×

【解説】経団連・夫婦同姓強要はリスク 国連の差別委員会も勧告

2024年6月11日 16:57
【解説】経団連・夫婦同姓強要はリスク 国連の差別委員会も勧告
経団連が「選択的夫婦別姓」の導入実現に向けて、ねじをまいている。十倉会長は10日の会見で政府に向け、次のように促した。「議論しなくて今日まで来ている」「ほったらかしておくということではなくて、ぜひ、国会で議論を一刻も早く始めてほしい」。経団連がこの問題の解決を急ぐ理由を探ると、個人の問題にとどまらない「危機」が見えてきた。(日本テレビ 解説委員・安藤佐和子

【夫婦に同姓を強いる民法第750条 経団連が改正を提言】


10日、経団連は「選択的夫婦別姓」に向けた法改正を政府に求める提言を発表した。9割の企業は、結婚後も旧姓を「通称」として使用することを認めているという。しかし、通称が使えても問題は多く、経団連は「同姓の強制は女性の活躍を妨げている」と指摘している。95%のカップルが婚姻時に男性の方の姓を選んでいるため、「姓の変更の負担が女性に偏っている」と指摘する。

【結婚で名字が変わると、どのような弊害が?】


経団連は「アイデンティティの喪失」という言葉を使っている。大袈裟に言って、耳目を集めようとしているわけではない。

以下のような実害が生じている。

・結婚前の仕事の実績やキャリアが分断される。旧姓の時の論文や特許などが、自分のものだと証明するのに手間を要する。

・海外出張で「パスポートの姓」と、「ビジネス上での通称」が違うことで、空港でのトラブルの他、現地スタッフが通称で予約したホテルの宿泊を断られたり、施設への入館を止められたりする等の問題が発生

・社員の税や社会保障などの手続きで、戸籍上の姓との照合作業が必要となる

さらに、
・不動産や会社の登記は、通称のみでの記載は認められていない

会社の役員の登記は、2015年からようやく「旧姓の併記」も可能となったが、あくまでも戸籍上の名前の横に括弧書きでだ。(不動産登記で旧姓併記は今年から)

調査では、「旧姓であるがゆえのひと手間を求められると、ひと手間で解決はしても、それが何度も積み重なるということで少しずつ自分が傷ついていく」という声も上がった。

【なぜ経団連がそこまで“選択的夫婦別姓”を「1丁目一番地」とするのか?】


「この問題は、以前は当事者個人の問題だということで片付けられがちだったが、企業にとっても、これはもうビジネス上のリスクだということで無視できないと」(経団連ソーシャル・コミュニケーション本部長・正木義久氏)

「女性活躍が進めば進むほど、通称使用による弊害が顕在化している」という。役員などを務めている女性たちを対象に行ったアンケートでも、88%の女性が旧姓を通称として使用することに「不都合、不利益、不便が生じている」と回答。


多様な人材が活躍できるような職場環境にすることが、企業の成長を押し上げるために重要だということは、今やリーディングカンパニーでは共通認識だ。経団連は夫婦同姓の強制は、旧姓利用などの各社の取り組みだけでは解決できない、女性活躍を阻害する社会制度だと断定する。

利益拡大だけを目指すだけでは日本企業の生き残りはなく、企業を率いる経団連は「社会的視座」に立つことをモットーとしている。

これはきれいごとではない。

働き手不足が日本経済にマイナスの影響を及ぼしている中で、女性にとっても働きやすい、活躍しやすい環境づくりを急がなければならない。また、海外から人材を呼び込む必要もある中で、女性が負担を強いられたまま放置されているような国は、外国人からも選ばれなくなるだろう。

経済界にはこうした危機感がある。

日本はこれまで3度にわたり、国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)から、“結婚に際して旧姓を維持することを選択できるようにするための法律”を採択するよう勧告されている。日本は今年の秋、そのために何を行ったのか報告することになっている。

ジェンダーギャップ指数で世界146か国中125位の日本。男女格差を改善しようにも、国や企業でものごとを決める「決定権」を持つのが、大多数「男性」で占められている中、女性が不利な立場に置かれている状況は、長年大きく変わらずに来た。

しかし、経団連が旗を振った。

経済同友会も新経連も選択的夫婦別姓の実現を要望している。

「女性の権利のために」だけではなく、「日本全体の利益のために」、今が考える、動く、タイミングではないだろうか。