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男女格差や仕事と子育ての両立 リアルな問題をドラマに込めた“令和の働き方”

2022年6月15日 7:15
男女格差や仕事と子育ての両立 リアルな問題をドラマに込めた“令和の働き方”
『悪女(わる)~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~』プロデューサー・諸田景子さん

きょう、最終回を迎える今田美桜さん主演のドラマ『悪女(わる) ~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~』。男女格差や世代間ギャップ、仕事と育児など、社会で実際に課題となっているトピックを描いたドラマで、放送後にはSNSで自身の職場環境と重ねて共感する声や、新しい働き方を考える声などが投稿されています。

物語は、今田さん演じる田中麻理鈴が、新入社員として入社した大企業で、それぞれの部署が抱える“職場の問題”に直面しながら、出世を目指す姿を描いたお仕事ドラマ。どのようにして時代背景を反映しながらドラマを制作したのか。番組プロデューサーである諸田景子さんにインタビューしました。

■「“誰かが悪者”にはしない」 現場の声からできあがったキャラクター像

このドラマでは、「女だけど優秀」「女捨てて頑張っている」というセリフや、“ピンク”や“かわいい”が女性らしい感性であるなど、偏見や女性を軽視した発言をする男性たちが登場。それに悩んだり立ち向かったりする女性たちの奮闘ぶりが描かれています。現実の社会における男女格差の問題が多く取り上げられているため、SNSでは「言われたことに耐えてきた女性が反撃する姿泣ける」や、「こういう古い考え方あるある」などの声が投稿されています。

登場するキャラクターは“男女格差に気付いていない人”や、“男女格差に違和感を覚えつつ声に出せない人”、“男女に優劣がないことを主張する人”など、様々な視点で描かれています。諸田さんは実際に設定と同じ職業の女性たちから、職場内での立場や服装などの話を聞いて反映させるほか、場面ごとに弱者となったキャラクターを救う一言を想像して台本を作っていったそうです。

また、4話では江口のりこさん演じる峰岸が、10年前に男性の部下へ「男だから泣くな」と言ったことを素直に謝るシーンが描かれ、SNSでは「本当にいい上司」「誰にでも思い当たる節がある」などの声が寄せられました。

――このシーンを描いたのはなぜですか?

女性から男性に“男女の価値観”を訴えるシーンが多かったので、男性の方にとっても救いがあるようにしたいなって思った時に、ドラマ制作チームでも「自分たちも考えをアップデートしていかないといけないよね」っていう反省もあったりして、自戒の意味も込めました。キャラクターを描く上で“誰かが悪者”とはしないように意識していて、男性も女性もどんどん時代に合わせて考えをアップデートしていかないと、人間関係でうまくいかないのかもしれないということを、訴えてみたかったという形で描きました。

■ドラマを制作して気付いた 楽しく働くための“大切な休暇”

5話では、休暇の取り方をテーマにした物語を展開。部下に気を使って仕事を持ち帰ってしまう上司が、体調を崩してしまったことをきっかけに、休日の趣味を充実させるなど、“休暇の大切さ”が描かれました。

――今回のドラマを作っている中で気付いた、理想の働き方はありましたか?

働く時間が楽しかったり、心から頑張れたりするお仕事をしたいって思いつつも、やっぱり休息が大事だと思っていて。私、実際ドラマ中に体調を崩して5日ほど仕事から外れていたんですけど、現場が心配でリモートでもいいから打ち合わせに出ようとした時に、周りのスタッフから「周りを信じて休んで早く元気になって戻ってきなさい」って言われました。その時に「こういうドラマを作っているのに、仕事人間になっている自分がいるんだな」とすごく感じて。休みも大事だよってこのドラマを経て、より感じました。

■“転職前提” “効率よく” Z世代の特徴

6話は、新卒入社してきた新人の2人が配属されるストーリー。回り道でも“過程”が大切とする30代の小野忠(鈴木伸之)に対して“効率が悪い”と批判する新人たちが描かれています。

――新人社員は、いわゆるZ世代。どのように分析されて描かれましたか?

今の若い子は「転職前提で就職します」っていうことがあると聞いていて、それを「何なんだよ」みたいに捉える人もいると聞いたのですが、私は「人生をよく考えて行動しているのに、なぜ悪いように言うんだろう」と疑問があったんです。実際にキャリアアドバイザーをやっている友人に話を聞くと、Z世代はすごく“タイムパフォーマンス”を意識しているんだと感じました。30代の小野と同世代の私は、コスパの世代って言われていて、「お金をいかによく」「コスパよく」って思っていますが、今の若い子たちは「いかに効率よく」というか、時間がもったいないから「なんでそんな無駄なことするんですか?」って感じるんだなと。“タイパ”を大事にしている世代なのかな、というのをすごく感じたので、脚本でも入れるように気をつけました。コロナ禍を経てより働き方が多様化していて、今が過渡期だからこそ、いろんな働き方を見せたいなと思ったんですね。せっかく1日8時間働くのであれば、嫌な時間ではなく楽しい時間になれば人生ってすごくいいことなのかもしれないっていうのを伝えられたらいいなと思います。

■“子育てしているだけなのに、なぜ謝らないといけないのか” 育児と仕事を両立させるママの声

ドラマの中では、産休と育休を経て多忙な企画開発部に戻るも、時短勤務という働き方で周りへ負担を気にして異動してしまう女性が登場します。SNSでは「女性が働きやすい時代が来るといいな」「私もまた働きたいと思いつつ働けない」などの共感する声も多く、実際に子育てと仕事の両立に難しさを感じている人が多くいるようです。

――この題材を扱う上で、参考にしたことはありますか?

今一緒にドラマを作っている先輩プロデューサーが、ドラマを作りながら子育てをしているので、実際の声や思うことを聞きました。そのプロデューサーの近くにいる働くママさんに脚本を実際に読んでいただいて、どう思うかを反映しているので、リアルな脚本になったのではないかなと思います。

――脚本を見せて、どんな反応がありましたか?

ドラマ中に『まず“すみません”っていつも謝っちゃう』っていうセリフがあるんですけど、「子どもを育てているだけで、なんで謝らないといけないんですか」と、みなさん感じていることが多いようで特に意識しました。9話では、仕事のために熱を出した子どもを病児保育に預けたことで自分を責める母親が、病児保育の職員から「私だって必要とされて働いてるのって嬉しかったです」と言われるシーンを描きました。それは先輩プロデューサーが、実際に言われたらめちゃくちゃ嬉しいという思いを込めてセリフに生かしていました。

■男性にとっても女性にとっても管理職を「なりたいポジションに」

最終回では、女性やマイノリティーが十分な素質や実績を持つにもかかわらず、昇進が制限されるという見えない障壁、いわゆる”ガラスの天井”がテーマになっています。様々な社会課題を視聴者に訴えるこのドラマを作ってきた諸田さんは、”ガラスの天井”をなくすためには何に取り組むべきだと考えているのでしょうか。

諸田:ロールモデルができることが1番いいと思うんですけど、破ろうと思ってみんなトライしてもうまくいかなかったりするんですよね。そうなると上の人が引き上げるしかないのかなって。下から破る勢いはあるからこそ、上からも破ってくれる何かがあったら大きい穴ができてみんな進めるようになるのではと、ドラマを作りつつ、現実を見ながら感じました。あと会社側は、管理職を“なりたいポジション”に見せる努力をして、男性でも女性でも「こういう風にリーダーになれたら楽しいことがあるんだよ」っていうのがわかることで、女性が活躍できる社会につながるのかなと思います。