値上げの波が「100円すし」にも 企業努力で知恵比べ “回らないすし”で対抗も
円安や物価高騰の影響で、「100円すし」がピンチを迎えています。くら寿司は7日、税抜き100円のすしについて、値上げを発表しました。一方、各社が値上げをする中、独自のシステム“回らないすし”で対抗するチェーン店もあります。
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脂ののったマグロにサーモン。つやつやでプチプチのイクラ。手軽でお得な回転ずしには、家族連れも多く訪れます。
くら寿司の田中邦彦社長は7日、定番のマグロやハマチなどを115円に値上げにすると発表しました。
くら寿司 田中邦彦社長
「10月からは現在110円で提供させていただいている約60種類のすしの大半につきましては、115円に改定いたします」
「当社でも人気のクロマグロの価格は、この2年間で約1.6倍に、サーモンの価格も2倍以上になっています。価格の全面改定が不可欠と判断いたしました」
回転ずしといえば、“1皿100円(税抜)のすし”が思い浮かびます。
くら寿司は、これまで税抜で1皿100円で提供してきましたが、1977年の創業以来、初めて値上げに踏み切りました。
値上げを聞いたお客さんの反応は…
来店客
「しょうがないね。5円ぐらいね」
――寿司を選ぶ基準は変わる?
来店客
「変わらないよ。好きなものは、好きだからね」
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実はこのところ、他の大手回転ずしチェーンでも値上げや価格の見直しが進んでいるのです。
スシローでは、10月1日から100円(税抜)の寿司を含めた全ての皿を値上げする予定です。
はま寿司も現時点では値上げの予定はないものの、売りだった平日1皿90円(税抜)を廃止しました。事実上の値上げです。
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なぜ値上げをするのでしょうか。食材を仕入れている築地の仲卸業者に話を聞きました。
築地京富 門井直也さん
「コロナで消費が落ち込んでたのと、人員の確保できなかったので、結構、品薄なものあるみたいで。養殖のマグロなんかもそうみたい。サーモンはやっぱりロシアとウクライナの関係で、結局、運賃コストが高くなって。それで、値上げ」
値上げの要因は、急激な円安やウクライナ情勢、新型コロナウイルスの影響による物価の高騰です。
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各社が値上げをする中、独自のシステムで対抗するチェーン店があります。
“回っていない回転ずしチェーン”を売りにしている「魚べい」では、注文品を新幹線などでかたどったトレーがレーンを移動して運ぶ、“完全オーダーシステム”を採用しています。このシステムが、値上げを抑えるのに一役買っているといいます。
元気寿司 国内事業部 プロトレーナー 石川弘さん
「できたて商品にこだわっているので、回転レーンがありません。注文データを元に発注することで、無駄に廃棄することがなくなりました」
魚べいは「食品ロスの削減や注文データを元に、余剰在庫の無駄を省き、“1皿110円”を維持することができている」と説明しています。(一部店舗を除く)
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今回、値上げを発表したくら寿司も、これまで1皿220円で提供してきた商品を165円に値下げすると同時に発表しました。くら寿司は「食品ロスを限りなく少なくすることで、実現できた」と説明しています。
物価が上昇する中、各社は価格設定に知恵を絞っています。今後も、各社は対応を迫られそうです。