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漫画編集者歴17年・林士平が考える “若者への投資”「そうじゃないと廃れていく」 SPY×FAMILYなど担当

2023年8月16日 22:05
漫画編集者歴17年・林士平が考える “若者への投資”「そうじゃないと廃れていく」 SPY×FAMILYなど担当
漫画編集者・林士平さん
少年ジャンプ+』の編集部員で、漫画『SPY×FAMILY』『ダンダダン』などを担当する漫画編集者・林士平さん(41)にインタビュー。『少年ジャンプ+』の話をはじめ、林さんが考える“漫画業界の未来”についてお話を伺いました。

林さんは2006年に集英社へ入社。これまで『月刊少年ジャンプ』『ジャンプSQ.』の編集者を歴任してきました。

■最新話まで全話初回無料 漫画アプリ『少年ジャンプ+』の強み

林さんが編集部員である『少年ジャンプ+』は漫画のアプリケーション。最新話まで全話初回無料で作品を読むことができるほか、読み切り作品も多く配信されています。林さんは、連載中の作品『SPY×FAMILY』『チェンソーマン』『HEART GEAR』『幼稚園WARS』『ダンダダン』『BEAT&MOTION』の編集を担当しています。

――林さんが考える「少年ジャンプ+」の強みはなんだと思われますか?

難しいですね…ブランド力じゃないですかね。ジャンプと名の付くところに、何か面白いものがあるのやもしれないと期待してくれる読者ももちろんいらっしゃいますし、漫画家さんも「ジャンプと付いているんだから、ちゃんとした編集部だろう」っていう安心して持ってきてくれるという。人生決める時に、どこに持って行こうっていう時に知っているところというか、持ってきやすいっていうのは、実は目に見えないけど、すごく重要なブランドなんじゃなかろうかって個人的に思いますけどね。

――最新話まで全話初回無料などの特徴があると思いますが、スタートするときにリスクを感じたりはしましたか?

“1回読んで読み捨てられちゃう“という話はあったんですけど、僕のそもそもの原体験としてはすごく立ち読みしている学生だったんですよ。申し訳ないけど、当時のコンビニで読むっていうのをやっていて、じゃあ僕が大学生とかになった時に漫画にお金を払わない男だったかどうかっていうと、かなりお金を払う側の人間だったんです。やっぱり「読まないで買う」「中身を知らずに買うっていう商品ではないよね。漫画って」っていう感覚が僕の中で強かったので、実際問題面白かったらもう1回読みたいなとか思ってくれて、買ってくれる方がすごく多いと思うので、一番の売りは商品そのもの、なので読んでいただく。ただ「完全なるタダではないですよ」っていう一応エクスキューズもあって、『ジャンプ+』は読んだ後に広告が入っていて、広告費の収入分の半分をちゃんと作家さんにお戻ししているので、「2回目以降はもちろん頑張って僕ら売りますんで」っていうので、作り手サイドのほうにもご了承をいただいてっていう形ですかね。

■漫画業界の未来は…「若い作家をたくさんデビューさせたい」

7月に行われた、PR TIMES主催のメディアの未来を考えるイベント『MEDIA DAY TOKYO 2023』に登壇した林さん。そこで漫画業界の未来について語った林さんに改めて考えを聞いてみました。

――漫画業界が今後どのように変化していくと考えていらっしゃいますか?

多分漫画だけじゃないんですけど、人口が減るじゃないですか。ということは購買力も減るので、「日本だけじゃない、全世界の方に読んでもらわないと絶対しんどくなるよね」という話はみんなしているので、より世界を見て、なるべく全世界の方に面白いと言ってもらえるモノの数を増やしていこうと。ただ、日本の方にもちゃんと愛してもらわなきゃいけないので、世界も大事だし、日本も大事っていう。全世界に通用しなくても、日本の人たちは喜ぶであろうテーマとか題材があるんだったら、喜んで描きたい人に描いてもらおうって思いますし、でも、何描いていいか分からないっていうんだったら、「じゃあ世界のことをちゃんと考えようか」と「今の世界ってこうだよね」っていうのを話しながら作っていく人もいなきゃいけないという感じです。

――未来に対して林さんが行っていきたいことはありますか?

「楽しい仕事をずっとしていたい」っていうシンプルな欲求に従っているので。ただ、僕だけ楽しくてもしょうがないので、作家さんもそうですし、アニメプロデューサーとか、携わった方々がとりあえず笑顔になったらうれしいなと思うけど、笑顔になるのってすごくシンプルに、みんな多くの人に届くとハッピーそうにするんですよね。だから純粋にモノを面白くして、それが発展する時にちゃんとクオリティーコントロールをして、いいものにしていくこと以外はやれないと思うので、それをあと10年やってから、その先を考えようかなって感じですね。

――イベントの中で、“若者に投資する”というお話がありましたが、具体的にはどのような取り組みを?

それは教育だったり。「何が大事で何を考えるべきなのか」みたいな話をしながら、実践をちゃんと重ねさせてあげるというか。どのぐらいやるか考えていますけどね。悩ましいですよね。どのぐらい自分の時間を…作家さんにおいては100パーセント投資できるんですけど、若い編集者に関しては自分がまだ投資する余裕がないので、時間とコストを。でも「そろそろやらなきゃいけないな」っていう内心でいる感じですかね。そうじゃないとその業界は廃れていくので。だから若い作家をたくさんデビューさせたいなって欲求はめっちゃあります、僕は。

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