「おすすめしたい絵本」にヨシタケシンスケの『メメンとモリ』 “生きるとは?”テーマにしたきっかけ
『MOE絵本屋さん大賞』とは、月刊MOEが全国の書店の絵本担当者など3000人に聞いた、おすすめしたい絵本30冊を決定する絵本ランキングです。
日テレNEWSは今年6月、ヨシタケシンスケさんにインタビュー。“生きるとは?”をテーマにした自身初となる長編絵本『メメンとモリ』に込めた思いなどを明かしていました。
■“生きるとは?”をテーマにした長編絵本「“生き方の1つの選択肢”を提案できれば」
『メメンとモリ』は、冷静な姉のメメンと情熱家な弟のモリが登場する作品です。メメンが作ったおさらを割ってしまい、クヨクヨしているモリに対して、メメンが「大丈夫よ。またつくればいいんだから」と励ますところから始まる『メメンとモリと ちいさいおさら』など、3つのおはなしで構成されていて、作品を通して「人は何のために生きてるのか?」について考えるきっかけとなる絵本となっています。
――“生きるとは?”をテーマにした作品を作ったきっかけはなんですか?
“メメントモリ”はラテン語の「いつか死ぬことを忘れるな」という言葉なんですけど、ある時にその言葉を思い出して、「メメントモリ」の“ト”の部分をひらがなにしたら二人組みたいになるなと面白いなと思って。そういうタイトルの本があったらどんな話だろうというタイトルから実は始まったんです。最近僕が思っていること、「人って何のために生きているのかな」とか「どうすればもうちょっと楽に日々過ごしているんだろう」みたいなことを、ついつい考える癖があるんですけど、そのタイトルの中で“メメン”と“モリ”と二人に語らせることで、生き方の1つの選択肢というか、こういうふうに考えてみてもおもしろいんじゃないのかなみたいなことが提案できればいいんじゃないかと思って作りました。
■日常のニュース映像から着想を得たおはなしも「かわいそうだなと思って」
2つ目のおはなし『メメンとモリと きたないゆきだるま』。メメンとモリが作ったゆきだるまが、晴れて溶けかかってしまい、2人は複雑な顔をしてゆきだるまを見つめます。しかし、ゆきだるまには意識があり、2人の顔を冷静に見ているところから始まる物語です。
――実際に周りに起きた出来事や誰かから掛けられた言葉など、今回の作品に反映されているものはありますか?
雪だるまの話は、はっきりとした元ネタがあって、テレビを見ていたらニュース映像の端に汚い雪だるまがちらっと映ったんですね。イメージでは真っ白な真ん丸な、絵本みたいな雪だるまができると思ってみんな作るけど「泥だらけになっちゃうんだよな」というのを見て思ったんですけれど。でもよく考えたら「あの雪だるまはがっかりされているんだな」って思ったんです。生まれた瞬間にみんなからがっかりされて生まれてくるって「かわいそうだな」と思って。本の中に『だれもわるくない。だけど、だれも、しあわせじゃない。』というセリフが出てくるんですけど、誰も悪気があるわけじゃないんだけど、いろいろな事情で誰も望まない結果になっているという状況がたくさん世の中にもある。救いのない中でその人が何を考えることができるんだろうかっていう、世界をどういうものとして受け入れるということができるんだろうかという、それもやっぱり一つの選択肢みたいなものをあの話で出せたら、将来僕が汚い雪だるまみたいになっちゃった時に「ちょっと参考になるかな」みたいなそういう思いはありました。
■長編絵本は大人向けの内容「小さい子にきょとんとしてほしい」
――今回の作品はお子さんよりも大人の方に読んでほしい気持ちが強いですか?
いろいろな方からご意見を聞いていても「うちの子はきょとんとしていましたよ」っていう。「ですよね!」という感じで、お子さんにとってはなかなか難しい内容ですけど。僕は子供のころ好きだった本ってよくわかんなかったけど、でも何か気になる本っていうのは間違いなくあったんです。だから同じような現象が、自分が作る本で起きてくれたらうれしいなという思いがあるので、特に大人向けの本ではあるんですけれども、ちっちゃい子がぜひきょとんとしてほしいというか、何を言わんとしていたんだろうというふうに、ずっと疑問として残ってくれたらそれに越したことはないかなって思います。