほか、役者が舞台に登場するまでの導線となっています。

『中奈落』の花道の真下にあるのが『すっぽん』という舞台機構。下から花道にせり上がることができる昇降装置で、亡霊や妖怪などを演じる俳優が、突然花道に現れたり消えたりする場面で使用されます。俳優がせり上がってくる様子が、生き物のスッポンが首を出す様子に似ていることからこのように呼ばれるようになったといわれています。

実際に見てみると、乗るスペースが狭く、役者は、衣装やカツラ、刀が引っかからないように気をつけているそうです。右近さんは「自分の足で登場する時は“さあ、出てきたぞ”って自分の体で表現できるんですけど、『すっぽん』の場合は乗っていることしかできないので、自分が放つ空気でしかお客さんに訴えることができない。なので結構ドキドキします」と、本番で『すっぽん』を使うときの心境を明かしていました。

■花道に出ていく前の待機場所『鳥屋』

続いて向かったのは、『鳥屋(とや)』と呼ばれる、舞台から見て花道の突き当たりにある小部屋。花道へ出入りする際の待機する場所です。客席と近い位置にあることから、上演中は暗く静かな空間になっているそうです。舞台に出ていく前の最終準備には、先代の歌舞伎座から名優たちが使い続けてきた歴史ある鏡が使われていました。

■プロの技が光る『揚幕』

鳥屋から花道へ出て行くときに開く幕は『揚幕(あげまく)』と言われ、黒または紺地の布が、カーテンのように金輪でつり下げられています。勢いよく開け閉めすることで“チャリン”という音がする仕組みになっています。

今回、その『揚幕』を開け閉めする揚幕係の溝川公平さんにもお話を伺うことができました。右近さんによると、揚幕係は、役者が舞台に出ていく直前の顔を一番見ている人。溝川さんは「一番緊張感のある一瞬を見させていただいております」と話していました。『揚幕』の開け方にはポイントがあるそうで、客席に自分の姿が見えないよう、カーテンに巻かれるような形で開けるそうです。溝川さんは「お客様は役者さんだけを見たいと思うので世界観を壊さないように、できるだけ黒衣のつもりでやっています」と明かしていました。

■歌舞伎ならではの舞台機構『花道』

『花道(はなみち)』は舞台に向かって左側にあり、舞台と同じ高さで客席を貫く通路になっています。18世紀はじめにできたといわれ、人物の登場などに使用されます。また、舞台から三分、『揚幕』から七分のところを七三(しちさん)と呼び、役者が見得(みえ)を切る主な位置となっています。

今回特別に花道を歩いた市來アナは、「とにかく神聖な場所で緊張しました。お客さんの顔もしっかり見えそうなぐらい客席との距離がすごく近い」と役者側の目線を体験。右近さんも「お客さんの顔は、ばりばり見えますよ! 知っている人は3Dのように浮いて見えるので、どういうふうに見ているのかこちらもしっかり見ています」と話していました。

特に市來アナが驚いたと言うのが、『花道』の幅。「これまで見てきた歌舞伎の演目で、殺陣や宙返りする“とんぼ”の演技などが、この『花道』で行われていたことを思うと、かなり狭く感じました」とコメントしました。

■市來アナの取材後記 ―歌舞伎座舞台裏ツアーを終えて

今回、見させていただいた場所はなかなか入れる場所ではないので、緊張と新鮮さでいっぱいでした。全てに魂が宿っているような気がして、今後客席から見るときに、より歌舞伎の魅力を感じられる気がしました。右近さんは「僕らも『奈落』に特別な空気感があるのは感じます。“表”と“裏”を一番象徴する空間が、この『奈落』だと思うので、舞台の上でドンって足を踏んでいるのを『奈落』で聞くと、“今この人、ここで生きているんだな”って、違う時間軸の過ごし方を感じながら花道に出て行くことがある」とお話しされていました。

現在、吉例顔見世大歌舞伎にて夜の部『三社祭』(11月25日まで上演)に出演中の右近さん。来年1月の『壽 初春大歌舞伎』にも出演されることが発表されています。上演中、役者さんの演技を楽しむのはもちろん、どのように舞台が使われているのか、歌舞伎座での観劇必見です。