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2016 岐路に立つ日本の核燃料サイクル

2016年1月1日 23:06

 「夢の原子炉」と呼ばれた高速増殖炉「もんじゅ」。しかし、今、その引き取り手が見つからない状態になっている。2016年、日本の核燃料サイクルは、大きな岐路に立たされている。


【勧告の衝撃】
 もんじゅをめぐり、原子力規制委員会が文科相に出した勧告は、極めて重いものだった。「もんじゅを運営する日本原子力研究開発機構の管理体制では安全を確保できない」として、機構に代わる運営主体を見つけるように求めた。

 さらに、おおむね半年で見つからない場合には、もんじゅの在り方を抜本的に見直すよう迫っている。勧告を受けた馳文科相は有識者による検討会を設置し、もんじゅの在り方を検討している。

 しかし、新たな運営主体は簡単には見つからないだろう。研究段階であるもんじゅを扱う知見があるのは、実際のところ、今、運営している機構だけだからだ。関係者からは、規制委員会の勧告は「事実上の廃炉勧告」との声も聞かれる。


【夢の原子炉】
 福井県敦賀市にあるもんじゅは、燃料を燃やす反応を利用し、燃やした分より多くの燃料を生み出す「夢の原子炉」として、1994年に初めて運転した。

 しかし、翌年には深刻な事故が発生。2010年には14年ぶりの試験運転が実現したものの、再び事故が起き、現在も止まったままだ。短期間しか運転していないにもかかわらず、もんじゅにはこれまでに1兆円を超える事業費がかかっている。


【核燃料サイクル】
 政府がもんじゅにこだわるのには、巨額の資金を投じてきたという以外にも理由がある。もんじゅが日本の核燃料サイクル計画の中で重要な位置付けになっているからだ。

 核燃料サイクルでは、原発で使った燃料から出るプルトニウムを再利用する。この再利用には資源の有効利用という意味もあるが、安全保障上の意味もある。

 プルトニウムは核兵器に転用されるおそれもある物質で、不必要に多くを保有していると国際社会から批判を受けるという側面がある。日本が保有するプルトニウムは47.8トン。今後、原発の再稼働が続けば、さらに増えることになる。

 そこで日本政府は、プルトニウムをもんじゅのような高速増殖炉で使うと説明してきた。しかし、このままもんじゅが動かず、高速増殖炉が実用化されないとすると、プルトニウムをほかの方法で使い切らなければならなくなり、核燃料サイクル全体の見直しを迫られることになる。


【教訓を忘れない】
 もんじゅは、科学技術の面でも、エネルギー政策の面でも、大きな期待を背負ったプロジェクトであることは間違いない。ただ、どれほどすばらしい技術でも安全面で曇りが生じた場合には、立ち止まってゼロから見直す必要がある。福島原発事故の教訓を生かすべきだ。