見たことのない“役者・寿つかさ”に感服――宝塚退団後初の舞台『THE MONEY‐薪巻満奇のソウサク‐』稽古場から【中島芽生の観劇コラム】
■“プロデューサー・七海ひろき”の術中にはまる
絶妙なテンポで5人のセリフが飛び交う。
1人でもその流れに乗り遅れてはならぬという緊張感と、その緊張が生み出すヒリヒリするような興奮。わずか5分ほどの1シーンでも「この先どうなっちゃうの!?」と続きを早く見たい気持ちを駆り立てられました。
先日、『THE MONEY‐薪巻満奇のソウサク‐』のお稽古場にお邪魔し、宙組で何年も一緒に舞台に立っていた5人だからこそ成しうる技を目の前で見させて頂きました。
そもそも「主演、元宝塚宙組組長寿つかさ!七海ひろき初プロデュース演劇企画!」。そう聞くだけで宝塚ファンからすると「こんな日が来るなんて想像もしていなかった!」と驚くかと思います。
それに加え、30年以上男役を続け15年にもわたり組長を務めてきた「すっしぃさん」が「失踪した夫を探している主婦」というのには度肝を抜かれました。だって、つい最近まで「ダンディ=寿つかさ」だったのに…主婦!?
ただそんな驚きはセリフの一言目で吹き飛ばされ、これまで寿さんの様々な演技を見てきたつもりでいましたが、お稽古場には「これまで見た事ない役者・寿つかさ」が確かに存在し、「そんな引き出しをまだ持っていらっしゃったのか!」と感服いたしました。
そしてプロデューサーでもある七海さんは、自ら一人ひとりにオファーをされるところから作り上げているということで、私たちはまさに七海さんの術中にはまっていたのだと気づかされました。また、1番にお稽古場に入り膨大なセリフを1人で確認されているお姿からは、普段私たちが舞台上などでは観ることがない陰の努力の一端を拝見したようで、こうした努力の積み重ねが今の多彩すぎる七海さんを作り上げているのだと感じました。
■マイク通さない「生の声」にゾクゾク
そうした中、お稽古では同じシーンを何度も繰り返しながら、演出の保木本真也さんが一人ひとりへ細やかに演出をつけていき、間・スピード・声量を変化させていきます。
コンマ数秒ほどのセリフとセリフとの間の違いや、ちょっとした声量の違いで、同じシーンでも驚きや緊張、笑いの生まれ方が変わっていく。
その僅かでありながら確かな変化に「こうしてお芝居は作り上げていくのか」と感動を覚え、この演技を小劇場で、マイクを通さない「生の声」で感じることが出来るのか…と想像するだけでゾクゾクしてきました。
さらに、脇を固める緒月遠麻さんのさすがの計算された演技、伶美うららさんの美しさと意外性のある役柄、退団されたばかりの澄風なぎさんの個性あふれるキャラクターが、舞台をさらに味わい深いものにしていきます。
「これは“5人の犯罪者の物語”だ」とあるように、5人の会話で紡がれる物語が、どんな結末を迎えるのか…幕が開くのか楽しみで仕方ありません。
そして寿つかささん、七海ひろきさんへのアプレジェンヌ独占インタビュー動画は後日公開予定です!お楽しみに!
舞台『THE MONEY ‐薪巻満奇のソウサク‐』は、東京・CBGKシブゲキ!!にて8月23~27日、大阪・心斎橋PARCO 14F SPACE14にて8月30日~9月3日上演。(各会場千秋楽は配信も予定)
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