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日本経済の本格回復へ 金融機関の戦略は?

2016年12月30日 10:01
日本経済の本格回復へ 金融機関の戦略は?

 日銀のマイナス金利政策が導入された2016年。金融機関は、新たなビジネスを模索してITに力を入れている。金融機関の戦略は日本経済の本格回復に結びつくのか、福井由紀子記者が取材した。

 「(年の)前半に向かい風があったのが(後半は)向かい風がなくなった」-日銀・黒田東彦総裁がこう振り返った2016年。史上初めて導入された日銀のマイナス金利政策によって、住宅ローンの金利は過去最低レベルに下がり、不動産市場は好調だった。

 一方、貸し出しで利益を出しにくくなった金融機関にとっては厳しい1年となった。メガバンク3グループは4月から9月の決算で、7年ぶりにそろって最終減益。マイナス金利政策が続けば業績への悪影響は年間1700億円規模とされている。

 そのような中、新たな収益を模索してどの銀行も力を入れているのが、金融にIT技術を応用する「フィンテック」。三菱UFJフィナンシャルグループが導入したのは企業内コインで、コインを従業員同士でやりとりしてスマートフォンにためられるシステムだ。

 利用者「会議の設定をしてもらったりしたときに1コインとか。『ありがとう』って(送る)」「スマホなので送りやすい」

 GPSで人の位置を把握し、会社から早く帰ると働き方を評価してコインがもらえる機能もある。今後、コインを近くの飲食店などで現金の代わりに使えるようにする計画で、その先には、こうした仮想通貨のビジネス展開を見据えている。

 ITによる「顔認証技術」を金融に取り込む動きも。三井住友フィナンシャルグループの食堂では、顔をカメラに向けるだけで、手ぶらで支払いができる。

 利用者「カードを忘れてもカードがいらないというのは利便性が高い。お金は給与天引きです」「カメラに向いたらパッと承認されるので、意外に手間がかからない」

 現金をやりとりするよりも支払いにかかる時間が短縮できるので、お昼の混雑時にも流れはスムーズ。この実証実験を通じて精度を高め、一般の利用に広げたい考えで、スポーツジムや温泉など、現金を持ち歩きにくい場所で役立つことが期待されている。

 また、人工知能による金融も現実のものになる。みずほ銀行はソフトバンクと共同で、人工知能を使って個人向けの融資を行う会社を設立した。来年には新事業を始める予定。

 みずほFG・佐藤康博社長「従来とは異なるサービスで個人ローンの概念を変革したい」

 ソフトバンクグループ・孫正義代表「全く異次元のビジネスモデル」

 膨大なデータを人工知能が分析し、手続きは全てスマートフォンで完結するため、時間もコストも削減できるという。人工知能で将来稼げる可能性を見極めれば、担保を持たない若者にも融資できるチャンスが広がるため、新たな顧客の獲得も期待できる。

 こうした民間の取り組みを日銀も後押ししている。

 日銀フィンテックセンター・岩下直行センター長「海外のフィンテック業界と銀行業界は真っ正面から競争している。日本の場合は、フィンテック業界と銀行業界が非常に密接に協力している。両者が協力していいところを引き出して、良いサービスを提供しようとしているので、それが海外にない日本の良さ」

 最新技術が経済を引っ張る2017年。アメリカ・トランプ政権の舵取りなど世界経済の不透明感が強い中、従来の枠を越えた取り組みが日本経済の本格回復のカギになりそうだ。

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