日銀が“新たな一手”デフレ脱却は?
「異次元の金融緩和」からすでに3年半。物価は今も上昇しておらず、アベノミクスは大きな岐路に立っている。日銀は21日、今の政策は「効果がある」とする検証結果を公表した上で、デフレ脱却に向けた新たな一手を打ち出した。
今週、都内の住宅展示場に行ってみると、マイホーム購入に向け、熱心に見学する家族の姿があった。なかには、最近、購入を決めたという人もいる。なぜ“今”だったのだろうか?
住宅を購入した人「やはり住宅ローンの金利も安かったり、減税もあったりということで」
背中を押したという金利の低さ。今、住宅ローン金利は日銀のマイナス金利政策によって、過去最低水準まで低下している。マイナス金利政策では、民間の金融機関が日銀に預けるお金の一部に対して、マイナスの金利、いわば“手数料”がかかる。このため、日銀に預けずに市場に回るお金の量が増え、結果、個人や企業に貸し出す金利も下がっているのだ。三井住友信託銀行は、10年の固定プランで年0.45%と、大手銀行の中で最も低い住宅ローン金利を設定している。
三井住友信託銀行ローン業務推進部 野田典志・企画チーム長「8月の住宅ローンの相談件数は、全体でも前年から比べて2倍程度増えている」
日によっては待ち時間がかかるほど相談客が増加しているという。しかし、最も目立つのは…
野田典志・企画チーム長「お借り換えのご相談のお客様は前年から比べまして約8倍」
住宅販売の増加に直接つながる新規のローン契約に比べて借り換え需要が多いという。
一方、今後、身近なところでも影響がでる。ゆうちょ銀行は、これまで無料にしてきた送金手数料の一部を来月から復活させる。背景はマイナス金利政策による“副作用”だ。
実は、マイナス金利政策導入後、貸し出し金利が低下したことなどから金融機関は収益が減り、大きな打撃を受けているのだ。金融庁はメガバンク3つの合計で収益が3000億円程度減ると試算している。
一方、日銀の“異次元の金融緩和”は元々、物価を上昇させ、デフレから脱却することが最大の狙いだ。では物価は今、どうなっているのだろうか?都内の居酒屋では、今年から、始めたあるサービスをウリにしている。そのサービスとは、ビールに日本酒や焼酎など飲み物42種類が1分10円で飲み放題なのだ。値下げ方向に舵を切ったこのサービス。背景には客の“ある変化”があるという。“さか膳”の千田オーナーは「去年と比べてお客さんがお金を使わなくなりました。いらっしゃる回数も少なくなりましたね」と話す。消費が鈍り、安さを求める傾向が強まっているという。
値下げの波は、小売業界にも影響を及ぼしている。都内のスーパーマーケットでは、いたるところに、「プライスロック」と書かれた表示がある。これは、食料品や日用品の価格を半年間は値上げせずに据え置くというキャンペーン。去年3月のスタート以来、既に第7弾まで続いているという。根強い節約志向を背景に、消費者物価指数は5か月連続で下落するなど、日銀の目指すプラス2%には届いていない。
日銀は、21日、これまでの金融政策について異例の総括を行い、国債の買い入れとマイナス金利政策を組みあわせた緩和策は「有効である」と評価した。そして、さらに金融政策を強化するため、新たな枠組みを導入することを決定。今後は「金利」のコントロールを重視するという。
黒田総裁「従来の枠組みに比べて、経済、物価、金融情勢の変化に応じてより柔軟に対応することが可能。結果として政策の持続性も高まる」
また、物価の上昇率が安定的に2%を超えるまで、金融緩和策を続けていく方針も明らかにした。