“義務教育の新たな学びの場”として 県内初の「夜間中学」今年4月佐世保市に開設《長崎》
“義務教育の新たな学びの場”として
全国で設置が進められているのが「夜間中学」です。
2016年に制定された法律に基づくもので
国は各都道府県に、少なくとも1校の設置を目指しています。
夜間中学に入学する人は、さまざまな事情で学校に十分に通えなかった人や、本国で義務教育を修了していない外国籍の人。
また 現在不登校の中学生などです。
国の調査では、全国の公立小学校、中学校の不登校は
2014年度は11万8787人でしたが、年々 増え続け昨年度は33万6423人に。
この傾向は県内も同じで
2014年度の1225人から10年間で約3倍の3629人に増加しています。
このような状況を踏まえ、不登校の生徒の新たな学びの場としても期待される「夜間中学」。
県内では今年4月、佐世保市立祇園中学校に開設されることになりました。
(佐世保市教育委員会 学校教育課 立岡 誠司 副主幹)
「これまでになかった不登校の現役の中学生も受け入れが可能になった。学齢の中学生については、中学生本人が在籍している中学に籍をおいたまま、通級(通学)という形で通うことになる」
4月の開設に向けて準備を進めている佐世保市教育委員会。
現在、約20人が入学を希望しているそうです。
(佐世保市教育委員会 学校教育課 立岡 誠司 副主幹)
「特に既卒者の面談の中でこれまでの背景を伺いながら、夜間中学への期待は感じていますし、学びに対する意欲には驚かされる。
学び直しの機会をこれまで望んでいたけれど、なかなかそういった機会を得られずに…という方多くいる」
佐世保市世知原町に住む 田中敬男さん 84歳。
4月からの入学を希望しています。
(田中 敬男さん)
「ひとり親だった。お袋は僕が小学生の時に死んだ。家(の雰囲気)が暗くなって全然面白くないわけです。勉強だって身に入らないし、第一、勉強は好きな方じゃなかったから」
十分な教育を受けないままに、中学校を卒業しました。
当時の日本は、高度経済成長期。
田中さんは仕事を求めて上京し、高校には進学しませんでした。
(田中 敬男さん)
「(仕事で)恥をかいたことがある。いろんな漢字や言葉を間違えたりとか。九九もやり直さないと」
履歴書に書ききれない程、これまでに転職を繰り返してきました。
歳を重ね、勉強に対して心境の変化があったそうです。
(田中 敬男さん)
「人間、死ぬまで勉強っていうじゃないですか。物事を知るということは、幸せ。面白くない、教養がないと。少しでも知識を」
夜間中学が始まる春を心待ちにしています。
(田中 敬男さん)
「欠席しないで100%出席したい気持ち。わからないところは、積極的に聞こうかな」
夜間中学は、昼間の中学校と同じ「学校教育法」に規定する中学校として、教員免許を持つ先生が教えます。
公立の場合、授業料は無償です。
授業は平日の夕方からで週に5日。
昼間、仕事をしている人も通うことができ、全ての課程を修了すれば、中学校卒業となります。
佐々木 潔さん63歳も、入学を希望している一人です。
今は特別養護老人ホームで、介護ヘルパーとして働いています。
(佐々木 潔さん)
「朝の食事を食べさせて、歯磨きをして、あとはシーツ交換。
きれいな布団で寝かせてあげたい」
台湾の出身で、24歳の時に来日。その後は結婚し、2009年に日本国籍を取得しました。
子どもの頃に病気で母親が亡くなったため、妹たちと共に親戚の家に預けられていたそうです。
(佐々木 潔さん)
「勉強ができないからとか、親がいないからとか言われて、反抗期で学校にあまり…。
町でぶらぶらしたり勉強はしていなかった」
来日して30年。
夜間中学では、改めて日本語を学び直したいと考えています。
(佐々木 潔さん)
「国語は一番勉強したい。読みはできるけど、本当は書き方が全然できないので。日本国籍を取っているのに、ちゃんと日本人に、ちゃんと理解できる文章ができるようになりたいの。希望はそういう感じで。楽しみです」
現在、全国に53校設置されている「夜間中学」。
新たな学びやその楽しさを提供する場として、期待されています。
(佐世保市教育委員会 学校教育課 立岡 誠司 副主幹)
「国語、数学の学び直しが多くありましたので、そういったところは重点的に取り入れたいと思っている。
(入学希望者は)すごく学びに対して意欲が強くあるので、そういう方々と一緒に学ぶのは、不登校の子たちにとってもプラスになると考えています」
【NIB news every. 2025年1月31日放送より】