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少子化・虐待・貧困…子ども巡る問題解消へ「こども家庭庁」設置の意義と課題は

2022年7月13日 11:01
少子化・虐待・貧困…子ども巡る問題解消へ「こども家庭庁」設置の意義と課題は
2022年7月7日「深層NEWS」より

先の国会では「こども家庭庁」を設置する法律が成立しました。少子化、虐待、貧困、いじめなど、子どもを取り巻く環境は深刻です。未来の担い手である「子ども」をどう育むことができるのか。

7月7日放送のBS日テレ「深層NEWS」では、子供の貧困問題への教育支援を主な研究テーマとしている日本大学文理学部教授 末冨芳さん、日本テレビ報道局 庭野 めぐみ解説委員をゲストに、「こども家庭庁」設置の意義や課題について考えました。

■来年4月設置の「こども家庭庁」とは

右松健太キャスター
「政府は新たに子ども政策の司令塔を設置することになります」

郡司恭子アナウンサー
「来年4月に設置される『こども家庭庁』は児童虐待や少子化対策など複数の省庁にまたがっている政策について対応を一元化できるようにしようというものです」
「『こども家庭庁』は内閣府の外局となり、他の省への勧告権を持つ専任閣僚と長官が置かれます。また300人以上の体制で、民間からも人材を登用。重要事項を調査・審議する『こども家庭審議会』も設けます」
「末冨さん、『こども家庭庁』がいま設置される意味というのは何でしょうか?」

末冨芳 日本大学文理学部教授
「虐待の件数や自殺している子供・若者の数も増えている。子どもの貧困はおそらくコロナの中でもっともっと深刻化している。日本はいままで、これらの課題の改善には成功していないです」
「だからこそ、本気でなんとかしようとしたときに全ての省庁が一丸となって、あるいは国も地方も一丸となって、子どもたち・若者たちの状況を良くするんだという本気の体制作りとして、私自身は意義があると捉えています」

右松キャスター
「例えば児童虐待について実際に問題に対応するのは市区町村の自治体ですが、虐待件数を減らす取り組みに『こども家庭庁』はどこまでアプローチできるのでしょうか?」

庭野 めぐみ 日本テレビ報道局 解説委員
「子ども政策に限らず省庁というのは色々な法律や仕組みを作る場です。実際に虐待があったときに助けに行ったり、相談に乗ったりするというのは都道府県や市町村の自治体の窓口、あるいはNPOなど現場です」
「現場の人たちがなるべく動きやすいよう、それから実効性や効果があるようにする仕組みやお金の回し方などを考えるのが『こども家庭庁』です」
「この省庁ができたからすぐに子どもが助かるということはないですが、その器をしっかりしたものにしていくということが大切だと思います」

末冨教授
「子どもに関わる専門性を持った公務員や専門職が不足してます」
「だからこそ『こども家庭庁』に期待しているのは、例えば児童相談所や『子ども家庭センター』という子育て等の相談窓口、子ども・若者が相談できるようなセンターをどんどん増やしていこうということになっていますが、そこにしっかりと寄り添える人材配置していくということが実効性を高めていく上で大事な条件と考えています」

■「隙間にこぼれ落ちてしまう」にどう対応?

右松キャスター
「子供に関わる政策を一元化し、『こどもまんなか』というキーワードもあります。一方で、これまで各省庁が子どもに関する政策を進めていくとき『隙間にこぼれ落ちてしまう政策もある』と聞きます。それらをすくい上げられることを期待して良いのでしょうか?」

末冨教授
「いま『こども家庭庁』に関わっている官僚は非常に高い意識を持っていて、隙間にこぼれ落ちてしまう政策が見つかった場合、何としてでも責任を持って『こども家庭庁』として取り組まなければならないということを強く認識しています」
「例えば、高校生が中退したときにその情報は学校しか持っていないのです。市町村に情報を戻さないと、例えば就労支援や、あるいはそのまま引きこもりになることを保護者が心配したときに保護者の相談にもつながりにくいということがあります」
「『切れ目のない支援』と謳われているのですが、年齢にもよって切れ目が生まれてしまっている状態もあるので、丁寧に情報をつなぎながら、お子さん自身あるいは保護者の方にも丁寧な支援ができていくというような状態をいかに早く作っていくかだろうと考えています」

郡司アナ
「いま、隙間に落ちるという点で、虐待について相談したいというふうに考えた場合、法務省の『子どもの人権110番』、厚労省の『児童相談所虐待対応ダイヤル』189(いち・はや・く)の番号ですが、省庁がまたがっている場合、その窓口に寄せられた情報がしっかりと共有されるのかというのが疑問なのですが?」

末冨教授
「残念ながら現在の仕組みでは、省庁に寄せられたものの情報がつながっていないものが多いと思います」
「でも『こども家庭庁』にそうした情報を一元化していくことは権限上可能ですので、ぜひ突き合わせていただきたい」
「ただ、今はそれぞれの省庁に寄せられた相談で、住んでいる自治体が分かるものはその自治体に引き継がれています。しかし国全体として情報がきちんとつながってうまく活用されているかというと、まだですので、進化が期待されるところです」

■「幼保一元化」は実現せず?

右松キャスター
「子ども政策の司令塔となる『こども家庭庁』の課題も指摘されています」

郡司アナ
「厚生労働省が所管する『保育所』や、内閣府が所管する『認定こども園』などは新たにこども家庭庁に引き継がれます。しかし、文部科学省が所管する『幼稚園』や『小中学校』については移管されず、また『いじめの対策』については文科省と『こども家庭庁』の双方が担当することになります」
「なぜ幼稚園については今回移管が見送られたんでしょうか?」

末冨教授
「1つは省庁の縦割りということでよく説明をされますが、もう1つの理由としては、カリキュラムをいま幼稚園段階から小中高と連続性・系統性があるものにしていこうとしているわけですが、そのカリキュラムを考えたときに幼稚園だけ移管するというのは文科省のカリキュラム行政上困ったことになるというような専門的な理由もあるというふうに聞いています」

■政策実行のための財源は?

右松キャスター
「ゲストの2人に、子ども・子育て支援を充実させるために何が必要かを書いて頂きました」

末冨教授
「日本の子ども政策は財源に裏打ちされていません。子どもの貧困率も全く改善していないのは、基本的にはきちんとした財源がなくて、特に困窮子育て世帯への児童手当も児童扶養手当もあまりに不足している。食べ物も買えないという状態になっているときに、必要なのはやはりお金、財源であると考えています」

庭野解説委員
「一見孤立していないように見える方も実は孤立しているとか、あるいは失職や離婚など、色々な事情で変わることもあります」
「所得や世帯によって支援を変えるのではなく、あるいは相談しに来た人だけを支援するということではなく、誰もが生まれてから切れ目のない支援を受けられる」
「生まれた時と2歳、3歳で相談する相手が違うのではなく、どの家庭にも切れ目のない、5、6年間くらいは支援をしていくということだと思います」
「そのためにも財源は絶対。質と量が大切だと思っています」

右松キャスター
「この財源の確保について、子ども政策に年間約8兆円が必要とも指摘されています」

庭野解説委員
「こども家庭庁の予算規模も決まっていませんし、どこにどう重点を置くということは、まだ生煮えのままです」
「来年4月に発足するので、12月末までの予算編成でどこまで財源が取れるのか。省庁ができるときにほとんど財源が今までから増えないとしたら本当に意味がないのでこの半年が本当に勝負。財源を何とか確保してほしいと思います」

飯塚恵子 読売新聞編集委員
「財源は同じパイの中ではなく、やはり広げることが大事だと思います。そうすると税金か保険という話になるわけですが、税金は消費税上げるだけでも大変です」
「よく言われるのは最近出てきたのは『子ども保険』。要するに介護保険じゃなくて『子ども保険』です」

右松キャスター
「私たちが普段給料から天引きされているところに、子ども保険?」

飯塚恵子 読売新聞編集委員
「というのを加えたらどうかという意見が出始めています」
「岸田首相は全世代型社会保障構築本部の統括事務局長に、厚労省出身の内閣官房参与山崎史郎氏を任命しました。この方は介護保険を設計した人なのです」
「山崎さんは最近の著書で、お年寄りのことは随分やったが、子供のことをやってなかったと言って、子ども保険の話をしているのです。『もしかすると岸田さんが何かやるかな』『布石では』ということが最近言われています」

末冨教授
「子ども保険も有力な財源候補の一つではありますが、勤労者や事業主に負担が偏ってしまうのです」
「その意味では、社会全体で子供を支えるときに私自身は子ども保険も軸としながら、あるいは参議院選挙の中で教育国債を使うと言う政党もありますが、教育国債だけにも依存せず、やはり税や保険を組み合わせながら持続可能な財源を組み立てる方が、子どもたちにとってよりよい仕組みになるのではないかと考えています」

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