手塚治虫文化賞・マンガ大賞は『ゆりあ先生の赤い糸』 作者が明かす「育児・家事・介護の壁」
手塚治虫文化賞は、漫画家・手塚治虫さんの志を継ぎ、マンガ文化の健全な発展に寄与することを目的として、朝日新聞社が1997年に創設したものです。
漫画『ゆりあ先生の赤い糸』の主人公は、伊沢ゆりあ50歳。ある日、ゆりあの夫・吾良が渋谷のホテルでこん倒したとの連絡があり、病院に駆けつけると、意識のない吾良のほかに見知らぬ青年がいたところから物語がはじまります。
本作には、LGBTQ、介護、DV、がん、コロナ禍といった要素も盛り込まれており、作品について選考員は、「多様な生き方、新しい家族的つながりを描いた本作は、まさに今の時代にふさわしい」などと評価しました。
■作者・入江喜和さん「不安になるほど嬉しい」
またウェブサイトには、作者である入江さんの受賞コメントが公開されており、受賞について入江さんは、「漫画の神様・手塚治虫先生のお名前がついた賞―そんなスゴい賞をいただいたひにゃこの先どうなってしまうのか、逆に不安になるほど嬉しいです。ありがとうございます!」と喜びをあらわにしました。
また、漫画家として歩んできたこれまでのことについて、入江さんは、「漫画家と名乗って34年になりますが、ちゃんと仕事できたのは実質20年あるかどうかで、みなさんぶち当たる育児・家事・介護の壁の前に“今度こそもう漫画は無理だな“と諦めつつ、それでも周囲の優しさに助けられたりして、騙し騙し今日まで何とかつないで参りました」とコメント。そのうえで、「そんな学も華もないおばちゃん漫画家の自分にはもったいないほど輝かしい賞ですが、これを見たお若い方や、“もう漫画やめようか“と悩んでおられる方々の小さな希望になったら最高だなと、おこがましいこと承知でそう思っております。ブラック・ジャック先生も生誕50周年のこの年に、50歳が主人公のこの漫画を選んでいただけたことに、ちょっと運命も感じたりしつつ、みなさま本当にありがとうございました!!」とコメントしています。