武藤敬司60歳、引退後は「普通のおじさんになりたい」 決意した“激動の2022年”を振り返る
■2022年は「一生懸命生きた年」
——2022年はどのような年でしたか?
いや、激動ですよ。やっぱり38年続けてきたプロレスを辞めると言った年だからな。決意した年だから。かといって発表してから、めまぐるしく仕事とかいろんなものが舞い込んでくるというか。なんか“一生懸命生きた年”でもあるよね。
——コロナ禍でのプロレスを振り返っていかがですか?
コロナがはやって、興行も出来なくなったりとかして。今度は無観客で試合をするとかね。俺38年のキャリアで、お客がいなくて試合するのなんて初めてのことでね。ほんとにやりづらかったりとかさ。あと、グレート・ムタ(武藤敬司が代理人を務める“悪の化身”)も試合したりしたんだけど、はたして(得意技の)毒霧は許されるのだろうかとかね。気になったりもしましたよ。今はバンバンやっちゃってるけど(笑)
■痛みとの闘い 「遅かれ早かれ、やめざるを得ない」
——現役引退を決めたときの心境を教えてください。
引退を決めたのは今年に入って早々、ちょっとやばいかなって。休みをもらったんだよね、1月入ってすぐに。そのときには、もうそろそろギブアップかなって。痛みとの闘いだったから。主治医の先生に相談したら、やっぱり股関節。膝はまあまあ良くなったんで、今度は股関節が、骨盤と大腿骨(だいたいこつ)がすり減って、膝と同様に、隙間がなくなってきて当たるようになってきてるから。
もしかしたらこのまま続けていても、いずれはもしかしたら、“股関節も人工関節”にしないといけないと。で、股関節を人工関節にしたらプロレスは絶対できない。遅かれ早かれ『じゃあ、やめざるを得ないんだな』と思って、ある意味ドクターストップですね。2月、3月、4月くらいの時が一番悩んでたというか、未練もあったりとかして。落ち込んだりしたりして苦痛というか。
■“プロレスラー武藤敬司”は多くのレスラーを作った 「やっぱり誇りでもあるよな」
——ご自身が考える“プロレスラー武藤敬司”が残した物はなんだと思いますか?
新日本プロレスで俺のプロレス人生は始まって、そこを20数年前に飛び出して、全日本プロレスに行って、今度はWRESTLE-1という団体で、それはもう経営者としてやってる中でさ、一選手には出来ないこと、今度は選手を生んで育てなきゃいけないからさ。そういう部分で言ったら、俺は多くのレスラーをつくりいろんなところで活躍させてるよな。それが一つのやっぱり誇りでもあるよな。
——引退発表後には、いろいろな団体の選手が試合のパートナーや対戦相手として名乗りを上げていますが、その点はどう思われますか。
うれしいですよ。ほんとにうれしくて。グレート・ムタにしたって、わざわざ最後は(アメリカで活躍するレスラーの)スティングが。やっぱり海外での、グレート・ムタのステータスを作ってくれたのはスティングだからさ。
そして来年1月1日には中邑真輔とシングルマッチだ。新旧アメリカでも成功したインターナショナル、グローバルな選手同士の戦い。最後にきて、いいマッチメイクというか、出来て良かったなと思ってますよ。
■「もう悔いはない」 引退後に目指すは“普通のおじさん”
——引退までに成し遂げたいことはありますか?
ないよ、もうやりきったから引退するわけで。やりきったというのはあれだけども。2021年はね、58歳にしてさベストバウト、年間最高試合っていう賞をもらったりとかしてね。
1回そこで、58歳の時点で“まだまだだ、俺の実力は”っていうのを見せてるからな。たぶんもうそれが出来なくなったから引退も決めてるんだと思うんですよ自分の中で。だからもう悔いはないな。
——引退後に行きたい場所や、やりたいことなどはありますか?
いま若干歩くのも不自由だし、なかなかないですね。引退した後について、よく皆さんから聞かれるんだけど、“普通のおじさんになりたい”って答えてるんだよ。やっぱりこの特に膝の人工関節はさ、この機械は壊れないけどさ、骨は年取ってくると擦れてきちゃうじゃん。だから合わなくなって、再度手術とかになっちゃうけど。
だから普通のおじさんにするためには、少なからず筋トレとかしとかないと普通のおじさんになれないんだよ、俺。だから、一生懸命、壊したカラダをこれからはいたわっていきたいかな、なんて思ってますよ。
■医師から禁止された技をもう一度…
——引退まで残り約2か月、今のお気持ちを教えてください。
やっぱり早く来てほしいわ。それに向かってトレーニングしてるし、ただ、痛いからやめるわけであって、トレーニングも詰めればまたちょっと痛くなるし。かといって練習をやらなきゃ不安でどうしようもなくなるし。だからもう待ち遠しいというか。
——最近テレビ番組で、医師から禁止された技のムーンサルト・プレスをもう一回やりたいと発言されてましたが?
(医師に)『一回くらいどう?』って。『俺はやる自信があるんだけど』って(笑)
——来年2月21日の引退試合はどのようなものにしたいと考えてますか?
生ものだから試合なんて、わからないよ。でも、とりあえずはそのときのコンディション、出来る範囲の全力を尽くして、ドームの空間だからね。広いからね。全員が満足できるような試合が出来ればいいかな。
■グレート・ムタ“ファイナルマッチ”&武藤敬司“引退試合”
武藤敬司が代理人を務める“悪の化身”グレート・ムタ選手のファイナルマッチ『ABEMA presents GREAT MUTA FINAL " BYE-BYE"』は、パートナーに海外からスティング選手、ダービー・アリン選手を迎え、2023年1月22日(日)に横浜アリーナで開催。そして、武藤敬司選手の引退試合が行われる『KEIJI MUTO GRAND FINAL PRO-WRESTLING “LAST” LOVE~HOLD OUT~』は、2023年2月21日(火)に東京ドームで開催されます。