松本幸四郎が解説 “大向う”の意味
歌舞伎座『八月花形歌舞伎』に出演する松本幸四郎さん(48)が取材に応じ、昨年8月の公演再開を振り返り、歌舞伎用語「大向う」について解説してくれました。
新型コロナウイルスの影響で昨年3月から7月まで公演が休止となった歌舞伎座。8月から4部制で、出演者や観客を総入れ替えし、感染対策を行い公演が再開されました。(※現在は3部制2演目)
幸四郎さんはこの1年を振り返り「1年、歌舞伎座が公演をしているということの奇跡といいますか、ありがたいという思いでいっぱいです」と明かしました。
続けて再開時の舞台が忘れられないという幸四郎さんは「最初花道から出てきた時に、三味線の音楽をバックに歩いてくるわけですけど、全く聞こえないくらいかき消された。花道の7:3にかかる直前で一度止まるんですけど、そこまで拍手がやまなかったというのは、これは本当に忘れられない瞬間でしたね」と語りました。
公演が再開されたものの、飛まつ感染を防止するため、観客のかけ声や声援が禁止され、拍手のみの観劇になっています。普段だったら客席から届くはずの歌舞伎のだいご味“大向う”のかけ声も規制されています。
その“大向う”について幸四郎さんは「大向うは、役者さんの屋号がそれぞれありまして、名前を言うようなことですかね意味としては、それで一つ(形の)決まりがあった時に、大向うをかけて、盛り上げる」と説明してくれました。
続けて幸四郎さんは「普通、舞台と客席の関係というのは、お芝居をしている人に向かって大声をかけるっていうのは普通考えればぶちこわしにすることですけど、歌舞伎の“大向う”というのはそうではなくて、さらに芝居を盛り上げる演出効果がありますし、また生でやっている実感ということを大向うによってさらに強く感じられる」と語りました。
そして、かけるタイミングについて「お芝居をご存じでないと中々かける事が出来なかったり、効果として出なかったりするので、そこは大向う専門の方がいらっしゃいますので、その方のタイミングであったりまた、声色であったり(声の)大きさであったり、早さであったり、それを感じていただけることで、歌舞伎に来たことの実感を知っていただく大きな存在だと思いますね」と歌舞伎ならではの観劇法を語ってくれました。
幸四郎さんは、歌舞伎座『八月花形歌舞伎』(8月3日初日)第三部で、勇将木曽義仲の父・木曽先生義賢の壮絶な最期を描いた名作「義賢最期(よしかたさいご)」で初役に挑みます。
【大向う】
上演中に舞台後方から離れた後方席から“○○屋”などと屋号をかける声やそれを行う人を指します。