東京藝術大学『 卒業・修了作品展』が開催 “学生生活の集大成” 作品に込められた思いを取材
今回で73回目を迎えた『東京藝術大学 卒業・修了作品展』は、美術学部全科が上野に集まり、東京都美術館や大学美術館、学内の各科の特徴のあるアトリエのスペースや屋外のロケーションなどに卒業・修了生たちの学生生活集大成の作品が展示されています。
■ヒョウの毛皮 「皆さん驚かれてます。“金属だったんだ”って」
『豹皮覆護秘薬守護石』を制作した工芸科の亀岡信之助さん(25)。金属で表現したヒョウの毛皮は「鋳金って蝋(ろう)原型から形を作り出したりする。ろうの特性を生かして皮の表情だとか、皮膚の表情っていうものを忠実に再現した技法を自分なりに工夫して作りました」と制作までの過程を振り返りました。
制作には毛の部分で約3か月かかったということで「熱した針金でろうを少しずつ溶かしながら引っ張っていくような感じで、ずっと作っていってるんです」といい、「本当の皮だと思われる方がちょっと多いみたいで、触ってみてくださいと言うと、皆さん驚かれてます。“金属だったんだ”って」と作品を見た人の反応を明かしました。
■クローンペット産業を表現「怒りみたいな感情が」
『あの子・null』を制作した工芸科の松本和さん(22)。アニマルウェルフェアについて考えたことが作品を制作するきっかけになったそうで「クローンペット産業があることを知って、人によると思うんです。自分のペットが“クローンできるならまた会えるかも”って思う人も結構いると思うんですけど、(自分は)怒りみたいな感情が沸き上がってきて。唯一無二な存在っていうのを複製して増やすっていうことがどんなことにつながるんだろういうことを形にしたくて」と明かしました。
また、作品は手工芸の作品と3Dプリンター作品の対比でクローンペットを表現。松本さんは「工芸っていう自分が一つ一つ全ての工程を重ねて、全てに関わって作っていく。3Dプリンターも自分の手の離れたところのものが作られていく感覚は面白かったんですけど、同じ形が作れるところが量産品っていうものを示しやすいなと思ったので」と作品に込めた思いを語りました。
■パフォーマーに指示をして代わりに表現
『それ私が代わりにやっておきます』を制作した先端芸術表現科の豊田ゆり佳さん(26)。パソコンから掲示板にやってほしい指示を入力すると、二人のパフォーマーが代わりに表現してくれる作品を制作しました。
制作を思いついたきっかけについて豊田さんは「振付家とダンサーの関係性って、振付家の考えるものを代わりにダンサーがやってくれているっていう認識で。芸術をやるってなった時に、根拠を他人に説明しづらいことって、結構あると思ってて。“何でそれをやるのか”、でもやってもらいたいとか、やってもらわないといけないみたいな状況ってあると思うので、それを可視化する作品です」と話しました。
『第73回 東京藝術大学 卒業・修了作品展』は、1月28日から2月1日まで開催です。