テレビドラマとは全く別ジャンル? 「縦型」は“寄りの映像”がメーン【SENSORS】
「縦型ショートドラマ」と呼ばれる、1話3分足らずでストーリーを描く動画コンテンツが話題だ。TikTok、YouTube、Instagramを中心に配信され、スマホ時代の視聴習慣に合わせたクリエイティブが追究されている。
テレビドラマとの違いとは。“縦型”ならではの良さとは。
投稿動画が総再生数9億回以上を誇るクリエイターチーム「ごっこ倶楽部」の多田智さん(総監督)と早坂架威さん(役者兼監督)に聞いた。
■大きく異なる「場面転換」の手法
──スマホ視聴を前提とすると、映像の画角も横長ではなく縦長になります。縦型ならではの良さや特徴はありますか。
早坂
横の動画は、一般的に引いた映像を撮影してそこから移動したりズームしたりして表現していきますが、縦型のデバイスでは、引きの映像でも全体感を映すことはできないし、何が起こっているかさっぱりわかりません。基本的には登場人物の体あたりが収まるように寄った映像を撮影していきます。逆に言うと、映る範囲が狭いので、間を埋めるための小物などの準備が少なく済み、低予算で初心者でも始めやすいことはメリットかもしれません。
多田
横の作品とは「場面転換」の手法が大きく変わりますね。横の作品では、場面転換をするシーン、例えば、仕事場から家に帰ったとき、家の外観など引いた映像を映して家に帰ったことを表現します。
全体感を映しづらい縦の映像の場合、逆に寄りの状態で場面転換をします。例えば、仕事場で水を飲んでいる状態だったところから、次の場面でも水を飲んでいる画面から入ったりしますが、背景が家に変わっている。背景が変わると、場面が変わったことを理解しやすいのです。
縦型でも横型でも、場面転換のシーンは間の状況をかなり端折っているので、転換したことを理解するために脳が疲れて、眠くなったり、飽きたりする場面です。ですから、いかに脳に負担をかけずに場面転換したことを伝えられるかがポイントです。後からの編集ではどうにもならない部分なので、脚本や撮影の段階で意識して制作しています。
また、縦映像の撮影は横と比べて映る範囲が狭いので、いろんな角度にカメラマンが入って撮影できます。同じシーンを3カメラくらいで撮れるので、1つのシーンで細かく絵変わりさせることができます。例えば、曲のテンポや歌詞に合わせて映像を切り替えることもできるわけです。これも見ている人を飽きさせない工夫です。
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(5月18日放送『Z STUDIO SENSORS』より再構成)