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本屋大賞受賞作家が明かす次回作のテーマ

2021年4月16日 20:05
本屋大賞受賞作家が明かす次回作のテーマ

湊かなえさんの『告白』や三浦しをんさんの『舟を編む』など多くの作品が映像化され、話題となっている本屋大賞。

18回目となる今年の大賞作品は『52ヘルツのクジラたち』。作者の町田そのこさんは、なんと初めての長編小説で受賞。町田さんにタイトルに込めた思いや次回作の構想などを取材しました。

『52ヘルツのクジラたち』は、虐待や介護を経験した主人公の女性が母親から虐待を受けている少年に出会い、救おうとする物語。多くの読者をひきつけたのは、虐待に苦しみながらも助けを求められない少年の声なき声と他のクジラには聞こえない周波数(52ヘルツの声)で鳴くといわれるクジラを重ねた描写です。


■クジラに重ねた“声なき声”

——タイトル『52ヘルツのクジラたち』に込めた思い

「私は52ヘルツの“クジラを声なき声をあげている存在”自分が声を出しているのに誰にも届かない存在っていうふうにとらえました。この世の中にきっと1人だけではなくて複数いるんじゃないかということを含めて『たち』っていうふうに願いを込めました」

——母親でもある町田さん。なぜ虐待をテーマに

「ニュースとかで虐待問題を取り扱っていると、何をしていても手を止めて見るようになってしまったんです。すごく身近というか『なんでだろう』って考えていたので、いつか作品に落とし込もうと思ってたんです。“52ヘルツのクジラ”をテーマにしようっていったときに声なき声とは何だろうと考え、児童虐待の子どもたち『助けて』とか『困ってる』を言えない子どもたちとすごくダブってみえて話に入れました」

——作品に込めたメッセージ

「声が誰にも届かないっていうさみしさ、孤独や恐怖が読んでる方に伝わればいいなと思いました。作品には私なりの虐待児童に対する現実的な解決方法『この子はこうしたらちゃんと生きていけるんじゃないか』っていうのをひとつ提示してるんですけれども、読んだ方は『私だったらこうする』っていう考えのきっかけになってくれればすごくありがたいなと思います」


■次回作のテーマは“母と娘”

「年内の刊行を目指して、今一生懸命書いているところです。今回の作品を書いているときに、母と娘の関係のありようといいますか、そういう関係性とかは自分の中でまた新しく気になった問題だなと思って、母親と娘って人それぞれでさまざまな事情や悩みがあるんだよなって思ったんですね。1度その母と娘とかっていう関係性を私なりに解釈して書いてみたいなって思って、2作目の長編として今、頑張ってます」