唯一無二:最先端を紡ぐエアウィーヴ3/5
株式会社エアウィーヴの高岡本州氏に聞く「飛躍のアルゴリズム」。3つ目のキーワードは「“真面目に寝ている人”に着目。トップアスリートたちの支持を受け口コミで…」。トップアスリートから支持を受けた経緯を聞く。
■“真面目に寝ている人”に着目
――「“真面目に寝ている人”に着目。トップアスリートたちの支持を受け口コミで…」ということですが、これはどういうことでしょうか。
最初に200人ぐらいの方に商品をお渡しして、フィードバックをもらいました。使ってもらった翌日に、すごく良いと言ってくれる人たちには共通項があって運動している人たちなんです。運動している人たちというのは、リカバリーが大事で体がセンサーのように反応し敏感なので、すごく感覚が鋭いんですね。
やはり、真面目に寝ている人たちに、この製品を使ってもらおうと考えました。真面目に寝ている人たちというのを探してみると、オリンピックの選手が多分そうだろうと。
オリンピックの開催期間、3週間というのは、睡眠と食事が、唯一のリカバリーのための道具なんですね。ですから、そういった選手たちに使われるようなものを作ればいいのではないかと思ったわけです。
――具体的に、どのようなトップアスリートたちの支持を受けたのですか。
最初、2007年に、国立スポーツ科学センターというオリンピック選手がトレーニングする寮がありまして、そこに提供して合宿に来る選手たちに使ってもらいました。その中に、水泳チームがあり北島康介さんがいました。
2008年の北京オリンピックのときに、北京の選手村がどういう寝具かわからないので、彼らからこれを丸めたものをちょっと作ってくれといわれたのが、「エアウィーヴ」が丸めたもので、それが最初なんです。
――その後、オリンピックなどでも提供されたりしたのでしょうか。
2008年の北京のときは水泳と陸上で70枚ぐらい、2010年のバンクーバーのときは100人の選手のうち7割ですね。その中に浅田真央さんがいました。
■錦織選手からのメールに感動!
――錦織選手も愛用しているとうかがいましたが…
2009年の2月に、私のアメリカの知人のところに「エアウィーヴ」を持っていったら、サンフランシスコの南のサンノゼというところでトーナメントがありまして、そのとき錦織さんがその家に遊びに来ました。
その知人、平さんという方なのですが、その方が錦織さんに「いいマットレスがあるから、私の知り合いが作っているので」とお渡ししたんですね。そのころ、錦織さんがちょっと腰を痛めていまして、差し上げた2週間後に直接メールくれました。平さんが僕の名刺を渡してくれていたんです。
錦織さんから「錦織圭です」とメールをもらったのが最初で、すごく感動しました。当時「エアウィーヴ」といっても、全然知られていなかったので、直接、錦織さんから丁寧なメールがきたのは、やはりうれしかったです。
ですから、いつかこの人をスポンサーにできたらというふうに思い、結果として2012年から、錦織さんをスポンサーにさせていただきました。
――PRでご一緒してから愛用されたわけではないんですね。
会社の方針として、ユーザーで商品を気に入ってくれた方の中からしか、広告契約はしないことにしています。なぜなら、寝具というのは、皆さんの生活インフラの一部なので、そこはいわゆる“リアル”じゃないといけない。アスリートの肖像をお金で買うようなことをしてはいけないと思っています。とにかくリアルなユーザーから選んでいるということです。
――アスリート以外のPR方法というのは何かありますか?
飛行機会社のロングフライトのファーストクラスですね。ファーストクラスに乗る人たちは、ビジネスパーソンで、次の日の仕事のためにすごくお金を払うわけです。そこで大事なのは、食事もそうですけど、やはり眠ることなんです。今、日本航空さんのファーストクラスとビジネスクラスに「エアウィーヴ」のパッドを供給させていただいています。
■「結果が出ない」と焦る気持ちが…どうする?
――そういうPRもあって「エアウィーヴ」は約10年で売上が300倍にも成長しました。しかし、私たち会社員は、結果が出ないとどうしても焦る気持ちが前面に出てしまいますが、高岡さんはどういうふうに乗り切ったのでしょうか。
2007年にこの会社をやって、2010年ぐらいまでは売上というのは本当に1億もいかないような状況でした。ただ、ユーザーであるオリンピックのアスリートたちがたくさんいたり、航空会社にも採用されたり、一流の旅館なんかにも採用されていました。
そこでひとつ思ったのは「売れない」のは、やはり自分たちのやり方が悪いと思いました。そうであれば、やり方を変えればいいわけですね。日々、色々なことにチャレンジして前を向いて行けば、決して悲観することはないです。しかし、焦る気持ちというのはあると思いますが、そういった中で、前を向いて明かりのあるところを見ていくということがやはり大事だと思います。ですから、私は売れなくても、社員の前ではニコニコといつも笑っていました。