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松本梨香、亡き兄が導いてくれた声優への道

2021年5月7日 12:44
松本梨香、亡き兄が導いてくれた声優への道

5月8日に放送される日本テレビ系列のバラエティー番組『有吉反省会』(毎週土曜日よる23時30分から放送)に歌手・女優・声優の松本梨香さんが初出演。今は亡き兄が導いてくれた声優への道について語りました。

松本さんは神奈川県横浜市出身。世界的な人気を誇るアニメ『ポケットモンスター』の主人公サトシ役の声優としても有名で、主題歌「めざせポケモンマスター」では歌手として大ヒットを記録。女優としてもドラマや映画、そして6月公演予定の舞台『Les Miserables〜惨めなる人々〜』に出演するなどマルチに活躍しています。

父が大衆演劇の座長という家庭で育った松本さん。「芸は身を助ける」という父の教えで、幼少期から“日舞”や“ピアノ”など様々な習い事をしていたといいます。松本さんは「器用だねっていわれていたんですよ。お芝居もそうだし、歌もそうだし、“あんちゃん”が出来ないことが何でもできたんです」。


■声優へと挑戦したキッカケは 兄・彰さんの死、そして結核の発症

松本さんの1歳上の兄・彰(あきら)さんは、後天的なまひとアキレスけんに障害があり、小さい頃から松本さんが日常生活の世話をしていたといいます。「兄ちゃんがお腹の中に残してきたものを私が全部ママのお腹から拾ってきた気がするんですね。だからいつも兄ちゃんの事を守るし、いろいろな世話を全部自分がやると決めていました」。

女優として歩み始め「芸に生きる」と決めた19歳の頃。松本さんは直木賞作家の井上ひさしさんが主宰する『こまつ座』の舞台に参加。本格的に女優として階段を上りはじめたとき、兄・彰さんが心筋梗塞のため急死してしまいます。松本さんは当時を振り返り「双子みたいに育った兄だったのでショックで」と突然の兄の死を受け止めきれなかったといいます。

そんな松本さんにさらなる悲劇が。「兄の死がショックで日々眠れず、今度は自分が『結核』になったんです。いろんな病院に行ったんですけど、どんどん悪くなってしまって。医者からは“あと一週間遅かったら死んでいた”といわれました」と壮絶な過去を告白。

その後も症状は改善されず、「座っているのもツライし、寝ているのもツライ。体がけいれんを起こしていて、信号待ちも立っていられない」と深刻な状況であったといいます。当然、出演していた舞台は降板。さらに「しばらく舞台に立つのは禁止」とドクターストップがかかってしまい「目の前が真っ暗になった」と振り返りました。

最愛の兄の死、そして舞台に立つことを止められ“ぼう然自失”となった当時19歳の松本さんを救ったのは、テレビドラマで名脇役として知られた俳優の名古屋章さんでした。

「ラジオドラマとかやってみれば」と“声の仕事”を薦められた松本さんは、まだリハビリ中ではありながらも、テレビアニメ「おそ松くん」(1988年)のオーディションへの挑戦を決意したといいます。1週間という大規模なオーディションに参加した松本さんは「声優っていう自分が知らない業界に。ポンって飛び込む感じですよね。楽しかった」と振り返りました。

このオーディションでは『決められた原稿を読む審査』だったそうですが「こんな言葉が入ったら面白い」と松本さんはセリフを勝手に追加。この行動が監督やスタッフから「こんな子がギャグアニメに一人いたら場が盛り上がるだろう」と評価され、声優としてのキャリアをスタートさせました。


■意識不明の男の子へ送ったメッセージが奇跡を起こす

声優という職業については「子供たちに夢とか勇気とか元気、愛。いろんなものを“言霊”で伝える仕事」だと語る松本さん。現在は、特別支援学校や医療施設の小児科など、子供がいる場所を訪れ歌やメッセージを送る活動を続けているそうで、中でも忘れられない「病気で入院している男の子」との思い出を語ってくれました。

病院で入院していた男の子と会う約束をしていた松本さん。直前になって「病状が悪化したから面会できない」と連絡があったそうで、男の子は意識不明のまま集中治療室に入ってしまったといいます。その時「何か出来ないか……」と考えた松本さんは、男の子が大好きなキャラクターの声を使い「元気になったら一緒にバトルしような!」など1分ほどの音声メッセージを送ったといいます。

メッセージを受け取った母親は、何度も何度も意識不明の男の子の耳元で音声を流し続けたそうです。すると後日、母親から「息子の意識が戻って笑顔を見せてくれた。本当にありがとうございます」と感謝の連絡が入ったといいます。松本さんは「声優はこういったミラクルを起こせる仕事なので、これからも責任感をもってしっかりやってかなきゃいけない」と語ってくれました。

19歳で人生の転機を迎え、歌手に女優、声優、そして作家として絵本『ゆめらっちょ!』(2019年発売)を手がけるなどマルチに活躍する松本さん。今の自分は「兄ちゃんが導いてくれたのではないか」と語ります。

「芸をやる家だったから、表舞台に立つ仕事をやるのは普通なんですけど、声優という道は全く考えていなかった。自分の思い描いていた道筋があったとしたら、兄ちゃんが“こっちに行け”と導いてくれた気がする」。

さらに「“兄ちゃんはいつもそばにいます”そういう気持ちです。サトシが兄ちゃんかもしれないぐらい思っています。男の子役をやらせてもらっている時はいつも“兄ちゃん”を思い出します。やっぱりなんかしっくりくるというか整うっていうか」。

そんな松本さんの夢について伺うと「パラリンピックで国歌斉唱を担当したいです。そうすることで、本当に、本当にみんなを応援できるんじゃないかなって。私はパラリンピックがいいなって思っています。出来なかった“兄ちゃん孝行ができるかな”と思っています」。


■子供たちへメッセージ“一緒に幸せゲットだぜ!”

常にお兄さんを思い、そして子供たちへ夢と希望を与え続ける松本さん。最後に子供たちへメッセージを送りました。「今コロナ禍で色々不安になることもいっぱいあると思うんですけど『頑張ろう』っていうんじゃなくてさ、『顔が晴れやかになる』と書いて“顔晴れ(がんばれ)”。“顔晴れワッショイ”という感じで自分がいつも晴れやかになるように毎日毎日を生きていくといいかなと思います。地球は一個しかないし、みんな同じ時代に生まれて同じ経験をしている訳だけども、絶対にいいことは待っているから。“一緒に幸せゲットだぜ”していきましょう」。