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子育て支援後進国・日本? 少子化が加速するなか、2023年向かうべき道は

2022年12月31日 15:00
子育て支援後進国・日本? 少子化が加速するなか、2023年向かうべき道は
都内の子育て等を支援する施設

「1日が綱渡りの生活と聞き戦々恐々としている」小さな子どもを持つ保護者からは悲鳴があがる。少子化が加速する中、政府は「国の存続に関わる問題」として、子育ての支援策をまとめた。しかし、金銭的支援だけでは根本的解決にならないとの指摘も。

■「戦々恐々」子育ての現状に悲鳴

「仕事に復帰しているママさんから1日が綱渡りのような生活と聞いて戦々恐々としている」「復帰しても、時短勤務になるので給料も下がるし、保育料もかかる」「出産の一時金が増えるが、子育てはそこで“おしまい”ではない。そこからがお金がかかるところ」…都内の子育て支援施設を訪ねると、保護者からはこのような声が聞こえてきた。

仕事と子育ての両立への不安。時短勤務を選んだとしても、給料が減額される一方で、おむつや服、保育園の費用、教育費など、経済的な負担もどうしても大きくなる。少子化が急速に進むなか、日本が“子育てしやすい環境”を整えることは不可欠。日本は今後、どのような道筋をたどるべきなのか。

■加速し続ける“少子化問題”

そもそも、日本の少子化はどれほど深刻なのか。第二次ベビーブームのピークには200万人を超えていた日本の出生数は年々減少し、2015年には、半分のおよそ100万人にまで減った。さらにそこから減少のペースは加速。2022年の1月から10月までの速報値は、わずか66万9871人となった。このままでは年間を通しての出生数は80万人を下回り、統計が始まって以来最少となる見通しだ。

少子化による悪影響は様々だ。例えば、労働者・消費者の数が減って経済規模が小さくなることが容易に想像される。また、福祉や年金をはじめとする、社会保障の財政も打撃を受ける。将来の現役世代1人あたりの負担が増えれば、制度の土台が不安定になる。日本社会のあらゆる側面にネガティブな影響が出てくるのだ。

しかし、これまでの日本は諸外国に比べて、子育てに対する公的な支援が手薄だというデータがある。OECD(=経済協力開発機構)によると、日本の子供・子育て関係の公的な支出は、GDP比で1.79%。OECD平均の2.34%を下回り、支援に力を入れるフランスやスウェーデンと比べると、およそ半分ほどにすぎない。

■少子化対策の第一歩?「国の存続に関わる問題」

こうした中、12月16日には、少子化対策や医療・介護などを議論する「全世代型社会保障構築会議」が開かれ、報告書が取りまとめられた。報告書では、「少子化は、まさに、国の存続そのものにかかわる問題である」として、全ての世代で子どもや子育てを支えるという視点が重要だとした。

支援策については、

▽妊娠から出産・子育てまで一貫して相談に応じる「伴走型相談支援」の充実
▽出産を補助する「出産育児一時金」について、現在の42万円から50万円に引き上げる
▽中学生以下に月1万~1万5000円を支給している「児童手当」の拡充
▽育児休業給付の対象外となっている自営業やフリーランスなどに対する給付金の創設

などを求めた。

岸田首相は報告書に基づき改革を進め、2023年度の「骨太の方針」では子ども関連の予算を倍増するための当面の道筋を示すとしている。しかし、それを賄うだけの具体的な財源については固まっていない。

■少子化に歯止めはかけられない? 根本的な原因とは…

また、仮に今回の報告で盛り込まれたすべての支援が実現できても、少子化の根本的な解決には至らないという指摘も。日本総合研究所の藤波匠上席主任研究員は、今回の支援策について「政府の方向性を示したことは重要」と評価した上で、「本当に必要なことは経済対策だ」と強調する。

現在、日本では、結婚している人の中でも出生率が低下しているが、この背景には若者の雇用環境の悪化がある。前の世代と比べて賃金は伸びず、非正規雇用で働く人は増え、物価も上がっている…こうした中で、本当は子供が欲しいが経済環境の悪さから諦める、あるいは子供の数を減らそうと考える人が増えていると話す。共働きの家庭も増えるなか、“夫婦で役割分担などをして、ゆとりをもって子育てをする”という形では、望んでいても経済的に難しい現状がある。

藤波氏は「若い人たちが日本において、子どもを育てていこう、家族を作っていこうということに前向きになれない状況に対して、向き合うことが重要だ」と話す。日本の未来を左右する少子化問題。今度こそ歯止めをかけられるのか。その対策を“中途半端”のままで終わらせてはならない。