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日EU・EPA交渉の行方に注目

2017年1月2日 21:31

 日本とEU(=欧州連合)のEPA(=経済連携協定)の交渉が2017年、大詰めを迎えそうです。交渉の行方は、私たちの暮らしにどのような影響を与えるのでしょうか?

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 日本とEUが関税の撤廃などを目指す日EU・EPA交渉は2013年4月に始まりましたが、TPP(=環太平洋経済連携協定)の交渉もあり、なかなか進展せずに長引いていました。

 そうした中、2016年7月、日EU首脳会談の際には、「2016年のできる限り早期の大筋合意に向け、引き続き最大限努力したい」としていくことで一致、2016年内の大枠合意に向け、お互いの温度が高まり、12月まで首席交渉官レベルでの詰めの協議が行われていました。しかし、話し合いはまとまらず、年内の合意は断念。2017年1月にも交渉を再開することになりました。

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 EUの総人口は約5億人、世界のGDP(=国内総生産)の約22%を占めます。日本にとっても輸出入総額の約10%を占めるなど、EUは主要な貿易相手となっています。日EU・EPA交渉で、日本側はEU側に対し、乗用車や電子機器といった鉱工業品などの高関税の撤廃などを求めています。一方EU側は、日本側に対し、豚やチーズなど農産品などにかかっている関税の大幅な引き下げを求めています。

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 交渉の行方によって我々の生活にどのような影響があるのでしょうか?

 将来、日本とEUとの間で関税の撤廃や大幅な引き下げが行われた場合、EUから輸入されているチーズやハムのほか、ワインやチョコレート、ブランドの革製品の価格が下がるかもしれません。消費者にとっては、これらの商品を安く購入できるという恩恵を受けられる可能性があります。

 また、EUに輸出をしているメーカーにとっても良い影響が出る可能性があります。現在、日本から輸出している乗用車には10%の関税がかかっていますが、もし、これが撤廃となるとヨーロッパでの日本車市場の拡大が期待されます。

 実際に、日本より先にEUとの間にFTA(=自由貿易協定)が発効された韓国は、韓国製の自動車にかけられていた10%の関税は段階的に引き下げられ、2016年7月にはゼロになっていて、その結果、輸出台数が増加する効果が現れています。

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 こうした期待の反面、懸念もあります。それは日本の農業への影響です。

 EUが特に関心が高いのは、農産物の市場アクセスです。中でもチーズなどの乳製品について、EU側は高い水準の市場開放を求めているといいます。将来、人気の高いヨーロッパのチーズが安くなれば、国内の酪農の生産者は厳しい価格競争に巻き込まれ打撃を受ける心配があります。

 日本は、できるだけこうした乳製品の輸入を抑えたい考えですが、チーズなどについては依然としてEU側との間に大きな隔たりが残っていると交渉関係者は話します。

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 見通しが立たない中、12月20日、交渉を担当する岸田外相はEUの通商担当であるマルムストローム欧州委員と電話会談を行い、「できるだけ早期に大枠合意を実現すべく双方が努力すべき」と、交渉の加速化で一致しています。

 アメリカのトランプ次期大統領がTPPからの離脱を明言し、発効が極めて難しい状況にある中、日本としてはEUとのEPAを早期に合意することでアメリカに自由貿易を促す狙いもあるといいます。

 EU側も、2017年はフランスの大統領選など主要国で選挙を控えていて、早期に合意したい思惑もあります。お互いどこまで歩み寄れるのか。1月にも再開される交渉の行方に注目です。