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宝塚で33年……元宙組組長・寿つかさ、「真風涼帆は“正義感の強い人”」――千秋楽で芹香斗亜と“ハグ”の真相も

2023年8月25日 20:02
宝塚で33年……元宙組組長・寿つかさ、「真風涼帆は“正義感の強い人”」――千秋楽で芹香斗亜と“ハグ”の真相も
「宙組生として卒業したい」――。長年にわたって宙組の組長を務め、今年6月に宝塚歌劇団を卒業したばかりの寿つかささんはそう考えていたという。退団公演の『カジノ・ロワイヤル』のフィナーレでは、現在の宙組トップスター・芹香斗亜にバトンを渡すかのようなシーンが話題を呼んだ。ともに宙組を支えた新旧トップスターへの思いとは……。聞き手は日本テレビの熱烈な宝塚ファン、安藤翔(妻が元タカラジェンヌ)。

<寿つかささんプロフィール>
東京都港区出身。6月11日生まれ。1990年に76期生として入団。雪組を経て98年に誕生した宙組に創設メンバーとして異動。2008年宙組4代目の組長に就任。33年にわたってファンを魅了し、6月、宝塚歌劇団を退団。

■「気づいたら芹香に飛びついていた」

――退団公演の『カジノ・ロワイヤル』では、ゲオルギー・ロマノヴィッチ・ロマノフ大公を演じられました。(宝塚での)最後のお役になりました。どうですか。

私もこの『カジノ・ロワイヤル』まで、少し間抜けなおじさん、おちゃめだけれど憎みきれない――、という役から離れていて、久しぶりにやりたいなと思っていたんです。台本をいただいて本読みをして、このキャラクターだったので、本当にうれしかったですね。

それこそ集大成。いままで演じてきた役がぎゅっと詰まったような役でした。(脚本・演出の)小池(修一郎)先生の愛もたくさん詰まったお役で、最初に本を読ませていただいたときは、こみ上げてくるものがありました。

――退団公演の期間中は充実感のある日々でしたか。

卒業にあたっての目標の一つに、千秋楽の次の日も公演があると思って、いつもと変わらない気持ちで公演に取り組みたいと思っていました。最後の特別な公演というよりは、公演に集中していきたいという思いの日々でしたね。

――フィナーレでは(次期トップの)芹香斗亜さんの胸をポンとたたく場面がありました。そして大千秋楽ではハグも出ました。これはどんな思いからだったんでしょうか。

振付家のKAORIalive先生が本当に素敵な場面を作ってくださいました。「『これから宙組を頼んだよ』という思いを込めて、腕を合わせたり肩を叩いたり、何でもいいから想いを芹香に託して」と言っていただいた。その思いを毎回毎回大切に芹香に伝えていきたいという日々でした。

千秋楽は欲が出て最大級の思いを芹香にかけたいと思いました。男(役)同士の絡みを相談するのには、やはり(トップスターの)真風(涼帆)しかいないと思って、ゆりかちゃん(真風さん)に「ちょっとキキちゃん(芹香さん)にハグしてみたいなと思うんだけど、どうかな?」と相談したら「素敵だと思います」と言ってもらえて。

私、小心者なので「よし。じゃあハグできたらハグしよう」と挑んだんですけれども、大階段を降りる直前に松風(輝・現宙組組長)に「何があっても踊り続けてくださいね」と言われました。みんな何か(サプライズで)してくれるんだという心構えはあったんですけれども、いざそのパートになった時に、芹香の音頭でみんなが「組長ーっ!」と掛け声をかけてくれた。もう気づいたら私が芹香に飛びついていました。

ハグできたらなという思いはあったんですけれども、きっと考えていなくても飛びついていた。自分でもびっくりするぐらい、気づいたらもうハグしていました。「ありがとう頼んだよ」って。

芹香の表情もぐっときて、袖に引っ込んだ後が大変でした。話しているうちにまた思い出してきました。(表情は)優しかったですね。優しくて温かくて、お互いの感謝の思いがあふれた瞬間だったと思います。

■真風涼帆さん、コンビニで観光客を助ける

――退団を決めた理由は何ですか?

ちょっと足を痛めたりけがをしたりして、この先続けられるかなと思った時期があったんです。卒業を考えたのは「カーンと鐘が鳴った」などと言う方もいますが、というよりは、続けられるかなと思った時期もあり、回復してまた舞台に立てることの喜びも味わいながら。長い先を考えるのではなく、日々、1日1日を集中して過ごしていこうと決めてきたんです。

ただ、組長という立場なのでギリギリになって「次の公演で辞めます」というわけにはいかない。ある時期から並行して卒業も考えながら過ごしていました。宙組生として卒業したいということもありました。受け継いでいく、託していくというところが、宝塚の素敵なところ。それで、この時期に決めました。

――受け継ぐという意味では、真風さんと同じタイミングでの退団となりました。真風さんとの最初の出会いは?

恐れ多いことに、というか自慢話なのですけれども、音楽学校の時に彼女が私を見つけてくれまして、お手紙をいただいたんです。ファンの方からのお手紙もうれしいですけれども、音楽学校生からお手紙いただくことはとてもうれしくて。(真風さんの)初舞台公演が宙組の『NEVER SAY GOODBYE』で、その時もお手伝いをしてくれまして。そこからです。

初舞台の時もお手紙をくれて、今でも大切にとってあります。本人に伝えたら「もう捨ててくださいー」と恥ずかしがっていましたけれど。

――初舞台から退団のタイミングも一緒で、真風さんのお近くで時を過ごしていると思いますが、真風さんはどんなトップスターでしたか。

困った人を放っておけない正義感の強い人ですね。芸事で真面目に取り組んでみんなを引っ張っていくのも、もちろんなんですけれども、とにかく放っておかないですよね。(下級生が)何かに悩んでいたら、それがパフォーマンスのことなのか舞台以外のことなのか。悩んでいるなと思った子はどんなに下級生であっても、一番忙しいのに時間を惜しみなく使ってとことん話を聞いてあげて。アドバイスできることを惜しみなく伝えるような人ですね。

真風が言うには「自分もすぐに何もかもすぐにできたタイプではなかった。だからこそ教えられることは伝えていきたい」と。私もたくさんのことを教えてもらいました。

あと、卒業してから一緒に出かけていて、私がコンビニエンスストアで飲み物を買いたくて付き合ってもらった時があったんです。私が会計を済ませてパっと見たら、おそらく海外から旅行に来ているご家族5、6人の中に真風が一人入って、お話しているんですよ。

どうしたのかなと思ったら、観光客の方が電子レンジの使い方がわからなくて、真風がご家族の全員の分を温めてあげていたんです。「これはワンミニッツだよ」とか英語を交えながら。この人は本当に困っている人がいたら、もうほっとけない。すぐに助けてあげる。改めて真風の人間性の素晴らしさを知ることができました。

――退団後も関係性が続いていきそうですね。

そうですね。もうずっと彼女からも学んでいきたいですし、仲良くしてもらいたいと思っています。

(『アプレジェンヌ〜日テレ大劇場へようこそ〜(寿つかさ編)』より抜粋・再構成)

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アプレジェンヌ』は日テレNEWS24制作のシリーズ企画。元タカラジェンヌをお招きし、日本テレビで熱烈な宝塚ファン、安藤翔(妻が元タカラジェンヌ)、中島芽生(宝塚音楽学校を4回受験)の2人が、ゲストの宝塚時代・退団後の生き方に迫ります。

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