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「のり」不漁でピンチ 生産量減少…産地は今 海の中で異変…魚による食害が影響?

2023年1月11日 19:36
「のり」不漁でピンチ 生産量減少…産地は今 海の中で異変…魚による食害が影響?

のりの生産量が大きく減少し、ピンチに陥っています。のりの漁業団体によると、海水温が高い状態が続く中、雨が少ないことが海の環境に影響したため、近年、食害が発生している可能性があるといいます。のりの産地に一体、何が起きているのでしょうか。

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東京・豊島区の「ささき寿司店」では、たっぷりの穴子にかんぴょう、そして厚焼きたまごをのせ、のりで巻いた太巻きを提供しています。他にもマグロやイカを使った太巻きを、2月3日の「節分」に合わせ「恵方巻き」として販売するといいます。しかし、恵方巻きに欠かせない“のり”が今、ピンチに陥っています。

ささき寿司店 佐々木健太代表
「2~3割は価格的には上がっています」

この店では主に兵庫県産のりを使っていますが、仕入れ値が約2割から3割ほど値上がりしているといいます。

さらにのり自体の密度が低く、破れやすくなり、太巻き作りに影響しているということです。佐々木さんは数か所、光が透けるのりを掲げながら「ちょっと薄い」と話していました。

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のりに一体、何が起きているのでしょうか。11日、産地の1つである千葉・富津市の沖合で行われる、のりの収穫に同行しました。

「潜り船」という専用船が、海の中に仕掛けた網で養殖しているのりを引き揚げ。すると、のりが頭上から雨のごとく降り注ぎ、船にたまっていきます。“とれ高”は好調かと思われますが、のりの量は大幅に減っているといいます。

のり漁師 三辻正幸さん
「今のところ、普段の水揚げの2割程度しか揚がっていないんじゃないかと思います」

三辻さんは「魚がのりを食べてしまう“食害”が理由だと考えられる」というのです。2022年12月、三辻さんが撮影した映像には、海中で無数の魚がのりを食べる様子が捉えられていました。

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全国漁連のり事業推進協議会によると、海水温が高い状態が続く中で、雨が少ないことが海の環境に影響し、近年、食害が発生している可能性があるといいます。

全国漁連のり事業推進協議会によると、2021年度の「のり」の全国生産量は、約64億枚でした。2016年度の約75億枚に比べ、5年で10億枚以上も減少しました。

のり漁師 三辻正幸さん
「いろいろな資材がどんどん値上がって、燃料も値上がってきてるので。このままの状態でのりが終わってしまえば、やらない方がいい」

今は収穫に出れば出るほど、赤字の状態です。しかし「地元・千葉ののりを使いたい」という声は多く聞かれたといいます。旅館からのりの引き合いがありますが、十分な量を確保できず、苦慮しているということです。この日も注文の相談がありましたが――

信用金庫担当者 三辻亜矢さん
「この種類を5個ずつとか、旅館の方も『早めに作っていただければ、ありがたい』と言っていたので」

浜辻丸 三辻亜矢さん
「のりがとれないので、出来次第という感じになってしまうんですけど…」

また「ふるさと納税」の返礼品にも選ばれていますが、在庫が少なく、出荷を止めている状態だといいます。

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さらに富津市では、3年前まで市内の飲食店が“生のり”を使ったメニューを提供する「生のりフェア」を開催していました。しかしここ数年は、生産量の減少などを理由に中止に追い込まれる事態となりました。

以前、「生のりフェア」に参加した「いいのラーメン」沼田幾雄代表は「つらいですよ。経営的には。のりがなくなったり、値上がったりしてますからね…」と苦しい胸の内を明かしました。

この店では「1日に50枚はのりを使う」ということです。11日現在、在庫はあるということですが、今後の生産量の次第では手に入りにくくなる可能性もあり、心配だということです。

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