×

元宝塚トップ娘役・野々すみ花、経験ゼロの事業で「突撃アタック」の突破力 「やると決めたら全力で」

2022年3月18日 20:05
元宝塚トップ娘役・野々すみ花、経験ゼロの事業で「突撃アタック」の突破力 「やると決めたら全力で」

 宝塚歌劇団・元宙組トップ娘役の野々すみ花さん。卓越した演技力で観客を魅了し、退団後はリポーターや事業家など、チャレンジし続けている。野々すみ花さんの“その後”に、熱烈な宝塚ファンである日本テレビアナウンサーの安藤翔アナ(妻が元タカラジェンヌ)、中島芽生アナ(宝塚音楽学校を4回受験)の2人が迫った。( ・後編の後編)  

■「人生観が180度変わった」退団後の仕事

中島アナ:退団後についても伺っていきます。愛月ひかるさん(元星組男役スター)からご質問いただきました。

<愛月ひかるさん>
>>>>>
退団されてからも本当にたくさんのことにチャレンジされていると思います。私もまだ辞めて1カ月経っていないんですが、これから新しいことにチャレンジしていく上で心持ちとして大切にされていることはありますでしょうか。
<<<<<

中島アナ:野々さんは蜷川幸雄さんの舞台や朝ドラに出演。そしてミステリーをハントするリポーター役をされていました。チャレンジという意味で大切にされていることは?

「そうですね。一つの物事にどれだけ真剣に向き合って自分のすべてを注ぎ込めるか。それが舞台やお芝居、他のことに対しても心がけ方は同じなのかなと思います」

「ミステリーをハントするお仕事は、今まで海外にほとんど行ったことのなかった私が、いろいろな国で生きる人たちに触れる機会で、人生観が180度変わったようでした。いろんな国でいろんな経験ができたことは本当に自分にとってとても大きなことです」

中島アナ:今一番行きたい場所はブータンとおっしゃっていました。

「ブータンは中国とインドの境目にある小さな国です。お仕事で行ったらコーディネーターさんが時計もスケジュール帳も持っていない。あまり時間通りに行動するということがなかったんです。それにもびっくりしましたし、山奥の村に行くと本当に自給自足の生活で、客が来ると1日がかりでもてなす。そういう人間らしい生き方をしている国だなと思いました。ブータンにはもう一回行きたいなと思っています」

■「やると決めたら」全力で

 中島アナ:演じるお仕事、舞台での姿も見たいというファンの声もたくさんあります。今後、舞台に立ちたいという思いはありますか。 

  

「あります。ただ、いまは2歳の男の子のお母さん。自分が舞台に立つとなると24時間そこに集中するということを今までやってきたので、自分の中のバランス、両立ができる時になったらまた挑戦したいなと思っています」 

  

安藤アナ:女優業以外へ一歩踏み出す時、勇気が必要だと思います。どういう気持ちでさまざまなことに挑戦されているんですか。 

  

「人間っていつかは死んでしまいますからね。だから後悔のないように過ごしたいなと。自分ができること、したいことを探して、やると決めたら全力でやってみたいという気持ちだけです」 

  

安藤アナ:さきほどお話を伺いましたが、例えば(役作りで)髪を切る(※前編 参照)。そういった一歩、踏ん切りが、退団されてからも結びついているものですか。  

「もともとそういう性格なのかもしれないです。勢い、思い切りは良いかもしれないですね。まだ見たことのない景色を見たいという気持ちの方が大きいかもしれないです」

■宝塚の先輩と「食」をテーマに事業立ち上げ

中島アナ:野々さんはスムージーを作る事業をされていると聞いています。

「私はもともと農家の娘で、父は有機野菜を作っていて、おいしい野菜を作りたい、みんなに安心して楽しんで食べてもらえるものを作りたいという気持ちがありました。宝塚音楽学校に入るまで、いつも学校から帰ると畑仕事を一緒にやって、そういう話を良く聞いていました。父は亡くなってしまったので、こういう環境で育った身として自分もいつかできることが何かあるんじゃないか。そういう使命感があった中で(宝塚の)先輩である春風弥里さんと出会い、この方と一緒なら何かできるかもしれないと思いました」

安藤アナ:実は今回春風さんにもお話を伺いました。

<野々さんと事業を行う春風弥里さん>
>>>>
(野々さんは)“美しさ”に対する感度がめちゃくちゃ高い人。生まれ持って有機野菜を土まみれで作っているお父さんの背中を見ていたというのが大きいと思うし、舞台を作ってきた役作りでも磨かれていたセンスだと思うんです。1人だったら『無理』と思って終わってしまっていたこともあるかもしれないんですが、2人だからもがき続けられるところがある。もがいてしつこく考え続けていると、諦めなければ半歩先ぐらいの『足をちょいと置く場所』が見つかるのかなと最近少しずつ感じていて。

だから2人でやっていることで強くそう思うこともあるし、こんなに真剣に汗も涙も一緒に流す。宝塚に1回そういう経験をどっぷりして卒業したにもかかわらず、今この歳になってまたそれができるという相手とパートナーを組んでいるのはめちゃくちゃ幸せなことだと思います。
<<<<<

中島アナ:春風さんはどんなパートナーですか。

「とにかく熱い人ですね。私もひとりだったら絶対にこんな大きなことにチャレンジしようとは思えないと思います。春風さんは現役時代から『やると決めたらやる』。どんなに苦しいことがあっても泣きながらでも前に進んでいく方なんです。本当にパワーをもらいながら一緒にやらせていただいています」

中島アナ:事業を行うことは難しさもたくさんあるのではないでしょうか。

「そうですね。やはり今まで舞台人としてやってきたので、モノ作りに関しては本当にゼロからのスタート。例えば、沖縄県にある無農薬で作っている島バナナの生産者に『バナナを使わせていただきたいんです』と電話で突撃アタックするんです。そこに至るまでには、門前払いされることも多々ありました。本当に人生経験をさせてもらっているなと思います」

安藤アナ:ここからはどんな人生を歩んでいきたいですか。

「具体的な展望というのがあまりなくて。宝塚で育ったことは本当に自分にとって大きいので、宝塚にも恩返しができたらと思っています。農家で生まれ育ったので農業を通して食にも興味がある。何かの形でそういうことができたらいいなとは思っています。あとは子どもを生んだ母としては、目に見えない大切な思いなどをつないでいくっていう立場になれたらいいなとは思っています。子どもだけではなくてさまざまな人に自分がつないでいくことができたらと思います」

安藤アナ:根源には宝塚があるのですね。

「ありますね。どんなことにも真剣に真面目に取り組めたのは宝塚での経験があったおかげです」

■本当の意味での『清く正しく美しく』とは

安藤アナ:宝塚で学んだことで今一番生きていることは何ですか。

「『清く正しく美しく。そして朗らかに』です」

中島アナ:「清く正しく美しく」はよく知られていますが、「そして朗らかに」があるんですね。


「小林一三先生の本で、実は(『清く正しく美しく』の後に)『そして朗らかに』という一文があったという一節を読みました。『朗らかに』っていい言葉だなと。正しいこと、何かを突き詰めていくことはもちろん大事ですけれども、朗らかなほっとするような笑顔があるとみんなが幸せになれるんじゃないかと思っていて。今もずっと本当の意味での『清く正しく美しく』とはどういうことだろうと、探し続けたいと思っています」


(終わり)


◇ ◇ ◇

アプレジェンヌ 〜日テレ大劇 場へようこそ〜』は日テレNEWS24のシリーズ企画。元タカラジェンヌをお招きし、日本テレビアナウンサーで熱烈な宝塚ファンである、安藤翔アナ(妻が元タカラジェンヌ)、中島芽生アナ(宝塚音楽学校を4回受験)の2人が、ゲストの宝塚時代・退団後の生き方に迫ります。次回は元花組トップスターの真飛聖さんです。